きょうは「Athlon 64 X2」「Pentium ExtremeEdition」でデュアルコア頂上決戦を堪能したCPU(1/3 ページ)

» 2005年05月18日 11時42分 公開
[佐藤哲,ITmedia]

 今年の4月に、インテル、AMDが相次いでデュアルコアCPUをリリースした。インテルは「Pentium Extreme Edition 840」を、AMDは「Athlon 64 X2」という、いずれも従来のPentium 4やAthlon 64のアーキテクチャを生かしつつデュアルコアを実現した製品となっている。

 両者で大きく異なるのは、Pentium Extreme Editionの動作クロックが3.20GHzと従来のPentium 4 Extreme Edition/3.76GHzから大きく落としているのに対して、Athlon 64 X2 4800+の動作クロックは、前モデルとも言えるAthlon 64 4000+と同じ2.4GHzとなっている。このクロックの差が実際の性能にどういう影響を及ぼしているのかがこのレビューの焦点になる。

ともに従来のアーキテクチャの延長線上にあるデュアルコアCPU

 現時点で両社がデュアルコアCPUとして明らかにしているのは、インテルのPentium Extreme Edition(以下Pentium XE) 840に、AMDのAthlon 64 X2 4800+、4600+、4400+、4200+の各製品。インテルもAMDも、前世代とも言えるPentium 4やAthlon 64のアーキテクチャを生かしたままデュアルコアとしている。つまり、演算器の内部構造などは、Pentium 4やAthlon 64世代のマイクロアーキテクチャを継承しているのだ。

 ただし、大きく違う点は、Pentium XEは前世代のPentium 4(Prescottコア)を2つ接続した形状になっているのに対して、AMDのAthlon 64 X2は内部の構造がもともとデュアルコアになるように設計されており、それを生かしてデュアルコアにしているという点だ。

2つのPrescottコアが1つのパッケージに封入されているPentium XE 840

 以下の写真はインテルが自社のWebサイトで公開しているPentium XEのダイ写真だが、見てわかるように、見事なまで2つのコアがほぼ対称的なデザインとなっている。デュアルコアのCPUでは、本来それぞれのコアにFSBは必要なく、1つでいいはずなのだが、Pentium XEではそれぞれのコアにFSBがある構造となっている。

Pentium XEのダイ

 これはどういうことを意味しているかと言えば、インテルが登場させたデュアルコアCPUは、実のところ、2つのコアをくっつけたもの、というよりは、本来別々のコアとして動作させられるべきCPUを切り離していないだけ、ということができるだろう。

 一般的にCPUのような半導体は、ウエハーとよばれる円盤状の板からダイヤモンドカッターなどを利用して切断し、長方形や正方形に切り出す。だが、今回のPentium XEではそれらの2つのコアを切り離すことなく、パッケージに封入されている。そういうイメージだと考えれば分かりやすい。

 Pentium XE 840では、それぞれのコアで1Mバイトのキャッシュを持っているため、1MバイトのL2キャッシュを持つPrescottコア(Pentium 4 5xxなどに採用されている)が2つ切り離されることなくパッケージに封入されていることになる。

 インテルがこうした“分離しないシングルコア2つ”のデュアルコアを導入した背景には、インテルが現在のPentium XEやPentium 4などで採用しているNetBurstマイクロアーキテクチャの「製品寿命」に関係しているのではないだろうか。

 そもそもインテルは、このタイミングで、Tejas(テハス)とよばれる開発コード名の製品を投入する計画になっていた。Tejasは、Prescottの拡張版ともいえるもので、新しい命令セットや演算器などが改善され、4GHzを超える高い周波数で動く予定だった。

 ところが、2004年4月になって、インテルはこのTejasを諦め、開発コード名“Smithfield”と呼ばれたPentium XEや、間もなくリリースが予定しているPentium Dなどの投入を決めた。言ってみれば、Smithfieldは“ピンチヒッター”的な製品であるのだ。このような事情から、開発にさほど時間をかけることができなかったために、内部がこうした構造になっていると考えるのが妥当だろう。

 もう1つ指摘しておきたいのが、Pentium XE 840の動作周波数だ。インテルのシングルコアの最高クロック周波数はPentium 4 Extreme Edition(以下Pentium 4 XE)が3.76GHz、Pentium 4 570の3.80GHzとなっている。

 これに対して、Pentium XE 840の動作周波数は3.20GHzとなっており、シングルコアに比べて低く設定されている。これは、ダイを2つにしたことで、発熱が増え、熱設計消費電力を現在の空冷でまかなう限界と言われている130ワットに納めるために、このクロックに設定せざるを得なかったということだろう。

 なお、まだ発表されていないが、間もなく登場するだろうと予想されるPentium DとPentium XEの違いだが、ハイパースレッディングテクノロジーをサポートするPentium XE、サポートしないPentium D、という点になる。従って、Windowsから認識される論理プロセッサもPentium XEは4つ、Pentium Dは2つ、ということになる。

最初からデュアルコアを意識して開発されたAthlon 64

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年10月11日 更新
  1. ロジクール初の分割式“左手デバイス"が登場 プロ絵師による「MX クリエイティブ コンソール」レビュー (2024年10月10日)
  2. 長年のPixelユーザーがiPhoneに乗り換える前に最新の「Pixel 9/9 Pro XL」を触った理由 (2024年10月10日)
  3. 2台のPCを行き来できる便利マウスが8000円切り! 「Rapoo MT760」はどこまで使えるか試してみた (2024年10月09日)
  4. 「Windows 11 2024 Update(バージョン24H2)」の既知の不具合まとめ【2024年10月4日現在】 (2024年10月04日)
  5. 急な工事日変更で右往左往? むしろラッキー? ふと思い立って自宅の光インターネットを1Gbps→10Gbpsに切り替えた話【中編】 (2024年10月08日)
  6. 上位モデルのQuest 3ではなく、5万円以下で買える「Quest 3S」という選択肢はアリか? 実機を試した (2024年10月08日)
  7. アイ・オーが2.5GbE搭載個人向けNASをモデルチェンジ 実効性能を向上し遠隔管理にも対応 2万1800円から (2024年10月09日)
  8. Galaxy Z Fold3から「Pixel 9 Pro Fold」に乗り換えました サイズ感が秀逸な“Googleの二代目折りたたみスマホ” (2024年10月09日)
  9. 最新版「Windows 11 バージョン 24H2」をインストールしてみた (2024年10月02日)
  10. 「VRChatユーザーのために開発」──8K対応で約185g未満のVRヘッドセット「MeganeX superlight 8K」発表 (2024年10月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー