コロナ禍を経て、リモートワーク(テレワーク)が定着した職場は少なくない。リモートワークが難しいとされる業種でも、特に遠隔地との打ち合わせや研修などでビデオ会議(Web会議)を使うことが定着している。
ビデオ会議で使うWebカメラも高画質化(≒高解像度化)が進んでおり、やり取りするファイルのサイズも大きくなってきた。その上、昨今のTVはスマート化が進んでおり、動画のストリーミングサービスを直接受信できるものが一般化している。そして、コンピュータゲームはオンライン購入が一般化し、タイトルによってはインストール時に数十GBものデータをダウンロードしなければならないケースもある。
そうなると、たまに「インターネットが遅い」と感じることがあるかもしれない。そんな時、まず「PCがパフォーマンス不足なのかな?」と思いがちだが、ネットワーク回りが“足かせ”になっていることも多い。プライベートでは「仕方ない」と済ませられても、「ビデオ会議中に突然フリーズ」「PCを起動したらOSアップデートが始まってダウンロードに時間がかかる」といったことが生じると、生産性の低下につながってしまうため看過できない。
そんな場合、ネットワーク回線の増速を検討する人もいるかもしれない。最近は最大通信速度が1Gbpsを超える回線サービスも複数あり、戸建て向けだと最大1Gbpsのサービスと料金は大差ない。「乗り換えてしまおう(切り替えてしまおう)」と考えるのもありだ。
しかし、高速なインターネット回線にしてもパフォーマンスがあまり改善しないこともある。そんな場合、自宅で使っているルーターがボトルネックになっている可能性が高い。
自宅のネットワークにまつわるストレスを低減したい――そんな人にお勧めしたいのが、バッファローが10月に発売したWi-Fi 7(IEEE 802.11be)対応無線LANルーター「AirStation WSR6500BE6P」だ。実売価格は2万円前後と手頃ながら、2.5Gbps(2.5GBASE-T)対応のインターネット(WAN)ポートを備えている。
今回、バッファローからブラックモデル(WSR6500BE6P-BK)を借りて試す機会を得たので、紹介したい。なお、この記事で掲載する最高通信速度は、特記のない限り理論値となる。
WSR6500BE6Pは、バッファローのコンシューマー向けWi-Fi 7ルーターの中ではミドルレンジモデルに位置付けられている。
Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beは、Wi-Fi 6/6E(IEEE 802.11ax)の次世代規格で、2024年からDraft(暫定規格)バージョン3.0以降に基づく機器が順次登場している。当初は2024年末に正式規格化される予定だったが、2025年7月22日(米国東部夏時間)までずれこんだ。
Wi-Fi 7では「最大通信速度の向上」「接続の安定化」「低遅延化」に注力したことが特徴で、フルスペックで利用した場合の最高速度は36Gbpsと非常に高速だ(※1)。
(※1)6GHz帯で16ストリームを利用できる場合は最大46Gbpsとなる(参考記事)
通信速度を向上できたのは、複数の周波数帯をまとめて通信できる「MLO(Multi-Link Operation)」や、1台の端末に複数のRU(リソースユニット:帯域の区切り)を割り当てられる「Multi-RU」といった技術を導入した恩恵だ。WSR6500BE6PもMLOやMulti-RUに対応しており、最大で約6500Mbpsの通信に対応する。
「あれ、Wi-Fi 7の最大通信速度は36Gbpsなのでは?」と思ったかもしれないが、この速度は「6GHz帯(320MHz幅/8ストリーム)+5GHz帯(160MHz幅/8ストリーム)+2.4GHz帯(40MHz幅/4ストリーム)」で計算した場合の値。ここまで来ると現状では“オーバースペック”だ。
本製品は「5GHz帯(160MHz幅/4ストリーム)+2.4GHz帯(40MHz幅/2ストリーム)」という仕様で、5GHz帯では最大5764Mbps、2.4GHz帯では最大688Mbpsの通信に対応している。MLOの「2バンド同時モード」で両者を束ねることで、6452Mbpsで通信できるという寸法だ。ただし、MLOを利用するには端末側も対応が必要となる。
ここで分かったかもしれないが、本製品では6GHz帯に非対応とした上で、5GHz帯のストリーム(≒アンテナ)数を削減している。これが、2万円弱という手頃な価格を実現した秘密でもある。
Wi-Fi 7での最大通信速度は5GHz帯で5764Mbps、2.4GHz帯で688Mbpsとなる。MLOの2バンド同時モードで両者を束ねると最大6452Mbpsで通信できるが、端末側も対応が求められるWSR6500BE6Pの本体は、非光沢/光沢部品を組み合わせた、上品なデザインに仕上がっている。
前面には、簡単接続のためのAOSS(AirStation One-Touch Secure System)ボタン、電源やワイヤレス通信状態などを示すパイロットランプを搭載する。AOSSボタンはルーター同士の簡単移行機能にも利用可能だ。
本体前面(スタンドを外した状態)。AOSSボタンはバッファロー独自の簡単接続機能「AOSS」や、Wi-Fi Allianceが定める簡単接続機能「WPS(Wi-Fi Protected Setup)」に対応する機器との簡単接続に利用する。古いWi-FiルーターがAOSS/WPS対応であれば、これを使った初期設定の簡素化もできるWSR6500BE6Pの背面ポートは、2.5GBASE-T規格のインターネット(WAN)ポートと、1000BASE-T規格のLANポート×3という構成だ。エントリーモデルでは全ポートが1000BASE-T規格であるところ、WANポートは2.5GBASE-Tとすることで1Gbps超のインターネット回線のポテンシャルを生かしやすくなっている。
縦置き、または壁掛けで使う場合は、付属のスタンドを使う。縦置き時には本体底面に差し込んで立てればOKだ。壁掛け時にはスタンドを壁にネジ止めしてから、本体右側にあるくぼみを利用して引っ掛けて設置する。
本製品には、ルーター上で稼働するセキュリティソフト「ネット脅威ブロッカー2 ベーシック」を1年間無料で利用するライセンスが付属する。最近はセキュリティソフトをインストールできないIoT家電などを“踏み台”とするサイバー攻撃も珍しくない。自宅のネットワークのセキュリティを強化するために活用するのも良いだろう。
2年目以降は、有料でライセンスを延長することもできる。
本製品は、Wi-Fi Allianceが提唱する汎用(はんよう)のメッシュネットワーク規格「Wi-Fi EasyMesh」に対応している。
バッファロー製かどうかを問わず、Wi-Fi EasyMeshに対応する無線LANルーター/アクセスポイントを用意すると、有線または無線でメッシュWi-Fiネットワークを構築可能だ。部屋を移動中でも途切れることのない高速なインターネット接続を構築したい場合は、ぜひ活用したい。
バッファローが法人向けWi-Fi 7無線LANアクセスポイントの投入を予告 最大1536台の同時接続をサポート
バッファロー、Wi-Fi 7接続に対応するUSB無線LANアダプターを発売
バッファロー、デュアルバンド接続に対応したWi-Fi 7無線LANルーター
バッファロー、コンパクト設計の5ポートスイッチングLANハブ
バッファロー、10GbE対応の家庭用8ポートスイッチングLANハブCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.