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» 2006年07月25日 22時29分 公開

つくばの車窓から――TX無線LANを体験

首都圏北東部を縦断する「つくばエクスプレス」。最高時速130キロで走行し、秋葉原からつくばまでを約45分で結ぶこの列車で、無線LANの利用が可能になる。

[後藤治,ITmedia]

 7月25日、東京は秋葉原にあるUDXビルで「つくばエクスプレス列車内無線LANインターネット接続環境の整備完了と商用化」に関する記者説明会が行われた。秋葉原からつくばまでの全20駅を約45分で走破するつくばエクスプレス(以下TX、快速は9駅に停車)は、秋葉原再開発の中心である「秋葉原クロスフィールド」と並び“アキバ再編”のマイルストーンともいえる存在だ。

 2005年の開通と同時にTXの一部車両では、首都圏新都市鉄道、NTTブロードバンドプラットフォーム、インテルの3社による走行中の無線LAN接続実証実験が行われていたが、新線開業から1年を迎える2006年8月24日、ついにTX-2000系車両全編成で無線LANの利用が可能になる。

 具体的にはエヌ・ティ・ティ・ドコモの無線LANサービス「Mzone」(1575円/月、525円/日)と、FOMAのオプションである「mopera U」の「公衆無線LAN」コース(1050円/月)が8月24日より提供を開始、またNTT東日本の「フレッツスポット」も年内にサービスをスタートする予定という。なお、商用サービスの開始にともない、TX内の無線LAN接続トライアルは7月31日をもって終了する。

TX開業とともにはじまったトライアルサービスは4465名におよぶモニターが参加した(写真=左)。2005年10月時点で秋葉原から南流山までだった無線LANの利用エリアは現在つくばまで拡大し、また電波状況などにより不通となっていた地点も大幅に減っている(写真=中央)。エヌ・ティ・ティ・ドコモは8月24日より2つのサービスを提供する予定だ(写真=右)

 説明会の冒頭でインテル代表取締役共同社長吉田和正氏が「無線LAN接続環境の整備は最終目標ではない。さらなるインフラの整備と沿線近隣の開発や地域への投資を積極的に行っていく」とコメントし、WiMAXといった次世代ワイヤレスブロードバンドの推進や沿線自治体との協力を提案した。

“専用車両”で旅気分

 さて、TXの無線LAN整備完了について吉田氏が語ったメッセージは“その次へ”だったが、記者もこの説明会が最終目的ではなく、“その次”に行われるデモンストレーションが本題だ。これは秋葉原からつくばまで運行するTX-2000系の車両内で、実際に無線LANのデモを実施するというもの。報道関係者には区間内乗り降り自由の1日優待乗車証が配布され、“専用車両”で約45分間のちょっとした旅を楽しむことができる。……もちろん仕事です。

 車窓の風景をお伝えする前に、簡単にTX内での無線LANの仕組みをおさらいしておこう。ノートPCやモバイル端末などのクライアントは、各車両に設置されたアクセスポイントとIEEE802.11b/gで接続される。その後、列車前後に配置されるアンテナによって各駅に施設された光ファイバの中継網を経由、データセンターを通ってインターネットにつながる。ただし、車両と駅間の通信には携帯やPHSよりも高速な無線LANを採用するため、指向性の高いアンテナを使っても距離的な制約がある。そこでTX全線58.3キロをカバーする65局の中継局を設け、25GHz帯のWIPAS(Wireless IP Access System)によるアクセスリンクを構築している。

 また、駅間平均500メートルで中継局が設置されていると、最大時速130キロで走行するTXは、各エリアを15秒から20秒で通過してしまう。このため、最適な中継局を瞬時に判断して切り替えを行う技術と、セッションを維持する技術が採用されている。

運転席にダイバーシティ(上下2つある)アンテナを設置(写真=左)。車両にはボックス内にアクセスポイントが置かれる(写真=中央)。また各駅にも無線LAN設備がある(写真=右)

 実際にPCを無線LANに接続するとWebブラウザには車内や駅で利用できる専用メニューが現れる。このメニューではTXの運行状況だけでなく、沿線にある関連施設や季節のイベントなど、地域に根ざした情報も提供される。また、北千住と守谷、万博記念公園の各駅に設置されたネットワークカメラからライブ映像をチェックできるので、目的地の天候を知りたい場合や単なるひまつぶしに重宝する。

 なお、気になる通信速度は公称値で平均約1.4Mbps。携帯電話に比べると非常に速い数値だが、GyaOで番組視聴などを行っていたデモの様子を見る限りでは、まったくストレスのない通信環境とは言い難い。

3両めと4両めにある対面座席では通路側のみサイトテーブルを引き出せる。テーブルはB5サイズのノートPCなら置いても問題のない広さだ(画面=左)。専用メニューから駅構内の案内図や各駅に設置されたライブカメラの映像もチェックできる(画面=中央)。時速約125キロでITmediaのトップページが疾走した(画面=右)。

 そうこうしているあいだに快速最後の停車駅である守谷駅を過ぎ、TXはつくばへ向けてさらに北上。車窓から見える景色は田園風景に。約30分でここはもう茨城だ。ちなみにTX-2000系は守谷駅から次のみらい平間駅のあいだで直流から交流に切り替わる。つまりTX-2000系は交直両用車両なのだが、一方で秋葉原から守谷までの限定で運行されるTX-1000系は直流専用となっている。無線LANを利用できるのが全車両ではなくTX-2000系だけなのはこれが1つの理由だ。

窓の外にはのどかな田園風景が広がる。ちなみにTXの最大走行速度は時速130キロとなっているが、これはマニュアル運転時の話であり、通常のATO(Automatic Train Operation)による運行では上限が125キロに設定されている。もっとも、このうんちくは説明員の受け売りであり、記者は“鉄”ではない

 “専用列車”を堪能した記者だったが、このデモンストレーションは終着駅のつくばで現地解散。残された仕事のことを思い、そのままとんぼ返りしていくほかのプレスを尻目にやや沈んだ気持ちで改札を抜けると、そこにはつくばの高い空が広がっていた。

ぽつーん

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