ハイディフィニションについて考える(2/2 ページ)

» 2004年01月23日 10時54分 公開
[橋本新義,ITmedia]
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 これらのディスプレイを見て、デジタル家電とせめぎ合い、混乱しているマルチメディアPCの現状を象徴していると感じたのは、筆者だけではないだろう。オーバーな言い方をすると、これらは「PCと家電という二つの文化の衝突によって生まれた鬼っ子」と言うべきなのかもしれない。

 ……とまずは考えたのだが、実はひょっとすると、これらの製品はもっと大きなテーマを提示していると見るべきなのかもしれない。

 筆者が考えた点は二つ。まず一つ目は、こうした「デカくて粗いディスプレイ」は本当にアリなのか、という点だ。従来のように価格が下がると“高解像度化の絶対的肯定”というPC力学に押しつぶされて消えていくのか、それともデジタル家電化の傾向に乗ってある程度生き残るのか……?

 そして二つ目は、もっと根元的な問題だ。それは「ディスプレイで、これ以上の高解像度化が進むのか(必要とされるか)どうか」だ。

 現在、一般ユーザーが使っている解像度は、UXGAまでというところだろう。しかしここまで紹介したように、これはCRTという出力側の事情によって決定されたという部分がある。しかし液晶は、さらなる高解像度化の余地があるのだ(文末の説明を参照)。

 また、それを踏まえて、本田雅一氏が精力的にレポートされているように、Longhornでは高解像度ディスプレイへの対応が見直されることが決定している。

 しかし、そうした動きが出てくるのは1〜2年後だ。だからこそ、現時点での動向が重要になる。

 マニアは当然高解像度に飛びつくが、一般ユーザーはどう動くか? これまでのPC向けディスプレイのように、安ければ高解像度に飛びつくのか? それともひょっとしたら一般ユーザーがディスプレイに求めている解像度は、現状で普及しているレベルで十分なのではないのか? だとしたら、液晶ディスプレイの高解像度化は、UXGAで止まってしまうのだろうか……?

 奇しくもこの“高解像度問題”は、現状のテレビや次世代DVDでもホットなテーマだ。そして筆者の私見では、この点においては、PCと家電の動向は密接に関連している。

 従来より高解像度化がほぼ絶対的に肯定されてきたPC業界は、高解像度を売りとする次世代映像機器関連会社から見れば、注目せざるを得ない市場だ。そう考えると、ここでどういった答えが出るのかは、デジタル放送や次世代DVDなどのいわゆる“ハイディフィニッションもの”全般の動向に、ある程度の影響を及ぼすような気がする。

 もしかすると、筆者を「ポカーン」とさせた大画面・低解像度液晶ディスプレイは、単なる鬼っ子などではなく、「ハイディフィニションの未来を占う存在」として登場した……のかもしれない。


将来的な高解像度化は液晶の独擅場

 将来的な高解像度化(つまり限界画素密度)は、現時点で発表されている限りでは、技術開発レベルでも液晶の方が上を行っている。

 高密度画素におけるCRTの極北を示すものとしては、おそらく1999年に発表された超高精細トリニトロンブラウン管になるだろう。

 このブラウン管は、17インチで理論上横2379ピクセル、21インチで同2869ピクセルだ。アパーチャグリルピッチはなんと0.125ミリと、一般的なPC用ディスプレイの半分にまで高密度化されている。

 対して液晶の場合は、2000年に東芝が10.4インチ1600×1200ピクセル液晶の試作品を開発している。さらに製品レベルになるともっと大きな差が開き、2002年にNECのノートPC「VersaPro」が15インチで2048×1536ピクセルという超高精細液晶を搭載しているが、この画素密度は、もはやCRTでは無理だ。

筆者はアキバの近くに住む編集者兼ライター兼価格ウォッチャー。正月は悪化した持病の肩こりを癒す日々。最近はいわゆる“萌え系”の流行に影響されてか、2003年12月のCPU業界の状態を“December when There No Prescott”と勝手に評し、果ては「AMDの新コア“Sakura-Hammer”まだー?」とのたまっているらしい。

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