先に記したとおり、プリントエンジンはMP800と同等だ。pBk(顔料黒)、dBk(染料黒)、C、M、Yの5色インク構成ながら、1pl(ピコリットル)と5plのドロップを打ち分けることにより、粒状感の低減と階調表現力の向上を果たしている。確かにカラー印刷の品質はとても4色インクのプリンタとは思えない。さすがに黒は潰れがちにはなるが、その分メリハリがあるので、複合機の購買層には受け入れられるだろう。L判程度のサイズならば不満を感じることはないはずだ。
このクラスのインクジェット複合機に写真画質を求める人は少ないだろうが、画質がよいに越したことはない。また、テキスト出力においては顔料ブラックが用いられるため、ドラフトモードでもそれなりの品質で出力される。
ボディは緩やかなカーブを用いたデザインで、事務機器然とした印象はない。本体サイズはそれなりに大きいが、2Way給紙機構を犠牲にすることなく、このサイズを実現したのだから文句の出ようはずがない。名刺やカードサイズ、シールはASFだけの対応になるが、使用頻度の低いサイズなので問題ないだろう。ちなみにSOHO用途で使う場合は給紙容量も気になるところだが、ロワーカセット、ASFともに150枚の容量を誇り、(インク代を考えなければ)最大で300枚もの連続印刷が行える。

インクシステムはMP800と同じpBk、dBk、C、M、Yの5色構成。CD/DVDのレーベル印刷も従来同様、内蔵トレイガイドに挿入すると自動的に位置を調整してプリントしてくれる(写真=左)。前面右下のカバー内にダイレクトプリント用のメモリーカードスロットを装備し、その下にはPictBridge対応機種で利用できるUSBポートを備える(写真=右)。対応メディアはCF Type II/マイクロドライブ/スマートメディア/メモリースティックPRO/SDメモリーカード/MMC
PCとはUSB 2.0で接続する(写真=左)。なお、自宅で無線LAN環境を構築している場合は、キヤノンイメージングシステムテクノロジーズの無線プリントサーバ「NetHawk WP100」(実売1万9000円前後)を利用することで、ケーブルの取り回しに煩わされることなくプリンタのネットワーク共有が行えるこのようにPIXUS MP830は、給紙容量の大きさと2Way給紙、ADFによる作業の効率化など、パーソナルクラスの製品とは思えないほど贅沢な設計になっている。実売で4万6000円前後とMP800に比べると1万円以上高いが、仕事で使うのであればADFを備えた本機の使い勝手は価格を補って余りある。本機をスモールオフィスに置けば獅子奮迅の働きを見せてくれることだろう。ADFに豊富な給紙容量、とくれば次はマルチビンとソーターも欲しいが、さすがにそれは欲張りすぎだろうか。
キヤノン、PIXUSのラインアップを拡充──複合機「PIXUS MP830」など5機種
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