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“4+1”のクアッドコアCPUを搭載する「Tegra 3」の特長とはMobile World Congress 2012

NVIDIAが最新アプリケーションプロセッサー「Tegra 3」を発表し、MWCではTegra 3を搭載したスマートフォンも多数発表された。「クアッドコア」が大きなインパクトを与えるTegra 3だが、どんな特長を持つのだろうか。


NVIDIAのマット・ウェブリング氏

 NVIDIAは同社のアプリケーションプロセッサー「Tegra」の最新製品「Tegra 3」を発表しており、Mobile World Congress 2012(以下、MWC)でもTegra 3を搭載したスマートフォンやタブレットを展示していた。Tegraのマーケティングディレクターを担当するマット・ウェブリング(Matt Wuebbling)氏は「2011年の今ごろはTegra 2を搭載した製品が2機種しかなかったが、現在はTegra 3が5機種のスマートフォンに採用されることが決まっており、採用メーカーが増えている。これはパフォーマンスと低消費電力が認められたからだ」と話す。


計5コアで構成される「Tegra 3」

 Tegra 3はメインのCPUコアにCortex-A9コアを4つ搭載した“クアッドコア”仕様であることに加え、5個目のCPUコアである「コンパニオンコア」を搭載しているのが大きな特長だ。このコンパニオンコアでは、メールの同期、TwitterやFacebookの更新など、バックグラウンドで動作するときや、高い処理能力を必要としないアプリの利用時に使われる。コンパニオンコアが動作する周波数は最大500MHzなので、メインコア使用時よりも消費電力を抑えられる。加えて、コンパニオンコアがオフで4つのメインコアが使われる場合、簡単なゲームやテキストメッセージを使う場合は1つのコアのみを使うなど、作業負荷に応じて使用するコア数を1つ、2つ、4つに決められる。こうした工夫により、Tegra 3ではTegra 2や他のデュアルコアCPU搭載機よりも低消費電力化が可能になる。例えば、HDビデオの再生においてTegra 2より61%の省電力化を実現した(NVIDIA調べ)。NVIDIAはTegra 3を「世界で唯一の4+1クアッドコア」とアピールしている。

作業負荷に応じて使用するコアを切り替えられる

高いタッチレスポンスを実現するTegra 3の「DirectTouch」

 タッチ操作をTegra 3上で処理する「DirectTouch」も、Tegra 3で新たに実装された機能だ。DirectTouchでは、通常はタッチコントローラーで行うタッチ関連の処理をTegra 3のコンパニオンコアが代わりに行い、ゲームなど高負荷のアプリを使う場合はメインCPUコアを使う。このように、コンパニオンコアを基本にしながらメインコアを必要に応じて使うことで、優れた指の追従性やタッチ後の低遅延を実現。また誤って手のひらが触れても無効にするなど、タッチの精度を高めているという。また、通常のタッチコントローラーの動作周波数が最大40MHzであるのに対し、NVIDIAのDirectTouchは最大1.3GHz超で動作するため、NVIDIAは「高いタッチパフォーマンスが必要になった場合も対応できる」としている。

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 Tegra 3は、MWCで発表された「HTC one X」(HTC製)、「Optimus 4X」(LGエレクトロニクス製)、「ZTE Era」(ZTE製)と、富士通製が2012年夏に発売予定の新型スマートフォンなどへの採用が決まっている。タブレットについては東芝製の7.7インチディスプレイ搭載の「Toshiba 7.7」(仮称)と、ZTE製の「ZTE T98」にも採用される。さらに、Tegra 3搭載機に最適化したゲームも開発されており、MWCでは5タイトル「Sonic the Hedgehog 4:Episode II」「Eden to GREEEEN THD」「Hamilton's Great Adventure THD」「Golden Arrow THD」「Dark Kingdom THD」が明かされた。これらのゲームはTegra 3にのみ最適化されており、Tegra 2搭載機への対応は「検討中」とのこと。


Tegra 3を搭載するスマートフォン
Tegra 3搭載の東芝製新型タブレット。薄型軽量ボディが特長だ
Tegra 3に最適化されたゲームも用意される

Icera 410 LTEにTegra 3を搭載したデモも実施

 NVIDIAが買収した「Icera」製のLTEモデム内蔵ベースバンドチップ「Icera 410 LTE」とTegra 3を搭載した試作機(タブレット)を使い、LTEネットワークでの通信デモもMWCで披露していた。Icera 410 LTEの価格と形状は「Icera 450 HSPA+」と同等を目指しており、2013年にはLTEモデム内蔵のIceraとTegraを1チップに組み込んだ製品の投入も目指している。一方でサードパーティとも協力し、NVIDIAはGCT Semiconductor、Renesas Mobileの2社と、Tegra 3+LTEモデムの開発で協業することも発表している(1チップとするかは未定)。この協業で生まれたTegra 3+LTEモデム搭載製品は「2012年後半には登場するのでは」とウェブリング氏はみる。メーカーがNVIDIA製品を採用する際、(Icera+Tegraの)1チップとするか、Tegraのみとするかは各社の判断に委ねる。「Tegra 3はLTE上でも問題なく動作する。実際、Tegra 3を搭載する富士通のスマートフォンはLTEをサポートしている」(ウェブリング氏)。この富士通端末のLTEモデムはIceraではなく、富士通が独自に採用したものが使われている。

 MWCのNVIDIAブースではTegra 3用ゲームが大きく展示されていたが、普段使いでゲームをしない人には実感が湧きにくい。むしろ注目すべきは、低周波数で動作するコンパニオンコアの存在だろう。コンパニオンコアが主に動くバックグラウンド通信は、普段使いでは避けて通れない部分。実際の利用シーンでどこまで低消費電力を実現できるかは現時点では未知数だが、その性能が期待される。

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