無線LANの5月病? その症状と対策(2/2 ページ)

» 2005年02月11日 05時39分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 周知の通り、無線通信機器は使用する周波数帯や出力を厳しくチェックされている。発売前に技術基準適合証明試験を行い、TELEC(財団法人テレコムエンジニアリングセンター)の認証を受けるのはもちろん、発売後も量産ラインにある製品個々のデータ収集が義務づけられている。使用する周波数帯は同じとはいえ、今回はユーザーレベルのアップデート作業で通信機器のチャンネルシフトを可能にするわけで、通常なら考えられない。あくまで“経過措置”だ。

 「逆に言えば、これまで製品個々のデータまで集めてきたからこそ、今回のような措置も認められる。しかし、拡張する5250M-5350MHz帯に関してはデータが存在しないため、ファームウェアなどによる対応は不可能だ」。

 現在のところ、既存の製品に対するファームウェアアップデートやドライバ提供を表明しているのは、バッファローとコレガの2社のみ。しかし、各社が使用しているRFチップは大抵4900MHzから5900MHzまでサポート可能であり、技術的な問題は少ない。今後、追随するメーカーは増えてくると思われる。なお、法改正後も現行仕様の製品が一気に市場からなくなるわけではなく、「企業などの追加・増設用として現行製品も併売する予定」という。

既存製品の8チャンネル化は可能か?

 コンシューマー市場では、幸い(?)なことに、IEEE 802.11aがあまり浸透してない。使用している人たちも、その製品が従来の仕様なのか、新しい仕様なのか、という点をおさえて対処すれば問題は起きにくいだろう。トラブルが起きても、最近の無線LAN機器は2.4GHzとのデュアルバンド対応製品が主流のため、IEEE 802.11b/gという逃げ道がある。

 むしろ問題なのは、多数のクライアントを抱える企業だ。石丸氏によると、チャンネル不足解消のため、デュアルバンドをフル活用しているケースが多く、一方で「認知度は低い」という。「昨年12月にファームウェアアップデートに関するニュースリリースを出したが、企業のネットワーク担当者やSEにも浸透していない状況だ」。

 それとは逆に、状況を理解した企業からは、既存製品(とくにPCカードタイプ)の8チャンネル化を望む声が多く寄せられた。このため、同社ではセンドバックによる有料アップグレードを検討しているという。この場合、機器に“改造”を加えたうえ、新たに技術基準適合検査して送り返すことになる。

 しかし、有償アップグレードを実施したとしても、どこまでニーズがあるかは不明瞭だ。「検査や送料などコストはかかるが、以前と違って今は新製品が安くなっている。価格差を考えると“買った方が安い”かもしれない。また、センドバックの期間中、企業内の通信インフラが止まってしまってもいいのか? という疑問もある」(石丸氏)。


 もともと、エンドユーザーやメーカーには関係のない理由で、現在の周波数帯に割り当てられたIEEE 802.11a。周波数拡大や世界標準のメリットは理解していても、対応を求められる側の心境は複雑だろう。5GHz無線LANに関わる法改正まで、あと2カ月あまり。いくつかの課題を抱えつつ、“5GHz帯の開放”は進む。

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