中国コンシューマーユーザーのソフト事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2006年01月18日 16時55分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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中国で広がる「合法的」ソフトウェアのダウンロード

 オンラインソフト事情に話を換えよう。PC雑誌などではオンラインフリーソフトがよく紹介されている。「今週/今月のオンラインソフト」という名で、毎号何本か紹介している。中国語ソフトや英語ソフトはもちろん、日本で開発された日本語のソフトも紹介される(日本のソフトで紹介されるのはゲームが多いようだ)。

 中国には、ベクターのような「ダウンロード専門ポータルサイト」はないものの、「新浪」「網易」「捜狐」の中国3大ポータルサイトのほか、著名ポータルサイトに「ダウンロード」(下載)のサブページがあり、ここがオンラインソフトのライブラリとなっている。

 日本ほどではないがオンラインソフトで用意されているジャンルは多岐にわたる。「こんな機能を持つソフトはないかな」とキーワードで検索してみると、中国製であれ外国製であれ、たいていの場合、望みどおりのソフトを見つけられる。

人気の快適化ソフト「超級兎子」。日本語版も「スーパーラビット」の名である

 オンラインソフトの総本数や、どのくらいダウンロードされたか?といった統計資料はないが、3大ポータルサイトのひとつである「新浪」のダウンロードサイトからおおよその状況を推測できる。

 「新浪」にあるオンラインソフトの総数約2万本弱。うち中国産ソフトは5000本強。ダウンロード数最多の人気ソフトは、中国国産のチャットソフト「QQ2005正式版」で、このバージョンだけで5500万本以上のダウンロードを記録している。ただし、QQは学生層なら必ずインストールしている、中国におけるキラーソフトのため、この数字は突出している。例えばダウンロード数ランキングでベスト10に入るWinZipで700万本強、Winampで600万本強程度だ。

 2万本弱ものソフトが中国のオンラインソフトライブラリサイトからダウンロードできるとはいえ、すべてがフリーウェアであるわけではない。ライブラリの中には体験版や、中国ではまだあまり普及していないクレジットカード払いが必要なシェアウェア、さらには明らかに違法なファイルすらも、含まれている。

 この超人気ソフト「QQ」は、広東省深センにある中国企業「Tencent Tecnology」によって、中国人のためのチャットソフトとして開発されたソフト。マスコットキャラクターは「QQ君」「QQさん」という名のペンギン2匹。

中国で最も普及しているオンラインソフト「QQ 2005」

 チャット画面で自分のアバターを作れるほか、チャット用ID(QQのID)で、別のQQユーザーと麻雀やトランプやテトリスなどをネットで対戦できる。ゲームのほかにも、チャット用IDを使って様々なサービスが利用できる。PC以外に、携帯電話からもこのサービスは利用可能だ。

 2005年9月時点でユーザー数は4億7400万人。余談だが、以前は有志によってローカライズされたQQの日本語版が「QQ JAPAN」というサイトからリリースされていたが、現在はサービスが停止している。

 QQは特別として、オンラインソフトで昔から人気なのはWindowsの高速化を目的としたソフトや、ダウンローダー、QQのカスタマイズソフトだ。現在はブロードバンドが普及してきたため、新手のP2Pフリーウェアが次々とリリースされ、これも人気のジャンルとなりつつある。

 中国オンラインソフトの最近における大きな動きといえば、大手ソフトウェアベンダーのキングソフトが、同社の統合オフィスソフト最新版「WPS OFFICE 2005個人版」を個人の使用に限り無償で提供したことだ。キングソフトといえば、昨年「キングソフトインターネットセキュリティを100万本無償提供」したのが記憶に新しい。これがリリースされた2005年9月から2カ月で1000万のダウンロードを記録したと、同社のニュースリリースで発表している。

 WPS OFFICEをインストールして、今も使っている中国人数人に聞くと、口をそろえて「Microsoft Officeと使い勝手が同じなので悪くない」という。セットアップファイルのサイズは16.4Mバイトで、筆者の滞在する、地方都市の家に引かれた公称下り2MバイトのADSLなら、ダウンロードに要した時間は約2分だった。

「WPS OFFICE」でExcel互換の「WPS表格」

「WPSOFFICE」でWord互換の「WPS文字」

 どこの地方都市にも電脳街があり、海賊版CDが蔓延していて、ソフトが安価に購入できる。Microsoft Officeだって百円程度で購入できる。その一方でキングソフトは、実績でマイクロソフトに劣るが、それとの互換性を高めた同社オフィスソフト「WPS OFFICE」を無料で提供した。少しでも海賊版を使うことに良心の呵責があるユーザーならWPS OFFICEを使うだろう。

 中国ではまたまだ多くのユーザーがマイクロソフトの海賊版を使い続けている。WPS OFFICEの無償提供は、中国のPCユーザが、海賊版依存から脱却できるか否かを問う「試金石」といっても過言ではない。

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