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企業にとってのソーシャルメディア――取り扱いは慎重に

» 2011年02月22日 15時23分 公開
[Tony Kontzer,eWEEK]
eWEEK

 技術革新はダーウィン主義的規範を伴う。つまり、人間、そして人々が働く企業は、新しい道具を手にするたびに、それに適応しなければならないということだ。

 例えば、電子メールは、何の抑揚も伝わらず、感情を伴わない平板的な文字メッセージで意志疎通するという環境に適応することをわれわれに強いた。同僚に手短な質問をするのには電子メールは非常に便利だ。だが、家庭内の問題について家族と徹底的に話し合う手段としてはあまり適していない。

 自分を取り巻く社会全体にメッセージを配信することが可能なソーシャルメディアでは、こういった傾向が一段と顕著になる。何げなく言葉にした考えが、何百人あるいは何千人という人々に読まれるという環境にあっては、発言する前によく考えることが肝要だ。NFL(ナショナルフットボールリーグ)の間抜けどもはきっと、この教訓が身にしみたことだろう。先月のNFCチャンピオンシップゲームでシカゴ・ベアーズのクォーターバック、ジェイ・カトラー選手がセカンドハーフを欠場したことについて、NFLの関係者が大したケガでもないのに根性がないとTwitterで批判したのだ。その翌朝、カトラーが内側側副靱帯損傷でチームドクターから欠場を命じられたことが報道で明らかになったのだ。

 現実のビジネス社会に目を向ければ、こういった状況が一層深刻化しているようだ。従業員によるソーシャルメディアへの投稿が、社内のほかの従業員に共有されるからだ。先日、元雇用主の米American Medical Response(AMR)との訴訟で和解したドーンマリー・スーザ氏のケースもその一例だ。AMRは、上司を批判する記事をFacebookに投稿したスーザ氏を解雇したのだ。

 最終的にスーザ氏に有利な結果となったかもしれないが、ビッグブラザー(訳注:ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に登場する支配者の名前)が実際にわれわれを監視しているという事実が、この一件であらためて浮き彫りになったことは確かだ。

 同僚や上司の悪口を言うというのも聞いていて不愉快なことだが、アドバイスコラム「Dear Amy」に最近寄せられた投稿を読んだときは、頭を金づちで殴られたような強い衝撃を受けた。これはある企業の顧客サービス担当者によって書かれたもので、この従業員は怒った顧客がTwitterに投稿したのが原因で仕事をクビになったのだ。彼は「Dear Amy」フォーラムを通じて、従業員に対する怒りのメッセージをソーシャルメディアに投稿する前に「10まで数える」ようにしてほしいと人々に訴えた。こういった怒りの投稿は、低次元の問題について延々と不満を並べ立てるだけの場合が多いという事実を見れば、10まで数えるというのは、なかなか良い方法のように思える。

 この顧客サービス担当者の不幸を知ってわたしが思ったのは、企業がFacebookのページを通じて顧客からのフィードバックを受け入れ、自社に関するTwitterへの投稿を監視するという今日においては、意思決定者がささいな出来事に過剰に反応する傾向が強くなるということだ。

 言い換えれば、企業は技術がもたらした状況に注意深く対処する必要があるということだ。もはや単なるオタクの大将というだけではなく、ビジネス全体の面倒を見る役割も積極的に果たさなければならないCIO(最高情報責任者)は時として、企業をそれ自体から防御する必要もありそうだ。ソーシャルメディアは、顧客との密接なつながりを企業に提供する。しかしこのつながりは極めて限定的なものでもある。つまり、企業がこのつながりから収集する情報をうのみにすべきではないということだ。

 Twitterで何が言われているかをフォローする企業は基本的に、以前なら顧客の胸にしまい込まれていた考えにアクセスしているのだ。恐らくそれはずっと個人的な考えでとどまっていたに違いないだろう。こういった匿名の考えを拾い上げ、顧客の気持ちを知るための一般的なデータベースを作成するのは、ビジネスとして極めて理にかなったことだ。しかし匿名の個人的考えに基づいて行動するのはばかげており、せいぜい気味悪がられるのがオチだ。

 今日、CIOはこういったソーシャルメディア情報ループを構築するよう求められるだろうが、このまったく新しいタイプの情報をどう扱うべきかを慎重に検討する必要がある。

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