RAIDにも注目したいAVノートPC──東芝「dynabook Qosmio G20」(2/2 ページ)

» 2005年03月24日 13時46分 公開
[八木慎伍,ITmedia]
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インスタント機能としてトップクラスの使い勝手「Qosmio Player」

 「Qosmio Player」は、最近のAV重視タイプのノートPCに多く搭載されているインスタント機能のQosmio版。テレビの視聴やDVD-Video、音楽CDの再生をWindows XPを起動することなく、電源投入後に直接行うことができるのだが、「インスタント」というには惜しいぐらいQosmio Playerのデキは良い。

 まず、レスポンスが秀逸。電源オンからテレビの映像が表示されるまで約10秒と、競合製品のインスタント機能より高速なだけでなく、リモコンによるチャネル切替のレスポンスも普通のテレビと変わらない感覚で使える。さらにHDDへ録画できるとなると「あとは予約録画できれば充分」と思えるほど。

 Qosmio Playerが使える録画領域も、従来機種では5Gバイトしか用意されなかったが、G20では20Gバイトに増やされている。録画した映像をWindows上のアプリケーションでDVDに保存するには「転送ユーティリティ」を使ってコピーする必要があるのは従来通り。

 これは、Qosmio PlayerがNTFSを解釈できないために残っている制限。Qosmio Playerで予約録画ができないことを考えると、録画はWindows上で行うのが「デフォルト」のようだ。

 Qosmio Playerでしか利用できない注目の画質だが、ノートPCで見ることができるテレビの画質として、高いレベルにあるのは間違いない。とはいえ「いじりすぎでは?」と思えるところもある。

 それは、例えばノイズリダクションをかけすぎて、色の階調の自然さが失われたように見えたり、あるいは3次元Y/C分離回路が入っているにもかかわらず、動きのある映像のノイズ感を若干感じる面であったりする。

 好みの問題かもしれないが、筆者としてのお薦めの設定は、映像設定に暗めの「映画」、シャープネスは「弱」、ノイズリダクション「off」と、すべての設定項目において控えめのもの。これをすべて強い方向に設定すると、ノイズ感が強調されるだけでなく、白い背景の文字などが読みにくくなるほど輝度成分が高いところが強調されすぎるように思われた。

 もしかしたら、液晶パネルが高輝度高性能である点も災いしているのかもしれない。総合的なチューニングの余地をまだあるのでは?と感じてしまうが、これは数々の機能を乗せている「難しさ」も影響しているのかもしれない。

 一方、Windows上のアプリケーションは「Qosmioのオリジナリティ」という意味で特筆すべき点はない。録画機能やDVD保存機能などは、InterVideoのアプリに頼っているため必要最低限の機能のみ。とくにリモコンの操作性はほめられない。

 Windows上のメニューソフトとして「QosmioUI」が用意されているが、あくまでもアプリケーションを起動する役割でしかない。さらに各アプリケーションのリモコンの使い勝手もよろしくない。例えば、WinDVRではチャネル切替や全画面と小画面の切替など、普段多用する操作の反応が鈍く少々イライラしてしまう。

 インスタント機能のQosmioPlayerがキビキビ動くだけに、よけいがっかり、もしくは反応の遅さが際立ってしまうきらいがある。リモコンはQosmio Player専用と割り切るべきなのだろうか(東芝のコメントとしても「コンセプトとしてはQosmio Playerがデフォルト」としている)。

HDDを標準で2台装備、RAID 0 / 1に対応

 AV機能がとかく注目されるQosmioだが、PCとしての機能も注目したい。とくにノートPCにも関わらず、HDDを標準で2台搭載してRAID設定を実現しているのは、ほかにはないユニークなスペックだ。

背面からアクセスできるメモリスロットとHDDベイ

 東芝としてはdynabook SS LXシリーズでマルチベイにオプションHDDを装着した場合でのみ、RAID 1(ミラーリング)対応をすでに実現していたが、本機はRAID 0(ストライピング)にも対応している。

 このRAID機能は東芝独自のソフトウエアRAID。Windows上のデバイスマネージャではSCSIドライブ(実際はSerial ATA接続)として認識される点からみても、ソフトエミュレーションであることが分かる。ソフトウエアRAIDということで、過度な期待はできないが、ストライピングによりどの程度性能が向上したか、Sandora2005のファイルシステムベンチマークと、FDBENCHの両方で測定した。

 今回試用した評価機の構成が、「なぜか」市販品では存在しないPentium M 770を搭載したものだったので、具体的な数値は掲載しないが、Sandoraでは約2倍、FDBENCHでは2割程度のアクセススピードが向上している。FDBENCHではreadで若干性能が落ちているが、write性能は高い。

 このようなクセがでてくるのはソフトウエアRAIDのため仕方ないかもしれないが、しかし、総じて性能は上がると言って間違いないだろう。手元の計測なので誤差はあるが、プリインストールされたAdobe Readerの起動速度も5〜6秒から4秒程度になった。もっと大規模なアプリケーションや大きなファイルを開く場合などは体感できる差になるだろう。

 デスクトップリプレイス機としてノートPCを考える場合、やはり最大の差はHDDの容量と転送速度だと筆者は思うのだが、本機のアプローチはこの差を埋める答えの一つなのは間違いない。いずれインテルがサポートするかもしれないが、いち早くRAIDソリューションをノートPCに展開したことは高く評価したい。

 そのほかにも、3DアクセラレータにGeForce Go 6600を搭載し、3Dゲーム「リネージュU」の動作認定を受ける(メモリ1Gバイト搭載時)など、ホームユースで重要なゲームへの取り組みも本格的だ。

 PCのパフォーマンスとしては、ほぼスキのない本機だが、唯一残念なのがLANのスペック。無線LANがトリプル対応ではないのは仕方ないのかもしれないが、有線LANが1000BASE-Tではなく100BASE-TXなのは、RAIDまでサポートした本格派なだけにもったいないと感じるのは筆者だけではないだろう。

 Qosmio G20は、AV重視タイプのノートPCとしてハイスペックな性能を持ち、デザインも配慮されたフラッグシップノートPCの名にふさわしいマシンに仕上がっている。

 値段はちょっと高いが、PCマニアからちょっと余裕のあるお父さんまで、使う人を満足させることができる。筆者としては、AV機能は即日完売してしまった「RD-H1」に任せて、ネットワークで操れるソフトをバンドルしたQosmioを見てみたい気もするのだが……。

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