中国は「海賊版」から逃れられるか山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2005年04月18日 12時21分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

違法コピーには「わけ」がある

 昔の話で恐縮だが、ITmediaに「Business Software Allianceによる2003年における世界各国の違法コピーソフト調査状況によると、中国の違法コピー率は92%と、ベトナムと並んで非常に高い状態にある」という記事が掲載されている。

 ちなみに、日本の違法コピー率は29%という。単純に言えば、任意のPC数台から100本のソフトを抜き出して正規のライセンスがあるかチェックしてみると、中国では92本が、日本では29本がそれぞれ違法コピーであるということだ。

 しかし、この一連の連載でも繰り返し述べてきたように、両国の差は数値統計だけでは表現しきれないものがある。今回も、そのことが身をもって理解できるようなお話をしてみよう。

 冒頭で具体的な数値としてソフトの違法コピーを紹介したが、中国で出回っている違法コピー製品はなにもコンピュータソフトだけでない。バッテリーだって、デジカメポーチだって、漫画だって、違法コピー製品が店頭で並んでいる。

 ところが、いくらホンモノより安くても、できることなら違法コピーされた「本」は買いたくない、というのが中国人の本音だそうだ。これはコピーされた本だと落丁乱丁が多いのに値段がホンモノの半額程度だから、ということらしい。

 この理屈でいうと、CDやDVDなどを違法コピーされたくなかったら、コピーすると正規版と異なるモノができるようにするか、正規版の値段を強烈に下げるかのどちらかだろう。

 前者は現状において一見不可能そうな技術に見えるが、例えば、Windows Updateなどの更新サービスを正規ユーザーのみ利用できるようにするのが、ひとつの対策といえるだろう。とはいえ、これも焼け石に水であることを歴史が証明している。

 いまを遡ることWindows 95の全盛時代。中国ではサービスパックやInternet Explorer 4を適用してこれをバックアップした「Windows 96」や「Windows 97」が店頭で販売されていた。いくらマイクロソフトがWindows XPで正規版ユーザ向けにさまざまな新規機能追加をアピールしたところで、“Windows XP2”だの“Windows 2005”が出る可能性は否定できない。

 なんでこんなに違法コピーがはびこってしまったのか? 海賊版CD屋がいたるとこで店を開いて、だれもが簡単に買える、という状況もあるし、買い手のほうでコピー製品に対する抵抗感をあまり感じていない、という理由もある。

Windows 97「正式版」(とパッケージにはあるが)

ごく普通に見かける海賊版CD屋

 しかし、いくら違法コピーで価格が安いとはいえ、そのソフトを使うために必要なPCは、給料数カ月分、もしくはチャーハン800杯分の価値に匹敵するためにそう簡単には買えないし、それだけでは買う気も起きないだろう。

 何が中国人を高価なPCを購入に向かわせるのか。海賊版CD屋の店頭に並ぶラインアップはその理由を雄弁に物語ってくれる。そのラインアップとは、日欧米中韓のゲームソフトに有名ビジネスソフトの数々、そしてmp3データ集にDVD-Video。そこにLinuxソフトの姿はごく僅かで、しかも売っているのはLinuxOSだけでアプリケーションソフトはなし。

 もちろん、正規版ソフトを販売するショップもあるにはある。中国も海賊版ソフトが氾濫しているのを指をくわえてみているだけではないのだ。中国PCメディアの報道によると、中国最大のPCソフトチェーン店「連邦」では、海賊版を持ってきたユーザー同社が販売する格安ソフト「315盗版換正版」と交換するキャンペーンを3月15日より行った。

 しかし、このような販売価格200円程度の格安ソフトのほとんどはツール集。「315盗版換正版」も、わざわざ外出して交換したいと思うほどの魅力に乏しかったためか、一般のPCユーザーが積極的に交換に応じるほどの成果はなく、中国の大都市で行われた6日間のキャンペーン期間中、回収された海賊版CDは1000枚程度であったとか。

 このように、中国ではWindowsで動作する人気のゲームやビジネスソフトを利用するために、車を買うのと同じ感覚でPCを購入するのである(それ以外にもWEBやチャットなど導入無料のキラーコンテンツはあるが、そのうち紹介する予定だ)。

中国から違法コピーが消えたらどうなる?

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