低価格でもマニュアル系機能を楽しめる質実剛健カメラ――PowerShot A95(2/3 ページ)

» 2004年10月06日 08時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

 さらに液晶モニタは1.8インチの回転式で自由なアングルで撮れる。特にこのタイプのモニタは縦位置のローアングル撮影で便利だ。惜しむらくは光学ファインダに視度補正機能がないことくらいだろう。

液晶モニタは1.8型。これはマニュアル露出モードにして撮影情報をフルに表示した状態
液晶モニタを閉じた状態。ハイアングルやローアングルを多用する人はこの状態から横にさっと開くと便利。右に円形の十字キーなど各種インタフェースがある。十字キーの中央にボタンがない点やSETボタンが遠い点がやや不満。ダイレクトプリント用のボタンもある
再生時の描画はあまり速くなく、特にこのように縦位置写真が混じると待たされるのは残念。再生時はヒストグラム表示が可能だ

 使い勝手もキヤノンらしいもの。FUNCボタンとMENUボタンに分かれており、撮影中に変更するような機能はFUNCの中に治められている。ただ、SETボタンがモニタ下とちょっと遠いところにあるのが残念。「IXY DIGITAL 50」のように十字キーの中央にあればいうことなかったのにというところだ。

MENUボタンを押すと細かいカメラのセッティングが可能になる
FUNCボタンを押すと画面左端に縦に項目が並ぶ撮影用のメニューが現れる。これはホワイトバランスをセットしようとしている図

1/1.8インチの500万画素CCDを採用

 さて肝心のレンズやCCDである。レンズは38-114ミリの3倍ズームでF2.8-4.9。本当はもうちょっとワイド側に振ったレンズが欲しかったところだが、対策はある。A95は鏡胴の根本にあるリングを外してコンバージョンレンズアダプタを装着すると、オプションの0.7倍のワイドコンバータや、1.75倍と2.4倍の2種類のテレコンバータ、より近づいた撮影ができるクローズアップレンズも装着可能なのだ。コンバージョンレンズアダプタはバヨネット式で着脱が簡単なのもうれしい。このクラスでこれだけ拡張性があるモデルはまれなのである。

 CCDは1/1.8インチの500万画素。ここも注目しておきたい。2004年夏から出てきたコンパクト系の500万画素機はたいてい1/2.5インチのCCDを使っているが、A95は一回り大きな1/1.8インチを採用しているのだ。ぱっと見た写りではあまり差はないが、微妙なディテールのざらつきや高感度時のノイズ、微妙な階調の滑らかさなどに違いが出てくる。そういう意味でもA95のCCDはなかなかいいのだ。

 画質はもうお馴染みのDIGIC画質。鮮やかで記憶色をうまく生かした、青空は青く、木々はやや青みがかかった緑に、でも全体に暖色系で親しみがある感じという派手系の絵が好きな人には非常に気持ちいい発色で、さらに鮮やかに描写したい人にはくっきりカラーモードが、派手すぎない抑えめの描写をしたい人にはすっきりカラーと使い分けられるのもいい。オートホワイトバランスの精度も高く、AFも速くはないけれども、けっこうしっかり合ってくれるし合わないときは合わないといってくれるので、「ちゃんと撮れたと思ったのに……」という失敗は少ない。

マニュアル系普及型デジカメならA95が筆頭だ

 よって、A95は極めて……オーソドックスすぎるほどオーソドックスなマニュアル系普及型デジカメである。この価格帯を考えれば、十分すぎるほどしっかりした機能を持っているし、回転式のバリアングル液晶モニタまで備えている。これは縦位置横位置どちらでもハイアングル・ローアングル撮影ができて気持ちいい。

ディスプレイはこのように横に開いて自由な角度に回転させられる
LCDを開くとこのように自分撮りも可能だ

 欲をいえば、映像エンジンはDIGICのままだし(この数ヶ月後に登場するIXY DIGITAL 50ではDIGIC IIが搭載されているのに)、スペシャルシーンモード以外に機能的な上積みがあまり感じられないのが残念。

 特に起動時に電源ボタンを長押ししなければならないため起動のタイミングがつかみにくい点や、再生の遅さ(特に縦位置写真が混じると遅くなる)は改善して欲しかったところだ。でも全体の完成度としては非常に高いのである。

 なお、冒頭でマニュアル系機能を求める人向けと書いたが、フルオートでの性能を考えれば、エントリー向けとして購入してもまったく問題ないし、今は初心者だけどいずれはいろんな凝った撮影を楽しみたいという人にもいい。フルオートやシーンモードだけでも十分価値はあるので、機動力や見た目のスマートさはないけれども、オーソドックスで質実剛健でなおかつお得感のあるデジカメが欲しい人なら手に取ってみるべし。

PowerShot A95作例

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  10. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー