生成AIの急速な発展に伴い、現在はGPUをはじめとするコンピューティングリソースばかりに注目が集まりがちだ。しかしその裏では、AIシステムが生成・消費する膨大なデータをいかにコスト効率よく保存・管理するかという「物理的なストレージの課題」に直面しているデータセンターが数多く存在する。
ウエスタンデジタル(WD)は、台湾で開催中のCOMPUTEX TAIPEI 2026で、メディア向けブリーフィングを開催した。同社はAIを単なる計算システムではなく「データシステム」であると定義し、データセンターにおけるHDDの圧倒的な優位性と、超高密度実装を支える最新のプラットフォーム技術について解説した。
ウエスタンデジタル(WD)のステファン・マンドル氏(ワールドワイドセールス&マーケティング担当VP)(写真=左)と、同社のスコット・ハミルトン氏(プラットフォーム製品管理担当シニアディレクター)(写真=右)WDのワールドワイドセールス&マーケティング担当VPを務めるステファン・マンドル氏は、「データはAIの副産物ではなく、AIそのものを支える重要な基盤である」と力説した。
ステファン氏によると、AIインフラへの投資は今後5年間で年平均30〜31%のペースで成長すると予測されている。その旺盛な需要のなかで、現在データセンターに保存されているデータの約80%をHDDが占めており、この比率は2029年まで維持される見通しだという。
なぜ、全てを高速なフラッシュストレージ(SSD)に置き換えないのか。その理由は「総所有コスト(TCO)」の差にある。同氏によれば、フラッシュストレージとHDDの価格差は、1〜2年前こそ6〜10倍程度だったものの、現在では「20〜22倍」にまで拡大している。膨大なデータを長期間にわたり永続的に保持する基盤として、HDDは依然として圧倒的なコストメリットを誇っている。
続いて、プラットフォーム製品管理担当シニアディレクターのスコット・ハミルトン氏が、データセンター向けハードウェアの最前線について語った。現在のAIサーバ内部はGPUやCPU、メモリによって物理的なスペースが占有されており、ストレージを外に切り離す「ディスアグリゲーテッド(分離型)ストレージ」への移行が加速している。
会場に展示された「Ultrastar Data 3000シリーズ JBOD」は、わずか4Uのスペースに最大102台のHDDを収容する超高密度設計を誇る。しかしスコット氏は、物理駆動するHDDをこれほど高密度に集積した場合、「熱」と「振動」がパフォーマンスや信頼性に致命的な悪影響を及ぼすと指摘した。
この課題に対し、同社は独自のソリューションを提示した。単に前面から背面へ風を流すのではなく、サーバ内に3つの独立した冷却ゾーンを配置する「ArcticFlow」技術と、サーバ内部に衝撃吸収材の役割を果たすカットアウトを施した特許取得済みの防振技術「IsoVibe」の2つだ。
本製品は「Open Compute Project(OCP) OV3」仕様に準拠したモデルも用意しており、24GbpsのSAS 4ホスト接続を備えるなど、将来的な帯域幅の拡張にも対応可能なスペックを持つ。さらに、ArcticFlowとIsoVibeを組み合わせることで、故障などによるドライブの返品率(返却率)を最大62%も低減できるという。
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