HP、人員削減の次はPC製品ラインを縮小?

» 2005年07月21日 13時24分 公開
[IDG Japan]
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 米Hewlett-Packard(HP)はコストと余剰人員の削減計画を発表したが、同社のPC部門は最終的には、膨れ上ったPCラインアップの問題に直面せざるを得なくなるだろう。PCラインアップの膨張は、買い手の間に混乱を生むだけでなく、必要以上の製品開発コストにつながりかねない――。アナリストは7月20日、こう指摘した。

 今年始めにHPの当時の最高経営責任者(CEO)カーリー・フィオリーナ氏がPC部門をプリンタ部門と統合して以来、HPのPC部門は活発な論議の的となっている。Merrill Lynchのスティーブン・ミラノビッチ氏を筆頭とする数名の金融アナリストは、HPに対し、全社的な収益性の改善に向けてPC部門かプリンタ部門を分社化すべきだと提言している。

 HPの現CEOマーク・ハード氏は、同社の分割の可能性をめぐる憶測は軽くあしらっている。だが同氏は19日、全社で計1万4500人を削減する組織再編計画を発表した後の取材で、HPが非能率性の観点から各事業部門を綿密に調査しているのは明らかであり、同社のPCブランディング戦略もそうした調査の対象になるだろうと語っている。

 「2つのブランドを持っていることの意味をよく検討し、理解しなければならない」と同氏。同氏は、HP PavilionとCompaq Presarioという2つのコンシューマーPCブランドを個別に維持するという2002年の決定について、HPが今現在どのように考えているかについてはコメントを断ったが、新たにPC部門を統括するトッド・ブラッドリー氏が真っ先に状況の把握に努めることになると語っている。

 HPはCompaqを買収後、自社の企業向けPCラインVectraを打ち切り、IT部門向けに統一ブランドを提供することを選択した。だが同社はコンシューマーPCに関しては、2種類のブランドを残した。この決定は、Gatewayやソニーといったライバル各社を食い物にHPが小売り店舗の商品棚を独占するのに役立っている、とEndpoint Technologies Associatesのロジャー・ケイ社長は指摘している。また、小売り店舗におけるこうした存在感の大きさは、プリンタや携帯情報端末(PDA)、デジタルカメラといった、HPブランドの各種PC周辺機器の販売の押し上げにも貢献している。

 だが、この2つのブランドのPCモデルは幾つかの面で重複しており、機能や価格の点で似通ったものになりかねない、とCurrent Analysisの上級アナリスト、サム・バブナニ氏は指摘している。

 同氏によれば、HPはHP Pavilionブランドの広告に力を入れているが、Best BuyやCircuit City Storesといった米国の小売り店では、知名度の劣るCompaq PCがPavilion PCの横に展示されている。そうしたCompaq PCに関しては、箱にも、PCの横に置かれた仕様カードにも、HPの社名が記載されていないため、消費者はどちらのブランドも同じ会社が製造していることに気付かないかもしれない、と同氏。

 HPのWebサイトには、PavilionラインとPresarioラインを含む9種類のデスクトップPC製品のほか、両ブランドの14種類のノートPCが掲載されている。HPの広報担当によれば、これらのモデルはユーザーに直接販売されるもので、Best Buyなどの小売り店では、ほとんど同じだが、モデル番号が若干異なる製品が提供されている。

 「本当に14種類ものコンシューマー向けノートPCが必要だろうか?」とバブナニ氏。

 Dellを引き合いに出すと、同社のWebサイトでは8種類のDimensionデスクトップと7種類のInspironノートPCが扱われている。これらのシステムはすべて顧客が構成できるようになっているが、幾つか、構成が固定されたモデルも提供されている。

 「つまるところ、企業がどれだけの製品をサポートしたいかということだ。どの製品ラインについても継続的な新製品の提供が必要となり、どのブランドにもそれぞれ、あらゆる種類の諸経費がかかる」とケイ氏。

 PCラインに関しては、HPにはそれほど多くの選択肢はない。コンシューマー向けのPresarioラインは、HPがCompaqを買収し、同ラインの広告量を減らして以来、ブランド力を大幅に失っており、HPは同ラインならば打ち切れるはずだ、とバブナニ氏は指摘している。

 「Compaqが買収されたのは2002年。もう3年も前のことだ。3年と言えば、IT業界ではかなりの時間だ。コンシューマーにとって、Compaqはもはや時代遅れのブランドだ」と同氏。

 HPはPresarioブランドを維持することもできるが、それならばPavilion PCとPresario PCをもっとしっかりと差別化する必要がある、とケイ氏。同氏によれば、GatewayはeMachinesを買収して以来、GatewayブランドのPCとeMachinesブランドのPCの差別化に成功している。

 「HPはこれまで明確な定義をしてこなかった。Compaqを若干低めの価格設定にしているが、それだけでは違いは明確ではない」とケイ氏。

 ハード氏とブラッドリー氏は年内は、PC事業からもっと十分な利益を生み出す方法の考案に当たる。HPにとっても、この業界のそのほかの多くの企業にとっても、それが難しいことは既に証明済みだ。HPのPC部門とプリンタ部門はほぼ同程度の売上高を上げているが、第2四半期の決算では、プリンタ部門が9億1200万ドルの利益を計上したのに対し、PC部門の利益は1億4700万ドルに留まっている。

 ケイ氏によれば、HPはあえて困難な道を選び、小売り店の商品棚の一部をPC他社に譲り渡し、より合理化したPC製品ラインとともに前進を目指すべきなのかもしれない。

 「ハード氏は簡素さがコストと業績に影響すると言っているが、まったくその通りだ。過剰な要素を排除すれば、事を進めやすくなる。ハード氏もそれを心得ているようだ」とケイ氏は語っている。

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