パッと見で分からない細かいこだわりも バッファロー開発陣に聞くWi-Fi 7ルーター「WXR18000BE10P」の秘密【後編】(1/3 ページ)

» 2024年05月01日 15時00分 公開
[井上晃ITmedia]
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 2023年12月、総務省が電波法に基づく「技術基準」と「無線設備規則」の一部を改正したことにより、Draft 3.0以降の「IEEE 802.11be」規格の無線LAN機器を使うことが合法化された。

 この動きに合わせて、Wi-Fi(無線LAN)ルーターを手掛ける他の国内メーカーに先んじて、バッファローはWi-Fi Allianceの「Wi-Fi CERTIFIED 7」認証を取得したIEEE 802.11be対応無線LANルーター「WXR18000BE10P」を発売した。税込みの実売価格は6万5000円前後だ。

 この記事では、バッファローの商品企画/開発担当者にWXR18000BE10Pについて“気になる”ポイントを深掘りして聞いていく。Wi-Fi 7ことIEEE 802.11be対応無線LANルーターが気になっている人の参考になれば幸いだ。

バッファローのルーター 日本メーカーとして初めて「Wi-Fi CERTIFIED 7」を取得したバッファローのIEEE 802.11beルーター「WXR18000BE10P」
応答者 インタビューに応じてくださったバッファローの皆さん。左から下村洋平氏(コンシューマーマーケティング部 次長)、永谷卓也氏(コンシューマーマーケティング部 BBSマーケティング課)、森川大地氏(ネットワーク開発部 第一開発課)、市川剛生氏(ネットワーク開発部 FW第一開発課 課長)、成瀬廣高氏(ネットワーク開発部 第一開発課 課長)

WXR18000BE10Pの主なスペックをチェック!

 WXR18000BE10Pについてあれこれ聞く前に、本機の主なスペックをチェックしていこう。

 本機はIEEE 802.11be(Wi-Fi 7)の他、6GHz帯対応のIEEE 802.11 ax(Wi-Fi 6E)、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)、Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)やIEEE 802.11b/gでの通信に対応するフラグシップモデルだ。型番の一部にある「18000」は、各周波数帯におけるIEEE 802.11be規格の最高通信速度を足し合わせた概算値となる。無線LANルーターではよく見かける型番規則で、本機の具体的な最高通信速度(理論値)は以下の通り。

  • 6GHz帯:1万1529Mbps(320MHz幅/4アンテナ)
  • 5GHz帯:5764Mbps(160MHz幅/4アンテナ)
  • 2.4GHz帯:688Mbps(40MHz幅/2アンテナ)

 理論値ベースだが、6GHz帯では10Gbps超の通信を実現している。その上で、IEEE 802.11be規格で盛り込まれたMLO(※1)の「同時通信モード」を使って各周波数帯を束ねると最大約18Gbpsで通信できる計算だ。バッファローによる実測値でも、同時通信モード時のスループット(実効通信速度)は約1万4423Mbpsと、Wi-Fi 6Eからの大幅に速度が向上している。

(※1)Multi Link Operation:離れた帯域の電波をまとめることで、通信速度を向上する技術(モバイル通信において「CA(キャリアアグリゲーション)」と呼ばれる技術とほぼ同じ)

理論値 WXR18000BE10Pの無線LAN部における最高通信速度(理論値)
実測値 メーカーによる実測通信速度

 有線ネットワークはインターネット(WAN)側が10GBASE-T、ローカル(LAN)側が10GBASE-Tと1000BASE-T×3という構成となっている。普及が進んでいる1Gbps超のインターネット回線を十分に生かせる。なお、10GBASE-Tポートは10BASE-T(10Mbps)接続に対応していないが、最近のインターネット回線やクライアント機器(端末)は少なくとも100BASE-TX(100Mbps)接続に対応しているので、それほど問題にならないだろう。

 これとは別に、USB 3.2 Gen 1 Standard-A端子も備えている。ここにUSBマスストレージ(USBメモリ/HDD/SSD)を接続すれば、簡易的なNASとしても運用可能だ。

Wi-Fi 7の最高速度は「46Gbps」と「36Gbps」のどちら?

 次の話題に行く前に、Wi-Fi 7の最高通信速度について触れておきたい。

 Wi-Fi 7の規格上の最高通信速度は46Gbpsなのだが、バッファローは最高通信速度が36Gbpsだと説明している。中には「どっちが正しいの?」と混乱している人もいるかもしれない。

 結論からいうと、どちらの最高通信速度も“正しい”表記となる。なぜ違いが出るのかというと、MLOを適用する際に用いる周波数帯が異なるからだ。

 多くで見受けられる“最大46Gbps”は、規格上のフルスペックを満たした場合の値だ。具体的には6GHz帯で16ストリームを使える場合にのみ達成できる。16ストリーム使えるということは、アンテナが16本必要となることを意味するので、アクセスポイントはもちろん端末も“デカくなる”ことは避けられない。現状では“夢物語”に近い。

 それに対して、バッファローが提唱する“最大36Gbps”は「6GHz帯(320MHz幅/8ストリーム)+5GHz帯(160MHz幅/8ストリーム)+2.4GHz帯(40MHz幅/4ストリーム)」で計算した際の計算値となる。これはWi-Fi Allianceの表記に従ったものとのことだ。

総務省 総務省を含め、多くの場合Wi-Fi(IEEE 802,11be)の最高通信速度は「46Gbps」とされている。これは、6GHz帯と5GHz帯をフルに使った場合の理論値だ(総務省資料より)
バッファロー それに対して、バッファローは6GHz帯/5GHz帯/2.4GHz帯を1チャンネルずつ使う想定で最高通信速度を算出している

 次のページでは、バッファローの担当者にWXR18000BE10Pの特徴について話を聞いていく。

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