中国大手検索サイトの著作権侵害裁判と中国ユーザーの反応山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2005年11月21日 16時04分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

中国の検索サイト百度に異常アリ?

 中国に百度という検索サイトがある。中国版Googleと呼ばれるほどデザインがよく似ている。企業としての百度は、最近、米国のナスダックに上場し、上場初日に記録的な上昇を記録し、アメリカンドリームならぬチャイニーズドリームを成し遂げ、今や中国のITを代表する会社のひとつとなっている。百度の細かい紹介は割愛するが、百度の「イメージ検索」などの分類検索のひとつにmp3捜索というものがある。

これが百度mp3捜索サービス

 まず簡単に百度のmp3捜索を紹介しよう。その名が表すように、mp3検索に最適化されたサービスである。mp3ファイルを検索できるのはもちろんのこと、ほかにもrmファイルやwmaファイルを検索可能。さらに検索結果画面から、音楽ファイルの視聴やダウンロードもできてしまう。

 百度のmp3捜索とは、出元が不明、つまり著作権の黒白がはっきりしていないmp3ファイルなどの音楽ファイルがダウンロードできる、「それって著作権的にどうなんでしょう?」と考えてしまうサービスなのだ。

そして訴えられ、敗訴した

 百度がナスダックに上場する前の2005年3月30日、レコード会社の上海歩昇音楽文化伝播有限公司が百度を著作権侵害による損害賠償請求で北京海淀法院に提訴した(請求額は約50万元、約700万円)。その内容は、同社が版権を持つ46曲の音楽が百度のmp3ダウンロードサービス(原文を直訳。mp3捜索のことを指している)によって著作権の侵害を受けたというもの。

 同法院は同社ナスダック上場後の同年9月16日、中華人民共和国著作権法とその関連の法律にのっとり、被告に被害額と調査費用を合わせた6万8000万元(約100万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を下した。

 判決の一部である著作権に絡む部分を以下に紹介すると、(1)検索をせずとも、百度mp3捜索ページに表示される歌手一覧で歌手名をクリックしていっても、mp3ファイルをダウンロードできてしまうこと。(2)オリジナルの音楽とダウンロードできる曲が酷似していること。(3)mp3ファイルなどのダウンロード時に企業のポップアップ広告など出て、mp3捜索で広告収益があること。以上が侵害と判断された理由である。

 「中国のレーベル企業が起こした百度著作権侵害裁判で百度が敗訴しました」……で話はお終い、ではなかった。百度が敗訴した直後に、今度は「大手レコード会社連合」が、mp3捜索サービスが著作権侵害だとして、百度を提訴したのである。提訴したのはユニバーサル・ミュージック、ワーナー・ミュージック、SONY BMG、英EMI、ゴールドラベルとそれらの中国子会社の計7社。

 百度が上記7社の版権を持つ曲計137曲をネットユーザーに無料で配信したとして、賠償と調査費用を合わせた計167万元(約2300万円)を請求する訴訟を北京市第一中級人民法院に起こした。判決はまだ下されていないので、今後進展があればITmedia上で報告する。

 百度のmp3捜索サービスは、これらの裁判を境に変化を見せた。検索したmp3ファイルについてダウンロードのリンクをクリックすると、今まではワンクリックでダウンロードできたが、今では検索表示画面からダウンロードをしようとすると、著作権に関する百度のコメントが書かれたページが表示されるようになった。その内容は「百度が自動的リンクを生成していて、改竄、編集はしていない。百度は著作権を重視しているので、もし検索結果のファイルに著作権的に問題があるなら、連絡してもらえれば、そのファイルへのリンクを消す」というもの。

 中国のPC系メディアは、この一連の訴訟を大きく取り上げた。同時に中国の掲示板サイトではこの問題に関して論争が盛り上がっている。中国人のこの問題に対する本音は何だろうか?次ページで紹介しよう。

一連の訴訟を境に百度のmp3捜索サービスではダウンロード前に警告が表示されるようになった
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