新Mac miniは誰にとって最適なマシンか?(2/3 ページ)

» 2006年03月27日 08時57分 公開
[林信行,ITmedia]

新Mac miniのシステム性能を検証

 まず新Mac miniのスペックをおさらいしよう。製品は2種類あり、下位モデルがMac初となるIntel Core Solo(1.50GHz)を搭載したシングルコアモデル。上位モデルはIntel Core Duo(1.66GHz)を搭載したデュアルコアモデルだ。ともに2次キャッシュメモリは2Mバイトで、FSBは667MHzとCPUの約半分の速度で動作する。メモリは667MHzのDDR2 SDRAMを標準で512Mバイト搭載している。

 グラフィックス機能はIntel 945GT Expressに内蔵するものを使い、VRAMはメインメモリと共有される(以前のMac miniはATI RADEON 9200を搭載していた)。それだけにパフォーマンスが落ちたのではないかと心配だったが、後で示すベンチマークテストの結果を見た限りでは、それほどパフォーマンスは見劣りしない。これはIntel 945 GT Expressでは、ほかのIntel 945シリーズと比べて内蔵グラフィックの動作クロックが倍ほど速くなっているからだろう。

 とはいえ、メモリはグラフィックスと共用する(最大64Mバイト)ため少しでも多めに搭載したい。加えて、Mac miniの筐体を開けるには専用の工具を必要とするので、製品購入時にメモリを増設してもらうのが普通だ――そう考えるとインテル版Mac miniへの初期投資はさらに高くなると覚悟しておいたほうがいい。仮に自己責任で増設するにしても、メモリはデュアルチャネルアクセスを実現するために、256Mバイトのモジュールを2枚搭載しており、出荷状態ですでに2基のメモリスロットは埋まっている(つまり、増設するさいは既存のメモリモジュールが無駄になってしまう)。

 HDDは2.5インチのSerial ATAドライブで下位モデルに60Gバイト、上位モデルには80Gバイトが搭載される。光学式ドライブは下位モデルがコンボドライブ、上位モデルが2層記録対応のSuperDrive(DVD+R/DVD±RW/CD-R/RWに対応)となる。一方、すでに触れたように、端子類の変更にあわせてギガビットLAN(1000BASE-T/100BASE-TX/10Base-T)をサポートしている。従来のMac miniユーザーの中には、同製品を小型サーバーとして使う人も多かったが、これで家庭内ファイルサーバーとしても優れたパフォーマンスが期待できるようになった。

Intel Core Soloで基本性能は大幅アップ

 実際にアプリケーションを使った場合のIntel Coreの実力は、MacBook Proのレビューでも書いた通り、これからまだまだ大きく変動するはずだ。インテルCPUに最適化されたアプリケーションが増え、Mac OS XそのものもインテルCPUに最適化されることで、より高い性能が発揮されるはずだからだ。

 とりあえずここではハードウェア・コンポーネントの純粋な性能を計測するベンチマークソフトでの検証結果を見てみよう。なお、今回レビューした「MA205J/A」(Intel Core Solo 1.50GHz)のほか、上位モデル「MA206J/A」(Intel Core Duo 1.66GHz)、CPU性能の比較として1.67GHz PowerPC G4を搭載するPowerBook G4(M9969J/A)、参考としてIntel Core Duo搭載のMacBook Pro(MA464J/A)の値を掲載している。

Xbenchの結果。CPUテストを細かな項目ごとに見てみると、Velocity Engine系の処理がうまくこなせていないことがわかる

 Mac専用ベンチマークソフトのXbenchを使ったCPU Testの結果は、Mac miniのIntel Core Soloが55.54、Core Duoが63.65で、PowerBook G4の66.16を下回っているが、この値はさまざまなCPUテストから割り出した総合スコアだ。細かく見てみると、CPUの基本性能がわかるGCD LoopではPowerBook G4の139.83に対し、Core Soloが193.55、Core Duoが218.8とCPUクロック速度が遅いにも関わらずMac miniの方が高い数字を出している。

 また浮動小数点演算の基本処理性能が分かるFloating Point BasicでもMac miniが勝った。しかし、これがSIMD機構のVelocity Engineを使った処理になると逆転し、PowerBook G4の78.57に対してCore Soloモデルが31.24、Core Duoモデルが36.96とどちらも半分以下のスピードになる。これがIntel Core DuoのSIMD機構(SSE3)がPowerPC G4のAltiVec(ベロシティーエンジン)に劣るからなのか、それともXbenchのソフトやMac OS XのSSE3への最適化が足りないかは現時点でははっきりと言えない。

 なお、Mac OS Xに用意された浮動小数点演算ライブラリーを使った演算ではほぼ同等の性能を発揮している。一方、CPUの並列処理の性能が反映されるThread TestではデュアルコアCPUの強さが浮き彫りになった。

CINEBENCHのテスト結果。Intel Core Duoでは、シングルコア状態の1.5倍の性能を発揮している(コア1つでCPUレンダリングをした場合のスコアは231)

