数字的に見れば、少なくとも1つ分かっていることがある――Windows 7はVistaとは違うということだ。
今週、Microsoftにちょっとした朗報が届いた。米調査会社NPD Groupの報告によると、Microsoftの新OSの発売当初の販売本数がVistaの当初の販売本数を234%も上回ったのだ。
これは、Microsoftが展開した大規模な販促キャンペーンと広範な値引きの効果によるものだろう。NPD Groupのアナリスト、スティーブン・ベイカー氏は11月5日付の発表文で「パッケージソフトウェアの販売が低迷する中にあって、Windows 7は多数の顧客をソフトウェア売り場に呼び込んだ」と述べている。
10月22日のWindows 7の発売日に続く1週間はPCの販売が急増し、発売前の1週間と比べて95%の伸びとなった。米調査会社Net Applicationsの報告書によると、同OSは急速に市場シェアを獲得しているようだ。また、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは東京での記者会見の席上、当初の売り上げについて「素晴らしい」と表現した。
好調な売り上げを示す数字が並ぶものの、Microsoftが経営不振の森を抜けたわけではない。同社はこの1年間で相当大きなダメージを受け、OSの好調な販売が数週間続いたくらいでは、厳しいマクロトレンドを覆すのは難しそうだ。
新OSの好調ぶりを示すNPD Groupの調査結果が発表される前日の11月4日、Microsoftは今年発表した5000人のレイオフサイクルの最終措置として、新たに800人の従業員を削減することを明らかにした。10月23日時点でのMicrosoftの従業員はワールドワイドで9万1005人。そのうち5万4923人が米国内で勤務する。
今回の800人の従業員削減により、Microsoftが今年1月以降で5000人と見込んでいた当初の人員削減規模を上回ることになった。Microsoftの広報担当者は米eWEEKへの公式発表で「従来と同様、厳格な業務管理を継続する中で追加的な人員調整が必要になることもある」と述べている。
景気後退でPCの売り上げが落ち込み、そのあおりを受けてMicrosoftの収益がダウンするという状況の中、同社は今年1年間を通じて“コスト規律”の確立に向けた大規模な社内運動を展開してきた。人員削減もその一環だ。またMicrosoftは今年、Money PlusやEncartaなどさまざまなレガシープログラムの販売を終了し、WindowsやOfficeといった主力プラットフォームやアプリケーションに精力を集中するという方針を積極的に進めてきた。
Windows 7の売れ行き好調を示すNPD Groupの報告は、ほかの市場調査会社の今後の調査によっても裏付けられるものと予想されるが、Microsoftの来年の業績は、景気が回復し、それに伴ってIT機器に対するユーザーの予算が増加するかどうかに掛かっている。
Microsoftの2010年第1四半期の売り上げは、昨年同期比14%減少の129億2000万ドルだった。同四半期の営業利益、純利益、希薄化後1株当たり利益は、昨年同期比でそれぞれ25%、18%、17%減少した。Windows 7 Upgrade Optionプログラムと11月22日の発売前のOEMと小売店へのWindows 7の販売による14億7000万ドルの売り上げが繰り延べられたことを考慮に含めると、同四半期の売り上げ総額は143億9000万ドルとなり、前年同期比で4%の減少にとどまる。
10月23日の決算発表の電話会見の後、Microsoftの株価は急上昇した。売り上げ減少となったものの、利益が当初予測を上回ったことで財務アナリストとMicrosoftの幹部はともに安堵のため息をついた。
しかし大きな問題がまだ残されている――来年には本当にIT機器の更新が起きるのかということだ。Microsoftのクリス・リデルCFO(最高財務責任者)によると、同社ではコンシューマーと企業がPCおよびMicrosoft製品を購入する見通しについて「適度な警戒心」を抱いているとしている。
アナリストらによると、少なくとも、ハードウェアとソフトウェアの老朽化のために、ユーザーはいずれ新システムを購入せざるを得なくなるという。
米Jefferiesのアナリスト、キャサリン・エグバート氏は「Windows 7で誘発されるアップグレードサイクルが2010年末に始まり、2013年初頭まで続く可能性がある」と10月12日付の報告書に記している。「新しいハードウェアの購入は、ソフトウェアのアップグレードよりも半年ほど先行すると予想される」
この夏に公表された各社の調査報告書も、企業はIT設備更新のニーズを抱えているとしているが、その時期に関しては見方が分かれている。全世界の120社のITバイヤーを対象にDeutsche Bankが独自に行った調査では、Windows 7の普及は「12〜18カ月以内」に始まる見込みだとしているのに対し、ScriptLogicの報告書では、米国企業の多くが新OSへの更新を開始するのは2010年末になると予測している。
特に企業市場では、ほかのMicrosoft製品の普及もWindows 7と同じパターンになる可能性がある。しかし普及ペースが遅くなれば、Microsoftは向こう数四半期にわたって収益低迷に直面することになる。Windows 7は短期的な成功を立証したかもしれないが、同OSがMicrosoftの運命にどのようなインパクトを与えるのかを正確に判断できるのは、1年以上先のことになりそうだ。
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