楽天は7月1日、2010年から準備を進めてきた“英語の社内公用語化”を本格スタートした。三木谷浩史社長はこれに先立って都内で会見し、同プロジェクトのこれまでの成果と今後の展望を語った。会見は全編英語で行われ、プレゼンテーション後には外国人記者などからの質問も相次いでいた。
同社は2008年にEC事業の海外展開をスタート。米Buy.comや仏PriceMinisterなど海外のEC事業者を買収して傘下に収め、現在13カ国で展開している。だが海外展開を始めた当初は「国内にいる社員と海外の社員が話すのに翻訳が必要だったりと、(買収した)海外企業とつながっている感じがなかった」と三木谷社長は振り返る。
同社は海外戦略の強化を目指し、2010年に社内公用語の英語化を発表して話題になった。それ以来、社員にTOEIC受験を義務付けたり、単語テストを実施するなど、全社的な英語スキル向上に向けてさまざまな施策を行ってきたという。
プロジェクトの発表から2年たった今、「すでに社内会議の80%以上が英語で行われるようになった」と三木谷社長。社員のTOEIC平均スコアは526点から694点へと向上したほか、幹部は全員800点以上を獲得したという。
三木谷社長は「うちの社員にはもう通訳が必要なくなった」と自信を見せる。「流暢に英語を使えるようになった社員もいるし、上手でなくても恐れずに英語を話すようになった社員が多い」。人材採用でも英語を重視し、新卒採用では約3割を日本人以外から採用しているという。
英語公用語化の本格スタートを通じ、三木谷社長は「世界中のグループ企業を“1つの企業として”運営していきたい」と話す。「日本企業が海外の企業を買収しても、その会社の経営陣が『日本語ばかりでよく分からない』ということになってしまう場合が多い。楽天ではその状況を避け、買収した企業と一緒になってやっていきたい」(三木谷社長)
三木谷社長のプレゼンテーション後には記者との質疑応答が行われた。
――社員同士が(不慣れな)英語でコミュニケーションにすることによって、短期的には仕事の生産性が落ちるのではないか。
三木谷社長 それはイエスでもありノーでもある。1000単語ほど習得すれば、英語で仕事はできる。社員によっては“辞書を片手に”ということになるかもしれないが、難しいことではない。ビジネスシーンの多くはルーチン。短期的にはコストになるかもしれないが、長期的には大きなインパクトになるのでは。
――反対する社員をどのように説得したのか。
三木谷社長 これまでのところ、プロジェクトに完全に反対する社員はいない。彼らは当然のこととして英語をやっている。1年前にはそんなこともあったが、何度も説得したり励ましたりしてこれまでやってきた。
――英語を話すのが嫌で会社をやめた社員はいるか。もしいるとしたら、退職時にどのような“捨てぜりふ”を残していったのか。
三木谷社長 いるが、そう多くはない。というのも、彼らも(英語の社内公用語化を)われわれにとって重要なプロジェクトだということを理解して辞めていった。捨てぜりふなどはなかったと思う。
――社内公用語の英語化が進む中で、日本的な働き方のよさが失われることはないのか。
三木谷社長 英語が入ってくることで日本的なよさが失われることはない。英語を使うことで、日本的なよさを世界に示していくことができる。日本の倫理観などを世界に発信できるのでは。
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