インボイス反対を熱く語った長文メールを送りまくったが反応はゼロ。「私たちの思いを知ってくれるだけでもいいと、長い文章を送ったんですが……重すぎたのがダメだったっぽいと、今は思います」(甲斐田さん)
初めて議員に会えたのは9月1日。人からの紹介で、インボイス問題やサブカルチャーに詳しい自民党の赤松健議員・山田太郎議員への陳情が実現した。
「赤松さんはインボイス反対を公約に参院選で当選されました。自民党の党議拘束があるからインボイスを止めることは難しいとしても、延期に向けて動いてもらえるのではと期待していたんですが……」(甲斐田さん)
緊張しながら初めて訪れた議員会館。「要望書を渡すだけだと、読んでもらえないかと思って」甲斐田さんは開口一番、3ページにわたる長い要望書を読み上げた。
両議員とも“陳情初心者”に優しく、1時間半にわたって話を聞いてくれた。ただ、インボイス延期への期待は裏切られたという。「『延期は無理だよね、法律に書かれているから』と山田議員の秘書さんに言われて……衝撃でした」(甲斐田さん)。
ただ、山田議員は税制調査会で、制度の延期を含めた見直しを働きかけている。VOICTIONとも、同じ目的をもつ者同士として何度か話し合っているという。
【更新:2022年12月21日午後4時半:最新状況を追記しました。】
その後、公明党議員や、インボイスに反対する共産党・立憲民主党・国民民主党など野党議員への陳情が実現。そのたびに求められたのが「データとエビデンス」だ。
問題をデータで示すべく、声優への調査を実施。年収やインボイスの影響などを尋ねるアンケートをGoogleフォームで作成し、知り合いに声をかけたりTwitterなどで告知したところ、670もの回答が集まった。国内の声優が約1万人といわれる中で、十分な成果だ。
結果は衝撃的なものだった。声優の半数が年収300万円未満であり、9割以上が、インボイス制度導入の影響を直接受ける免税事業者(年収1000万円以下)。インボイス制度が導入されれば「廃業を検討する」と答えた声優が27%もいた。
「『廃業を検討する』という選択肢は、一応入れてみたものなんですが、27%もが選んでいてショックでした。一部の頂点の人を除くと、多くの声優は、オーディションで落ち続けて心を折られ、それでも頑張っている。そんな中でインボイス制度が始まると、もういいや、声優やめてしまおう、と思う気持ちになるのでしょう」(福宮さん)
アンケート結果は、議員への陳情に活用するとともにプレスリリースとして配信。ニュースサイトに取り上げられるなどし、世論の盛り上げにつながった。
議員への“FAX攻撃”も始めた。「議員に見てもらうには、メールよりFAXのほうがいいと言われて」(福宮さん)
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