ASUSのGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカード、というと「オーバークロックを売りにした製品をいち早く発表した」という印象が強い。ただし、その直後に店頭に並んだ製品「EN7800GTX」は定格動作のいたってノーマルなグラフィックスカードだった。
「おお、これはどうしたことか」とユーザーも色めきたった時期もあったが、先週末から店頭に並び始めた「EN7800 GTX TOP」は正真正銘のオーバークロックバーションのGeForce 7800 GTXグラフィクスカードとして登場した。
その動作クロックはコアクロック486MHzにメモリクロック675MHz(転送レートで1.35GHz相当)と、現在登場している同種のオーバークロック製品のなかでは最速だ。
しかし、さすがASUSだけあって、EN7800 GTX TOPをただのオーバークロックバージョンとしてではなく「一味違う」グラフィックスカードに仕立てている。
過去に登場したNVIDIA最新GPUはGeForce FX 5800にしてもGeForce 6800 Ultraにしても分厚いクーラーユニットを実装していたが、これがとかく不評だったことは多くのユーザーに納得していただけると思う。NVIDIAのこの「ユーザーの声」を尊重して、GeForce 7800 GTXではハイエンドGPUながらワンスロットで収まる薄型クーラーユニットを実装した。
おかげでクーラーに対するユーザーの評判もよろしいようで、NVIDIA開発担当(とくに冷却機構担当)者もホット一息、というところらしいが、ASUSがEN7800 GTX TOPに実装したクーラーは時代に逆行するような、「反動的」に分厚いユニットなのだ。
HISの「ドデカ」クーラーユニットにも見えなくないが、とにかく2スロットをたっぷり取るだけの高さを持ったクーラーユニットである。しかし、このグラフィックスカードはたしかGeForce 7800 GTXを搭載しているはず。「ならば、NVIDIA SLIにも対応しているではないか?」ということで、基板にはそのためのコネクタも用意されている。
さすがに、2スロットも塞いでしまうような厚いカードでは「nForce4 SLIチップセットマザーのPCI Express x16スロットの間にx1スロットがあるでしょ」といわれても、ぴったり重なって心もとない。ところが、である。うまくしたもので、ASUSのnForce4 SLIマザー「A8N SLI」シリーズなら、2つのPCI Express x16スロット間には、これまた2つのx1、x4スロットがあって他社のマザーより間隔があいているのだ。
A8NマザーならEN7800 GTX TOPを2枚差してもカードの間は余裕である。ASUSはこのような分厚いクーラーユニットを実装したグラフィクスカードを使ったNVIDIA SLIを意識してPCI Expressスロットのレイアウトを考えていたのかもしれない。
「分厚いクーラーユニットに轟音は付き物」と考えているユーザーは多い。そして、これまでいくつかの「オーバークロック」GeForce 7800 GTXカードと接してきたが、どれもが「とにかく熱くなるので思いっきりチップを冷やしていまっす」といわんばかりにファンがブンブン唸っていた。
分厚いクーラーにオーバークロック動作。どう考えても「豪快な騒音」をイメージさせる状況だが、実際に動かすとこれが実に静かなのだ。大きなファンを低速で回して静音性能を向上させる、というのは最近のデスクトップPCでよく使われる手法であるが、EN7800 GTX TOPもこの方法をいち早くグラフィックスカードに取り入れているようだ。
場所塞ぎの分厚いファンを搭載したおかげで、高性能GPUを高速で動作させながらも静音性能も両立させてしまったEN7800 GTX TOPは、「コロンブスの卵」のような驚きをユーザーに与えてくれる。
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