3Dlabs、同社初のPCI Express x16対応の新グラフィックスチップ「REALiZM」シリーズを発表(2/2 ページ)

» 2004年06月30日 19時05分 公開
[トライゼット西川善司,ITmedia]
前のページへ 1|2       

REALiZM-VSU──32頂点シェーダ+96ピクセルシェーダ

 REALiZM-VSUは、一風変わったプロセッサで、VPUと組み合わせて始めて機能を発揮する。VSUは"Vertex Scalability Unit"の略で、3Dlabsお得意のジオメトリアクセラレータにPCI Express x16インタフェース機能、そしてVPUスケジューリング機能を統合した複合機能型プロセッサである。なお、REALiZMシリーズにおいて、PCI Express x16への対応にはこのVSUの搭載が必要不可欠になる。

 プロセスルールはVPU同様のTSMCの非low-k/0.13マイクロプロセスで、総トランジスタ数は1億3000万個。VSUのジオメトリアクセラレータとは、その実、VPUの2倍の頂点シェーダユニットに相当する。つまり、VSUにはトータルで32基の頂点シェーダユニットが内蔵されているのだ。

 そしてVSUには、VPU側からは切り離されたまったく独立管理される128MバイトのGDDR3メモリが接続され、これはVSU専用の頂点バッファ専用メモリとして利用される。1基のVSUに対し、技術的には最大8基のVPUが接続可能になっているが、電源容量の問題や基板設計の物理的制約もあり、現実的な構成としては「1VSU+2VPU」のみが提供されることになる。なお、VSUと各VPUはAGP 16X相当の、双方向トータルで4.2Gバイト/秒の内部バスで接続される。

 1VSU+2VPUの構成では、VPU側の頂点シェーダユニットが無効化され利用されない。VSUはレンダリングパイプラインをマルチスレッドのような形で2基のVPUに発行し、これを各VPUが処理していく形をとる。

 具体的なレンダリング・メソッドは1VPUのときと同じで、8×8ピクセル単位をレンダリングしていく形になるが、1VSU+2VPUのときには、この8×8ピクセル単位を同時に2セット並行してレンダリングしていけることとなる。つまり、理論値ではパフォーマンスは2倍に相当することとなる。これは先頃発表されたばかりのGeForce 6800の2枚差しソリューションに通ずるところがある。

1VSU+2VPU構成におけるブロックダイアグラム。この場合、32頂点シェーダ+96ピクセルシェーダという実に贅沢な構成になる

 2VPU構成において、各VPUはそれ自身に自分専用のビデオメモリをそれぞれ256ビットバス接続で256Mバイトずつ持つ。ただし、これはグラフィックスサブシステムからは2セットの256MBビデオメモリとしては見えず、一つの512Mバイトメモリとして見えることになる。この仕組みのおかげで、テクスチャが動的に更新されるマルチパスレンダリングケースでも、ビデオメモリの整合性を取るための同期処理が不要となっている。

 3Dlabsはこの仕組みを「世界初の512ビット GDDR3ビデオメモリインタフェースを搭載したグラフィックスシステム」と呼んでおり、公称スペックとしては64Gバイト/秒の帯域があると説明している。なお、この数値から逆算するとREALiZMシリーズに登載されるGDDR3メモリの動作クロックは1GHzと推察される。

VSUと各VPUは4.2Gバイト/secとAGP 16X相当のバスで接続される。1VPUでは16Gバイトまでだった仮想化ビデオメモリ機能も、1VSU+2VPU構成ではアドレス空間が拡張されるために最大で256Gバイトまでがサポートされる。

PCI Express 16X対応で1VSU+2VPU構成の「WILDCAT REALiZM 800」カード。カードの全長は30センチに近い。3Dlabsの担当者からは「世界一重いグラフィックスカード」というジョークが飛び出したが、実際「ずしり」と重い。

最上位モデル「800」は30万円前後。下位モデルより8月から順次出荷開始

 ラインナップは、下の表のようになる。日本での取り扱いはイノテック(http://www.innotech.co.jp/)が行う予定で、「WILDCAT REALiZM 100」が日本円で15万円前後、「同200」が20万円前後、「同800」が30万円前後となる見込みだ。3Dlabsでは1VSU+2VPU構成において、各VPUに512Mバイトのビデオメモリを接続させた128Mバイト+1Gバイトの最上位製品の開発も計画中とのこと。

 WILDCAT REALiZM 200/800に対しては、Framelock/Genlock機能がサポートされ、この機能を利用するためのオプションカードが提供される。Framelock機能とは、一つの巨大なフレームを分割して複数のREALiZMにレンダリングさせ、これをビデオウォールのような巨大なマルチ・ディスプレイシステムにて同期表示させるもの。そしてGenlock機能とは、複数機器間で映像信号の同期を取るためのものだ。これらの機能をサポートするオプションカード製品は「WILDCAT REALiZM Multiviewキット」の名称で2004年8月に650ドルにて提供される予定になっている。

 出荷時にはOpenGL 1.5とDirect X 9.0cに完全対応したドライバが提供される予定で、Direct 3D環境ではプログラマブル頂点シェーダが2.0、プログラマブルピクセルシェーダは3.0に対応したHLSLが利用可能としている。また、2004年第3四半期には64ビット版のWindows XP/Linuxドライバも提供される予定だ。

 3DlabsのP10-VPUのコンシューマ版は、3Dlabsの親会社であるクリエイティヴがアナウンスしたにも関わらず、ついに実現することがなかったわけだが、3Dlabs関係者のコメントによれば、今世代においてもREALiZMシリーズのコンシューマ版を提供する可能性は低い、とのこと。

 赤(ATI)と緑(NVIDIA)の対決に黄(3Dlabs)が割って入るのは、プロフェッショナルグラフィックスマーケットのみ、ということになりそうだ。

 3Dlabs Wildcat Realizm 1003Dlabs Wildcat Realizm 2003Dlabs Wildcat Realizm 800
バスAGP 8XAGP 8XPCI Express X16
メモリGDDR3 256MBGDDR3 512MBGDDR3 128MB+512MB
最大表示画面数222
デュアルリンクDVI×22
RAMDAC400MHz×2400MHz×2400MHz×2
立体視コネクタ
Framelock/Genlock×
Viewperf7.1.1 UGS-03スコア505085
OpenGLプログラマビリティテスト/12000パーティクル118118197
OpenGLマルチプルウィンドウテスト/4ウィンドウ606080
出荷時期2004年8月2004年8月2004年第3四半期
価格1249ドル1599ドル2799ドル

3Dlabsの過去製品、他社競合製品とのパフォーマンスを比較したグラフ。RADEON X800ベースのFireGL、GeForce 6800ベースのQuadroが出てきたときが本当の勝負となる
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月28日 更新
  1. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  2. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  5. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  6. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  7. 2025年までに「AI PC」を1億台普及させる――Intelが普及に向けた開発者支援をアップデート ASUS NUC 14 Proベースの「開発者キット」を用意 (2024年03月27日)
  8. いろいろ使えるFireタブレットが最大7000円オフ! Echo Budsは半額以下で買える! (2024年03月26日)
  9. 15.5万円の有機ELディスプレイ「MPG 271QRX QD-OLED」に指名買い続出 (2024年03月25日)
  10. サンワ、Windows Helloに対応したUSB Type-C指紋認証センサー (2024年03月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー