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» 2006年01月18日 16時55分 公開

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:中国コンシューマーユーザーのソフト事情 (1/2)

中国のPCユーザーは「素のPC」にどんなソフトを導入するのだろうか。中国におけるコンシューマー向けビジネスソフトの動向から、フリーウェアの浸透具合まで紹介する。

[山谷剛史,ITmedia]

書店やソフトショップで見る「中国の人気ソフト」

 日本でもそうなのだが、書店やソフトショップの品ぞろえを見れば、その国その地域のソフト事情が垣間見える。ということで、中国各地にある書店のPC関連書籍コーナーや、ソフトショップの店頭を調査してみた。

 地方都市のソフトショップにおいて、必ず売られているビジネスソフトといえば、キングソフトなどの中国各社ソフトベンダーやシマンテックから出荷されているアンチウイルスソフト、ついで、英語や日本語などの語学を学習ソフトや「ビジネスソフトを学習するソフト」が続く。

中国のソフトショップで販売される「ビジネスソフトを学習するソフト」

 キングソフトの「WPS OFFICE」など、中国メーカーの統合オフィスソフトを販売する店は上記のソフトを扱う店舗より少ないが、それでも結構な割合で店に置かれている。OSを見てみると、正規版のWindowsパッケージも売られているものの、「うちは正規版を扱っています」ということを“示す”かのように、ガラスケースの中に1本だけ置いている店が多い。ドローソフトなどの画像編集ソフトに至ってはほとんどの店で扱っていない。

 と、ビジネスソフトに注目してソフトショップ店頭のラインアップを紹介した。しかし、ソフトショップで販売されるソフトの多くはゲームソフトで、ビジネスソフトの割合は少ない。しかも、中国地方都市では正規版が「ほとんど」販売されていないので、PCユーザーがビジネスソフトを導入しようとしたら海賊版に頼らざるを得ない。

 ただ、ここまでは地方都市の話だ。外国人の目が届きやすい上海や北京では状況が異なる。PCショップが密集する電脳ビルにあるソフトショップの中には、正規版を在庫として多数用意して販売している。日本に比べて種類は少ないものの、Windows XPひとつとっても「Home」と「Professional」を選べるし、中国で人気のPhotoshopの正規版も購入できる。

上海の正規版を前面に押したソフトショップ。中国全土で見ればかなり「レア」な存在

 「正規版販売を啓蒙する」ために登場したソフトショップが「北京の秋葉原」こと中関村にある。「北京中関村科学技術貿易電子城」の中に設置された「正規版ソフト展示センター」だ。中国関係のWebサイトでもニュースとして報じられていたこともあって、「どんな正規版ソフトが展示されているのだろう」と期待して行ってみた。

 しかし、実際訪れてみると、展示販売されているのは中国の国産ソフト数種類と、Microsoft OfficeやWindows XP、Photoshop、ノートンアンチウイルスぐらいで、中国で大人気「Flash」の正規版すらなかった。

正規版販売センター。展示量は……、少ない

 ところで、先に少し触れたソフトショップでよく売られている「ビジネスソフトを学習するソフト」だが、学習する対象となるビジネスソフトで人気なのは、「Windows」「Microsoft Office」「Flash」「Photoshop」である。これらを学習するソフトが多くの会社から販売されている。まさに、中国でどんなビジネスソフトが「普及しているのか」を映す鏡となっている。

 上記4つのソフトが大変人気なのは書店も同じだ。上記の4タイトルのソフトは、本屋のPC書籍コーナーの本棚一列を占拠する。ほかにも3ds max、Dream Weaver、Corel DRAW、3D STUDIO MAXなど、Windowsプラットフォームの、グラフィックス編集ソフトに関する解説本の品揃えも充実している。こちらも中国のPCユーザーに人気であることが伺える。

 脇道にそれるが、PC書籍コーナー全体を見ると、これらソフト解説本と、PCハードウェア全般(自作、BIOS、改造、修理)が一番多く、次に中国国内のIT関連試験対策本や、プログラム言語など開発関連の本が多い。LinuxやMAC OS、およびそのプラットフォームのソフトの本は、北京や上海の最大規模の書店ですら、ごくわずかだ。また、中国ではPCでゲームするのがごく普通なのに、意外なことにゲーム本はほとんど置かれていない。

書店のPC書籍コーナー

 「Windows」「Microsoft Office」「Flash」「Photoshop」が人気であるにも関わらず、これら人気ソフトを販売しているソフトショップは(とくに地方都市において)ほとんど存在しない。「ソフトがないのに、その学習ソフトがだけが売られている」ソフトショップが圧倒的なのも解せない話だ。中国ソフトショップ業界における「暗黙の了解」のようにも思えるが、筆者はこれをユーザーだけの問題でなく、ショップやソフトベンダーの問題でもあると考えている。

 マイクロソフト中国法人は、日本と同様、ノーマルパッケージのほかに、アップグレードパッケージもリリースしている。ところが、地方都市のソフトショップではアップグレードの基になる正規版をやっと1本置いているぐらい。ソフトメーカーが消費者に対し、安価な選択肢を用意しても、ショップでそれをユーザーに与えていないことになる。

 また、ソフトベンダーもアップグレードパッケージやアカデミックパッケージの提供がないソフトメーカーもある(日本ではこれらパッケージを供給しているにも関わらずだ)。「給料と比べて高すぎるから仕方なく買っている」と理由をつけて海賊版を導入する中国PCユーザーがいる一方で、メーカーが中国では価格優待版パッケージをリリースしない状況を日本のソフトウェア流通を見慣れたPCユーザーから見ると、「ソフトウェアベンダーはコンシューマーPCユーザーに対して購入をはなから期待していない」とも感じてしまう。

 BSAの統計で“海賊版使用率が世界最悪な国の1つ”とされている中国で実情を調べ、その背景を考えるとき、消費者だけでなく、ショップ、ソフトウェアベンダーそれぞれがやることをやらないと、たとえ北京や上海で局所的に海賊版販売を取り締まったところで、根本的な解決にはならないのだ。

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