 続けてCINEBENCHのCPUテストの結果も見てみよう。CPUを使った3Dレンダリングの性能は、やはりPowerPCよりもIntel Coreのほうが圧倒的に速い。浮動小数点演算が増えるShading処理の結果ではそれほどの差はつかなかったが、Mac miniもそれなりに健闘している。これらの結果からインテル版Macの基本性能はかなり向上したが、浮動小数点演算やSIMD演算は少し苦手という像が浮き上がってくる。

 今日、浮動小数点演算やSIMD演算がもっとも使われるのは、詳細な3Dアニメーションを多用したゲームや動画の再生だ。となると、Mac miniはそれらの処理が苦手なのだろうか。実はそんなことはない。というのも最近、Mac OS Xはこれらの処理をビデオチップに任せることが増えてきたからだ。

大健闘のIntel 945GT Express

 最近Mac OS Xでは、3D表示だけでなく画面上の2D表示までグラフィックスチップ(GPU、VPUなどとも呼ぶ)側の機能を生かして行なうようになってきた。そこで気になるのがMac miniのグラフィックス性能だ。これまでのMac miniはATI RADEON 9200という独立したGPUを搭載していたが、インテル版Mac miniは、はIntel 945GT Expressチップセット上のグラフィックスコアを使い、VRAMもメインメモリと共用になる。

 このためグラフィックス性能が落ちたのではないかと心配だったが、どうやら取り越し苦労だったようだ。Xbenchで2D表示性能を検証するQuartz Graphic、3D表示性能を検証するOpenGL Graphicの結果を見ると、ATI MOBILITY RADEON 9700を搭載するPowerBook G4と比べても2D表示性能で気になるほどの違いはなく、3D表示性能ではむしろ上回っている。

 もっとも弱みもある。同じGPUのハードウェアを使ったOpenGLのテストでも、CINEBENCHのテストでは、Mac miniがPowerBook G4の半分以下という結果になった。XbenchのOpenGLハードウェアテストは単純な図形の3D回転といった比較的軽い処理が中心だが、CINEBENCHのOpenGLハードウェアテストはかなり複雑なモデルを動かしており、2つあるテストの1つでは大量のテクスチャーマッピングも行なっている。こうした処理は当然、VRAMへの依存も大きくなる、ここで新Mac miniの「共用メモリ」という仕様が弱さとして露見したのだろう。新Mac miniに対して米国ではゲームでの利用への期待も高まっているが、複雑なテクスチャーマッピングを施したゲームでのパフォーマンスは少し落ちそうだ。

 デジタルライフスタイル時代、表示性能という観点でいえば、ハイビジョン動画の再生や取り込みの性能も気になるところだ。ハイビジョン動画の再生性能を検証してみると、Intel Core Solo版Mac miniではコンスタントに約15から18fpsで再生できた。これはPowerBook G4とほぼ同じくらいの再生速度だ(ちなみにPowerPC版のMac miniでは2〜3fpsでまともに再生できなかった)。一方、Intel Core Duo版のMac miniを使うと、ほぼコンスタントにコマ落ちなしの30fps再生ができた。

 また、iMovie HDを使ったハイビジョン動画の取り込みでは、PowerBook G4とIntel Core SoloのMac miniでは4分の1の速度でしか取り込みができなかったが、Intel Core DuoのMac miniとMacBook Proでは4分の3からリアルタイムのスピードで取り込みができた。こうしたハイビジョン動画の取り扱いでは、グラフィックスコアよりも、むしろMPEG-2動画の圧縮/再生のスピード、つまりCPU性能が問われるが、Intel Core Duoのデュアルコアが大きな強みを発揮したようだ。

 ことグラフィックス性能だけに関して言えば、Mac miniのIntel Core Solo版は安価なコンシューマー用製品でありながら、かつてプロシューマー向けノートPCとうたわれたPowerBook G4とほぼ同等の性能を発揮するマシン、Intel Core Duo版はそれ以上の性能を発揮するマシンというのがひとつの指標になりそうだ。なお、ハイビジョン動画の取り込みや再生を視野に入れているのなら、ぜひともIntel Core SoloではなくCore Duo版のMac miniを買うことを検討すべきだろう。

 さて、ここまではすべてインテルCPUに最適化されたソフトを使ったテストの結果だ。まだ最適化されていないソフトをRosetta環境を通して使った場合の動作は、もちろん動作が遅くなる。参考までに、Photoshopのエフェクト処理にかかった時間を計測した結果では、PowerBook G4に比べてIntel Core SoloのMac miniで40%程度のスピードだったことを付け加えておく。

Xbenchのグラフィックス性能テスト。OpenGL GraphicではIntel 945GT Express内蔵コアを利用するMac miniの性能がATI MOBILITY RADEON 9700を搭載するPowerBook G4を上回った
一方、CINEBENCHのOpenGL(HW)テストでは新Mac miniの3D性能はPowerBook G4の半分程度になっている

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