小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
ソニーの謎ソリューション「Contents Production Accelerator」、よく分からなかったので詳しい話を聞いてきた(3/3 ページ)
これからのキーは「ニアライブ」
現場で起こっていることを撮影し、いち早く電波に乗せるというのは、報道の究極の形である。そのために中継車があるわけだが、中継車の数には限りがある。日本では法的な問題で実現しなかったが、ソニーでは2000年以前から衛星回線を使い、カメラとその周辺機器だけで局へ映像を直接送るというソリューションを、Betacam SXでやろうとしていた。
その後4Gや5Gといったキャリア回線の高速化により、LiveUやTVUPackを使って映像をライブでストリーミングするという手法が一般化された。だが実際には、フレーム落ちや遅延なしで放送品質のライブ映像を保証するのは、大変リソースを食う。出払っているあらゆるカメラにそれらの機材を搭載するわけにもいかず、また受け側のサーバにもリソースの限界がある。
そこで昨今注目されている技術が、カメラの録画中にある程度の量がたまったら、そこから順次小分けファイルとしてクラウドに送るという手法である。最小が30秒単位のぶつ切りなので、ライブではない。最低でも30秒遅れになる。だがライブストリームを送るのではなくファイル転送なので、均一なスピードが出なくても構わない。
待ち構えるクラウド側は、最初の30秒が届いた時点でファイル化するが、次が届けばそれを同じファイルに継ぎ足していくので、ファイルはどんどん伸びていく格好になる。最初にファイルができた時点で、プレビューや編集作業が開始できる。つまりライブではないが、「ニアライブ」ではある。
編集が前提であれば、実際にはこれで十分だ。これまではカメラが局に帰ってこなければ着手できなかった編集が、現場から30秒遅れで着手できる。送るのはプロキシだが、昨今はフルHD解像度のH.264で16Mbpsぐらいある。そもそも地上波放送が1440×1080解像度でMPEG-2の16Mbpsしかないわけだから、それだけあればオンエアに耐える画質だ。
こうした転送方式は「チャンク転送」と呼ばれ、ソニーのカメラではPXW-Z280、今年9月に出たPXW-Z200、シネマラインのFX6が対応している。現在ソニーには、5G対応ポータブルデータトランスミッタ「PDT-FP1」という製品がある。スマホ技術を使ったカメラ映像伝送器だが、これと上記のカメラを組み合わせることで、キャリア回線経由のチャンク転送が可能になる。「Contents Production Accelerator」は、このチャンク転送による「ニアライブ」をフル活用するシステムとなる。
撮影している最中にどんどん映像が転送され、編集にかけられるというソリューションは、もう30年ぐらいあれやこれやと各社が模索し続けているわけだが、コスト面やリソース面で常用できなかった。「Contents Production Accelerator」によって、これがようやく実用レベルで普及しそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
パナソニックHD子会社、使用禁止の生成AIに従業員約33万人分の個人情報をアップロード
-
2
PHP脆弱性でいち早くサービス停止したコドモン 背景に「被害が出てからでは取り消せない」
-
3
AIに200万円渡してネットショップを1年運営させてみた──Alibabaの研究者らがシミュレーション 資産14倍の例も
-
4
「Claude Mythos 5」、危害の兆候を顧みず実在の開発者を標的に──AnthropicとAISIが分析結果を公開
-
5
人に注射を打てる「サイボーグゴキブリ」の群れが、がれき下の被災者を救助? 実験成功率72%
-
6
「お名前.com」 のFX自動売買VPS、不正アクセスで金銭被害か 「600万円の損失」「55万円なくなった」……報告相次ぐ
-
7
1000万のWebサイトで「生きたAPIキー」が大量に“丸見え”状態? 大手銀行やインフラの鍵も 米スタンフォード大などが調査
-
8
高市総理、サイバーセキュリティの本を出していた しかも“PHP”から
-
9
タイムズカー、3000円の見舞金支払いへ 免許証画像漏えいの146万件対象 55億円の特損計上
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR