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「未来はどうなっていると思う?」 考えるコツ、あります コニカミノルタとSF作家に学ぶ方法論SFプロトタイピングに取り組む方法(2/6 ページ)

» 2023年06月16日 19時00分 公開
[大橋博之ITmedia]

コニカミノルタが使うデザイン思考 未来の価値をどう見つける?

大橋 デザイン思考やエンビジョニングプロセスなどの手法の名前が登場していますが、どのようなものかご説明いただけますか

神谷 デザイン思考とは、ユーザーのインサイト(消費者の隠れた心理)を深掘りして、課題を設定し、アイデアを創造していくアプローチです。未来を描いているのですが、現代の課題を起点として未来を描くフォーキャスティング的なアプローチだと一般的にいわれています。

 しかしコニカミノルタのデザイン思考ではビジョンを重要視しており、プロセスの中にビジョンを意図的に含めています。「こういう世の中を作りたい」というビジョンを設定し、そこに向けて答えを出していきます。そのためフォーキャストと、未来像を基に現在すべきことを考えるバックキャストの両方のアプローチを含むデザイン思考なのが特徴です。

 またエンビジョニングプロセスは、さまざまな手法を基に開発したプロセスです。ざっくりいうと5つのステップ――「envisioning」(理想の社会像を描く)「anchoring」(理想と現実をつなぐ)「casting」(別の可能性の道筋を見通す)「facing」(現実と対峙する)「braiding」(事業構想を積み上げる)で構成されており、未来思考と現実的な思考を行ったり来たりしながら答えを導き出していきます。

photo エンビジョニングプロセスについて

大橋 具体的に、どのような場面で使うのでしょうか。

神谷 envisioning studioで行った事例の一つに「KM2080」というプロジェクトがあります。2080年の未来そのものを描くのではなく、2080年まで通用する中長期的な未来の価値を見つけるプロジェクトです。

 一般的に未来を構想するとき、フォーキャストとバックキャストの両方を使うのですが、社会で起こっている現象や、起こりかけている兆しみたいなものを基にして発想を飛ばすため、どのような立場の人がやっても似たような未来になってしまう。もしくは、特定の人が描いたパーソナルな未来になってしまうということがあります。

 つまり、フォーキャストとバックキャストの2つの視点だけでは足りないということです。

 コニカミノルタの未来の描き方で重要視しているのは、150年の歴史が培ったコニカミノルタの文化をベースにして、われわれの視点で未来を解釈し直している点にあります。

photo コニカミノルタの未来の描き方

大橋 とても興味深いお話でした。「どのような立場の人がやっても似たような未来になってしまう。もしくは、特定の人が描いたパーソナルな未来になってしまう」というのはとても理解できます。

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