少し前に掲載した「中国は「海賊版」から逃れられるか」という記事において中国の話をしたが、人口大国にしてソフトウェア大国といえば、中国よりもむしろインドを挙げなければならない。
インドと中国を比較すると、1人当たりのGNPは2003年度でインドの500ドルに対して中国は2倍の1000ドル。両国にある所得格差や貨幣価値の違いを抜きにして、単純計算でインドにおける平均給料は中国人の平均の半分という。
また、所得格差はインドでも大きく、インドを旅行すれば、大富豪の代名詞「マハラジャ」屋敷の近くで、乞食がたたずんでいる、なんてこともごく普通の風景のように出くわすことになる(そのあたりはインドを旅行した人たちが熱く語る旅行記によく描かれている)。
そのようなインドがソフトウェア大国になるくらいだから、当然、Windowsや開発ツールも多く使われているのだが、現地の物価と比較するとWindowsや開発ツールの価格はひたすらに高く、個人はおろか中小企業でもおいそれと購入できる価格ではない。
例えばインド版カレー定食こと「タリー」が60〜100円で食べられて、ごく平均的な勤労者の給料も月給3000円以下がごく普通、今日のインド社会における花形職業「ITエンジニア」でも3〜4万円だ。そういった貨幣価値の世界であっても、Windows XP HomeEditionの1ライセンスが約1万5000円(6350ルピー)である。
これはカレー定食1500杯以上の価値に相当し、花形のITエンジニアですら給料の半月分になってしまうのだ。しかも、それで用意できるのはOSだけ。Microsoft Office XPは1ライセンスにつき、5万2500円(21000ルピー)、さらにプログラミング開発ツールも自前でそろえようとしたら、日本の感覚では億単位のお金が動くような感じになりかねない。
こんな状況で誰が正規版のソフトウェアを購入できるものか、と思うのだが意外や意外。インドの違法コピー率はいうと70%強と(これはこれでひどい数字であるものの)世界のワースト10に入らないどころか、タイなどほかのアジア各国よりもはるかにいい。これはなぜだろうか?
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