さらに液晶モニタは1.8インチの回転式で自由なアングルで撮れる。特にこのタイプのモニタは縦位置のローアングル撮影で便利だ。惜しむらくは光学ファインダに視度補正機能がないことくらいだろう。
使い勝手もキヤノンらしいもの。FUNCボタンとMENUボタンに分かれており、撮影中に変更するような機能はFUNCの中に治められている。ただ、SETボタンがモニタ下とちょっと遠いところにあるのが残念。「IXY DIGITAL 50」のように十字キーの中央にあればいうことなかったのにというところだ。
さて肝心のレンズやCCDである。レンズは38-114ミリの3倍ズームでF2.8-4.9。本当はもうちょっとワイド側に振ったレンズが欲しかったところだが、対策はある。A95は鏡胴の根本にあるリングを外してコンバージョンレンズアダプタを装着すると、オプションの0.7倍のワイドコンバータや、1.75倍と2.4倍の2種類のテレコンバータ、より近づいた撮影ができるクローズアップレンズも装着可能なのだ。コンバージョンレンズアダプタはバヨネット式で着脱が簡単なのもうれしい。このクラスでこれだけ拡張性があるモデルはまれなのである。
CCDは1/1.8インチの500万画素。ここも注目しておきたい。2004年夏から出てきたコンパクト系の500万画素機はたいてい1/2.5インチのCCDを使っているが、A95は一回り大きな1/1.8インチを採用しているのだ。ぱっと見た写りではあまり差はないが、微妙なディテールのざらつきや高感度時のノイズ、微妙な階調の滑らかさなどに違いが出てくる。そういう意味でもA95のCCDはなかなかいいのだ。
画質はもうお馴染みのDIGIC画質。鮮やかで記憶色をうまく生かした、青空は青く、木々はやや青みがかかった緑に、でも全体に暖色系で親しみがある感じという派手系の絵が好きな人には非常に気持ちいい発色で、さらに鮮やかに描写したい人にはくっきりカラーモードが、派手すぎない抑えめの描写をしたい人にはすっきりカラーと使い分けられるのもいい。オートホワイトバランスの精度も高く、AFも速くはないけれども、けっこうしっかり合ってくれるし合わないときは合わないといってくれるので、「ちゃんと撮れたと思ったのに……」という失敗は少ない。
よって、A95は極めて……オーソドックスすぎるほどオーソドックスなマニュアル系普及型デジカメである。この価格帯を考えれば、十分すぎるほどしっかりした機能を持っているし、回転式のバリアングル液晶モニタまで備えている。これは縦位置横位置どちらでもハイアングル・ローアングル撮影ができて気持ちいい。
欲をいえば、映像エンジンはDIGICのままだし(この数ヶ月後に登場するIXY DIGITAL 50ではDIGIC IIが搭載されているのに)、スペシャルシーンモード以外に機能的な上積みがあまり感じられないのが残念。
特に起動時に電源ボタンを長押ししなければならないため起動のタイミングがつかみにくい点や、再生の遅さ(特に縦位置写真が混じると遅くなる)は改善して欲しかったところだ。でも全体の完成度としては非常に高いのである。
なお、冒頭でマニュアル系機能を求める人向けと書いたが、フルオートでの性能を考えれば、エントリー向けとして購入してもまったく問題ないし、今は初心者だけどいずれはいろんな凝った撮影を楽しみたいという人にもいい。フルオートやシーンモードだけでも十分価値はあるので、機動力や見た目のスマートさはないけれども、オーソドックスで質実剛健でなおかつお得感のあるデジカメが欲しい人なら手に取ってみるべし。
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