緊急事態宣言後の4月13日からは、コンタクトセンターも完全在宅勤務に切り替えた。山口氏によると、対面での会話を避けたいニーズがあったからか、受電数はコロナ禍の前から約2.2倍に伸びたという。そうした中でジョインテックスカンパニーは、オペレーター向けのセキュリティ対策を整え、テレワークの安全性も強化した。
「電話対応では個人情報を扱うので、情報漏えい対策には気を配りました。社員を信じていないわけではありませんが、Amazon WorkSpaces上のデータはローカルに移せない設定にしています。ログもチェックし、許可された端末以外から社内システムへのアクセスを試みる動きや、不審なWebサイトにアクセスする動きがあれば管理側にアラートが届くようにしています」
こうした工夫のかいあって、同社は緊急事態宣言が解除されるまでの約2カ月間をフルリモート体制で乗り切った。その後は出勤しての業務も少しずつ再開しており、現在のコンタクトセンターの在宅率は60〜70%程度という。
今後はコンタクトセンターのテレワークのさらなる効率化に向け、Amazon Connectの機械学習機能の利用を検討している。「オペレーターごとの受電数を分析し、手が空いている人に自動で電話をつなげたり、よく電話をかけて下さる顧客に相性がいいオペレーターをアサインしたりする機能を、来年度に取り入れたいと考えています」と山口氏は話す。
さらなるセキュリティ強化も図る方針で「オペレーターのPC画面が、ふとご家族の目に入ることもあるかもしれません。そうした万が一のケースによって、個人情報が漏れるリスクもあるため、何らかの手段を講じたいと考えています」という。
山口氏は「コロナ禍のようなパンデミックは想定していませんでした」と話すが、ジョインテックスカンパニーがコンタクトセンターでも迅速にテレワークを始められた背景には、地震や台風を見越して準備をしていた“転ばぬ先のつえ”があるのは言うまでもない。さらなる感染拡大や未知の災害への対策として、企業が参考になる部分は大いにありそうだ。
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、企業はテレワーク導入などの体制変更を強いられた。新しい働き方に適したIT環境を築く上で、大きな鍵を握るのがクラウドの活用だ。
サーバやストレージ、仮想デスクトップ、ビデオ会議、チャット——。インフラや業務アプリにクラウドを使うと、企業は必要に応じてリソースの拡大縮小を行える他、場所を問わない意思疎通を可能にし、柔軟な働き方を実現できる。
だが、クラウドも万能ではない。オンプレミスよりもセキュリティ管理が難しく、障害発生のリスクもある。
企業はどうすれば、課題を乗り越えてクラウドを使いこなし、働きやすいIT環境を実現できるのか。識者やユーザー企業への取材から答えを探る。
第1回:コロナ禍でテレワーク普及も、日本はクラウド後進国のまま? その裏にあるSI業界の病理
第2回:「リモートアクセスできない」——コロナ禍のテレワーク、ITインフラの課題が浮き彫りに 打開策は「クラウド」が首位
第3回:コロナ禍でFAX・Excelから脱却 感染者データをクラウドで管理 ITで変わる自治体の今
第4回:自社のOracle Cloud活用、決算業務をフルリモートで 日本オラクル経理部のコロナ対応
第5回:「誰でも使えるシステムがすぐ必要だった」 オンライン授業迫られた文系大学の奔走 タイムリミットは2週間
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