「R-D1」に盛り込まれた“レンジファインダーの魅力”(1/2 ページ)

» 2004年03月11日 20時19分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 「往年のカメラ資産にデジタルの息吹きを吹き込み、新たな写真文化を創造したい」――。

 セイコーエプソンの丹羽憲夫副社長は、世界初“レンジファインダーデジカメ”の開発経緯を、こんな言葉で表現した。

 同社が3月11日に発表したデジタルカメラ「R-D1」(スペックの詳細は別記事を参照)。その魅力は、フルデジタル化が進む近年のデジカメの世界にアンチテーゼを投げかけるような、徹底した“アナログへのコダワリ”だ。

photo 世界初“レンジファインダーデジカメ”「R-D1」

レンジファインダーの魅力

 「レンジファインダーカメラ」と聞いても、銀塩カメラにそれほど興味のない読者にとっては「はぁ?なにそれ」かもしれない。“Rangefinder”の名が示す通り、距離を測る装置(距離計)がついたファインダーを搭載したカメラのことで、三角測量の原理で被写体とカメラとの距離(ピント)を合わせる。

 一眼レフカメラのように、レンズから入射した光を直接ファインダーに通して像のボケ具合を見ながらピントを合わせる方式とは異なり、撮影レンズと合焦システムがそれぞれ独立しているのが特徴。特に一眼レフでは、広角レンズやF値の暗いレンズを装着するとピント合わせが難しくなるのだが、ファインダーが独立して機能し、性能が一定のレンジファインダーなら、どんなレンズを装着しても、素早く精度の高いピント合わせができる。レンジファインダーが“スナップに強い”といわれるゆえんだ。

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photo サイズは142(幅)×88.5(高さ)×39.5(奥行き)ミリで重さは約590グラム(ボディのみ)。ベース機のBESSA-R2よりもそれぞれ約6〜7ミリほど大きくなっているが、レンジファインダーならではの短いフランジバックを生かした薄型ボディはDSLRと比較すると新鮮だ

 コシナとの協業で開発されたR-D1は、コシナが誇るレンジファインダー銀塩カメラ「BESSA R2」をベースに作られた。もっとも重要なレンジファインダー部は、コシナが次期BESSA向けに開発を進めていた「等倍率ファインダー」を採用。レンジファインダーのメリットを生かして、両目で視野を確認することも可能だ。測距精度の目安となる光学距離計の基線長は38.2ミリだが、等倍率ファインダーなので有効基線長も同じ38.2ミリとなる。

photo コシナが次期BESSA向けに開発を進めていた「等倍率ファインダー」を採用

 レンジファインダーのメリットの1つに、「シャッターを切った時に視野が消えない」というものがある。これもファインダーがレンズから独立しているためで、決定的瞬間を自分の目で見続けながらシャッターを切ることができるのだ。そして、そのファインダーまでも等倍にすることで、両目を使って視野を確認することが可能になった。

 「レンジファインダーはもともとフレームの外まで確認できる広い視野が特徴だが、等倍率にすることで両目分の視野でフレーミングできる。一眼レフには真似のできない“未来を見通すファインダー”」(同社)

photo 等倍率ファインダーによって、フレーム内では見えていない近づいてくる自動車までも視野にいれるとこができ、“未来を予測”できる

レンズ交換の楽しみ

 もう1つのメリット――それが最大の魅力という人も多い――が「レンズ交換の楽しみ」だ。

 レンジファインダーは一眼レフのようなミラー機構などが必要ないため、ボディ内の空間を自由に使ったレンズ設計が行える。そのため、小型で高性能な“銘玉”と呼ばれるレンズを数多く生み出してきた。

 R-D1のレンズマウントは、名機ライカMマウント互換のVMマウントを採用。ライカMマウントレンズのほか、マウント変換アダプタ(コシナ製M-バヨネットアダプターリング)を使うことで、ライカLマウント(ネジ式)のレンズも利用可能だ。

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 本体内に用意されたブライトフレームは、28/35/50ミリの3種類。R-D1に搭載されたCCDは大型APS-Cサイズ(23.7×15.6ミリ)有効610万画素タイプ(原色フィルター)で、35ミリ判換算の焦点距離は約1.53倍となるので、ブライトフレームに用意された焦点距離のレンズでは、42/53/75ミリ相当の画角になる。

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