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Microsoftの“スパイガイド”は一読の価値あり

» 2010年03月01日 15時39分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 監視サイトのCryptomeは米Microsoftの社内文書を公開した後、同社の削除要求に屈して、しばらくネットから姿を消していたようだ。しかし既に同サイトは復活しており(サイトの管理者とMicrosoftの法務担当者との間の電子メールのやりとりもすべて再掲載されている)、問題となった文書を見ることができる。この文書はメディア関係者の間で「スパイガイド」と呼ばれている。

 「Microsoft Online Services Global Criminal Compliance Handbook」(Microsoftオンラインサービス国際犯罪コンプライアンスハンドブック)という仰々しいタイトルが付けられ、2008年3月の日付となっているこの文書には、Microsoftがオンラインサービスの一部としてどういった個人データを保存しているかに関する司法当局向けの情報が記されている。ここで取り上げられているサービスは、Microsoft Office Live、Xbox Live、Windows Live、Windows Live Messenger、Hotmail、MSN Groups、Windows Live ID、Windows Live Spacesだ。

 この文書(PDF形式のファイルはこちら)には、各サービスの仕組み、そしてMicrosoftがこれらのサービスからどんなユーザーデータを収集・保存するのかについて説明されている。さらに、Microsoftが司法当局に提出できるデータの種類、ならびに提出のための条件が記載されている。

 わたしはこの文書を2回読み返したが、アルミホイルのヘッドギア(訳注:電磁波防止や電磁波によるマインドコントロールや読心を防ぐ効果があると信じられている)をかぶってベッドの下に隠れなければ、とわたしを慌てふためかせるような記述は見当たらなかった。とはいえ、Microsoftと司法当局は、これらのサービスから多くの情報を収集することができる。特にXbox Liveには、誕生日、名前、電子メールアドレス、住所、電話番号、クレジットカード情報、Microsoft Passportのデータなどが保存されている。

 この文書で重要な部分をピックアップしよう。

サービス名 保存するデータとその保存期間
Windows Live ID Microsoftはユーザーが提供した登録情報および「最近の10件のMicrosoftサイトとIP接続記録の組み合わせ」を保持する
Hotmail MicrosoftはIP接続履歴の記録を60日間保持する
Windows Live Messenger Microsoftはアカウント登録データと一部のIP接続記録を保持するが、ユーザー間の通信の内容は記録に残さない
Windows Live Spaces IPアドレスおよびアップロードされたコンテンツの日時が記録される。コメント投稿者のテキストに加え、IPアドレスと投稿日時も記録される。これらの記録は90日間保持される
MSN Groups IPアドレスやアップロードの日時などを含む通信記録が60日間保持される
Windows Live SkyDrive、Office Live カッコいいアルミヘッドギアをしっかりとかぶり、万全の防護対策を施した場所に身を隠そうとしている人にとっては、例の電磁波に襲われるのは、文書のこの部分を読んだときかもしれない。といっても、取締機関があなたのMicrosoft Officeやファイルストレージを丹念に調べるのをMicrosoftが認めると書かれているのではない。どの記録をどれだけの期間にわたって保持するのかが明記されていないのだ

 この文書の最後のセクションでは「顧客のアカウント情報とコンテンツに対して求められる法的プロセス」に触れ、その冒頭にECPA(電気通信プライバシー法)に準拠すると記されている。さらに「コンテンツの提供には捜査令状が必要」「情報を開示できるのは召喚状がある場合に限られる」といった条件も明記されている。

 最近では、ネット上の個人情報に関して極度に神経質な傾向が広がっている(例えば、Googleが米国家安全保障局と協定を結んだという報道は人権団体を憤慨させている)。ますます多くのサービスがクラウドに移植されるのに伴い、この傾向が今後さらに強まるのは間違いない。読者もMicrosoftの文書を読み、どれだけの情報を同社に預けてよいのか自分自身で判断していただきたい。いずれにせよ、Cryptomeが復活したのはうれしいかぎりだ。

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