生放送は、他社が追随できないサービスを作るためのステップだ。「双方向のメディアでどんな番組作りをするかというノウハウを貯める壮大な実験。ネットならではの間の取り方などを蓄積していきたい」。番組の制作会社はCELL 1社。帯番組もレギュラーメンバーを設定し、集中してノウハウを蓄積する。
「プラットフォームとコンテンツを一緒に作るモデルは強い」――自前で番組を作る背景には、そんな計算もある。「ネット企業は、プラットフォームだけ作ってCGMでコンテンツを貯めるところばかりで、どこもコンテンツ作らない。コンテンツまで作って勝つモデルを構築できれば、安定して勝ち続けられる」
ニコ動はアニメやVOCALOID、「THE IDOLM@STER」など萌え系コンテンツが強いが、生放送はガールズトークを繰り広げる女性向け番組や、政治・音楽番組など一般向けを意識した番組構成になっている。
「YouTubeはテレビ番組や楽曲プロモーションビデオなど、一般受けする動画が消されずに残っているが、ニコ動はテレビ番組やPVをすべて消しているため、一般の人はYouTubeに行ってしまう。ないコンテンツは、自力で作るしかない」と考えたためだ。
7月にはダウンタウンの浜田雅功さんなど豪華な顔ぶれが出演する12時間ぶっ通し生放送も配信。かなりのコストをかけたが、「生放送をやると(優先的に視聴できる)プレミアム会員(月額525円)が増え、その後もやめないので、面白い番組を作れば作るほど長い目で見るともうかるという計算が出ている。トータルでは元を取っている」という。
ユーザーが動画をライブ配信する「ユーザー生放送」も人気だが、未成年が脱いだり、保育園の運動会に乱入したり、“出会い系”のように使われる――といった例も問題視されているが、「言われてるほどニコ生は不健康とは思っていない」と川上会長はいう。
「今までの似たようなライブサービスに比べれば健全で、ほとんどのユーザーは正しい使い方している。ただ、一番ホットなサービスだからターゲットになっている。サービスが大きくなっていて、問題が起きると注目されて大問題になりやすい」
サービス開始から3年。ニコ動はいまだに赤字が続いている。人件費を減らして別会社にするなどすれば単月黒字化は今でも可能だが、今はまだ、ユーザー拡大に注力すべき時期という。
「多くのユーザーが使う巨大なポータルを作れば、もうからないことはあり得ない。そういう前提で、黒字化は急いでいない。ただ、さすがにそろそろもうけないと。さまざまな方面からアクションがかかっていますから……」
月額525円の有料会員「プレミアム会員」は50万人を超えた。「ネットサービスでは50万人の有料会員はいい線だと思うが、携帯電話サービスやスカパー!などと比べても少ない数字。本当は500万とか1000万いかないと」。有料会員という「大事な卵」を大きくしていくために、根気よくサービスを強化していくという。
「『ネットでお金がもうからない』というのは10年ぐらいで連綿と作られてしまった巨大な幻想。それを打ち壊すには10年ぐらいかかると思う。すごく気の長い話で、それまでの間は血を流さなくてはならない。できるだけローコストで早い段階でトントンに持って行き、どんどん広げれば、最終的なマーケットを巨大にできる」
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