同じGPUを搭載しているだけあって、ベンチマークの傾向はほぼ同じ。ただ、すべてのテストでMSIのNX6800 TD-128がほんのわずかずつ上回っている。動作クロックは両者とも同じ定格動作なので、ファームウェアのチューニングでちょっとした違いが出ているものと思われる。
とはいえ、GV-N68128DHもノーマルGeForce 6800搭載グラフィックスカードとして恥ずかしくないパフォーマンスを発揮している。以前「GIGA-BYTEのファンレスグラフィックスカードはパフォーマンスが低く抑えられている」という話がショップ界隈で出たこともあったが、GV-N68128DHに関していえばその噂は当てはまらないだろう。
さて、今回気になるのは、パフォーマンスよりもファンレス&低速回転ファンによる静音性能とハイエンドGPUの冷却効果が両立しているか否か、だと思う。
本格的な実験を行うならば、恒温室を用意して、その中における熱変化を、精度の高い温度計で測定するべきであるが、「迅速をよしとする」ITmediaでは、以前紹介したUC-9FATR2 に実装されている2系統の熱伝対を利用した。キャリブレーションも取れない簡易的な接触温度計なので、精密な測定はできないが、大まかな温度の上昇は把握できるだろう。
せっかく2系統あるので、一つはヒートシンク内部に差し込んでGPUに近い部分の温度を、もう一つはヒートシンクのフィンに取り付けて、ヒートシンクの温度を測定した。ヒートシンクの温度がGPU付近の温度に近ければ、効率よく放熱が行われていると考えていい。
測定は、今回行ったベンチマークテストの中で、もっともGPUが高熱になる(すなわち負荷が重い)3DMark03の高解像度重負荷テストを3回ループで動作させて測定した。はたして、NX6800 TD-128はミニマムの回転数で一番高くなっても摂氏46度台だったのに対し、GV-N68128DHは摂氏70度を超える温度を示していたのだ。
測定したのは空調が程よく効いているオフィスで、人の出入りが少ない午前中(編集部というセクションは午前中に人の出入りがほとんどない)に、室温摂氏27度にほぼ一定された条件で行っている。ごく普通にありえる環境で行っているテストでチップの温度が摂氏70度を超えるというのは「やや高め」といわざるを得ない。
GV-N68128DHのヒートシンク部分の温度が摂氏68度と、発生した熱を確実に放熱していると思われるが、それでも、ヒートシンクから発散された熱がそのままでは滞留することになるので、PCケースで十分な冷却対策を施しておく必要があるだろう(これは、GPUから同量の熱が放出されるNX6800 TD-128にしても同じことであるが)。
ファンレスなど十分な静音対策が施されたPCパーツはそれ単体では静かであるが、そのメリットを発揮するためにはPCシステム全体としてもバランスのとれた静音対策を施す必要がある。
反面、今回取り上げたハイエンドGPU搭載のグラフィックスカードを組み込んでPCを構成する場合、ハイパフォーマンスGPUから発生した大量の熱を、ケース内に滞留させることなく、効率よく外部に排出しつつ騒音も発生させない工夫が、バリュークラスのファンレスグラフィックスカードを使うとき以上に必要になってくる。GV-N68128DHを選択するにせよ、NX6800 TD-128を選択するにせよ、このことを静音重視ユーザーは忘れないようにしたいものだ。
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