「Qosmio G30」「BIBLO NX」「VAIO type A」の個性を比べる新世代光学ドライブ搭載ノート連続レビュー第4回

» 2006年08月09日 09時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 連続と呼ぶにはちょっと間隔が空いた形になったが、次世代光学ドライブであるHD DVD-ROMドライブ、Blu-ray ディスク(以下BD)ドライブを搭載したAVノートPC3製品のレビューを行なった。3製品とも機能と性能を重視したデスクトップPC代替を果たすハイエンドスペックのラインアップに君臨するモデルで、「次世代光学ドライブ内蔵!」以外でも特徴は多い。ただし、いずれの製品もDVDスーパーマルチドライブを装備する下位グレードが準備されているので、次世代光学ドライブに魅力を感じたユーザーがこれらのモデルを選択することになる。そういった意味では、やはり搭載する次世代光学ドライブがこれらモデルの存在意義ということになるだろう。

左からQosmio G30、BIBLO NX、VAIO type A

左からQosmio G30、BIBLO NX、VAIO type Aの内蔵光学ドライブ。BIBLO NXとVAIO type Aは左側面、Qosmio G30は正面左寄りに搭載。また、同じ左側面でも奥寄り(VAIO type A)と手前寄り(BIBLO NX)とやはり違いが出る

 レビュー本編でも触れているが、今回検証した東芝「Qosmio G30 697HS」(以下、Qosmio G30)、富士通「BIBLO NX95D」(以下、BIBLO NX)、ソニー「VAIO VGN AR70B」(以下、VAIO type A)は、いずれもハイビジョン対応の17インチワイド液晶ディスプレイ、ノートPC向けとしては最上位となるCPUとグラフィックスチップ、そして、2台のHDDを搭載可能と、そのスペックに共通項は多い。数値だけを並べると「没個性」にも感じるが、AV機器的な存在感を意識した「Qosmio」、あくまでPCとしての使い勝手も配慮したバランスの取れた「BIBLO NX」、ハイビジョン映像の編集も楽しめる「VAIO type A」と、製品の個性をしっかり反映させたデザインが盛り込まれている。それだけに、今回取り上げた3機種から購入する製品を選ぶ場合に、それぞれの「個性」が重要な要素となってくるだろう。

左からQosmio G30、BIBLO NX、VAIO type Aの液晶ディスプレイ。レビューでは「映像は極めて密で色乗りもリッチ」(Qosmio G30)、「明るく色鮮やかな画質」(BIBLO NX)、「しっとりとした印象」(VAIO type A)と評されている

 ではそれぞれが搭載した次世代DVDドライブはどれだけの意味を持つだろうか。Qosmio G30とBIBLO NXに搭載されたHD DVD-ROMドライブは、HD DVDメディアに対して読み出し専用となる。ゆえに現時点でその利用は市販のHD DVDビデオの再生だけに限定される。もちろん、HD DVDビデオはすでに市販パッケージが販売されているので、次世代DVDの高画質にいち早く触れたいユーザーにとって、1つのデバイスでHD DVDビデオを高解像度で楽しめる意味は大きい。このポイントを重視するユーザーはフルHD対応ディスプレイを搭載したQosmio G30を高く評価できるだろう。BIBLO NXに関して言えば、ディスプレイ解像度が1440×900ドットという点がマイナスに働くだろうが、半面、価格が安いというメリットがある。

 VAIO type Aが搭載するBDドライブはBD-RとBD-REメディアへの書込みに対応する。HDVカムなどで撮影したHD映像の保存はもちろん、地上デジタルチューナー搭載モデル(VAIOオーナーメイドのみ)であれば、放送画質のままBDメディアにムーブ可能と、「Qosmio G30」や「BIBLO NX」と比較するとその機能は充実している。レビューでも触れたが、「VAIO type A」に関してはDVDスーパーマルチドライブ搭載モデルとの価格差が6万円程度に抑えられていること(単体のBDドライブは10万円する)も特徴としてあげていいだろう。

 ただし、BDメディアにHDコンテンツの保存ができたとしても、現時点ではBDプレイヤーが存在しないのでHDD同様に「自己録再」での利用に限られる。結局は「BDメディアに移して空いた分をHDDの空き容量として確保できる」という用途にしか使えないというのが現実だ。単純に内蔵HDDの空き容量を確保したいなら、外付けHDDにバックアップしてもいいので、現状のBDメディアの価格では外付けHDDへのバックアップのほうがコストが安いということになる。

 このように、HD DVD-ROMドライブにしてもBDドライブにしても、現状では「次世代光学ドライブ」を搭載したことによるユーザー環境の大きな変化というのがは感じない。しかも、ノートPCでは内蔵する光学ドライブの換装はできないのが原則である。今回取り上げた製品はいずれもPCとしてハイスペックでありそれなりに高額商品であるので、できる限り長く使おうとするだろう。しかし、例えば「1年後」を考えるだけでも、次世代光学ドライブを巡る状況は随分変わるはずだ。すでに東芝が記録型HD-DVDドライブを搭載するRD-A1を発表しているし、カートリッジメディア専用の旧規格ではないBDドライブを搭載したハイビジョンビデオレコーダーも登場していることが予想される。BDにおいては、パッケージコンテンツの流通も本格化しているはずだ。これらのドライブを搭載したハイエンドノートPCは、現行製品より搭載する光学ドライブの意義がその機能とコンテンツの流通状況によってより高まっているだろう。

 しかし、次世代DVDで実現されるハイビジョンコンテンツに興味があるなら、対応する光学ドライブを搭載するノートPCを購入することは決して間違いではない。今回取り上げた3製品はWindows Vistaも快適に動作するであろう高いスペックを備えており、2年、もしくは3年程度は「現役」として使い続けられるはずだ。3製品からどれを選ぶか、という点は、すでに述べたように、いずれも個性が強いので、自分の用途にマッチする製品を選択すればいい。もっともHD DVDかBDか、という個人では判断が難しい困った選択肢が残るのは困ったものだ、という根本的な問題をまず解決しなければならない、というのは事実である。

アナログ放送、デジタル放送、メディアコンテンツの再生、録画など、AVノートPCで利用できるコンテンツソースは多岐にわたる。左からQosmio G30、BIBLO NX、VAIO type Aのコンテンツコントロールソフト。この中では1つのソフトにコンテンツ制御を統合したQosmio G30の使い勝手が群を抜いていた

Qosmio G30/697HSFMV BIBLO NX95S/DVAIO type A VGN-AR70B
CPUIntel Core Duo T2500(2.00GHz/uFCPGA)
チップセットIntel 945PM Express
L2キャッシュ2048KB(CPU内蔵)
メインメモリ容量1Gバイト
規格DDR2 SDRAM(PC2-4200)DDR2 SDRAM(PC2-5300)DDR2 SDRAM(PC2-4200)
メモリスロット(空き)200ピンSO-DIMM×2(0)
ハードディスク容量シリアルATA 120Gバイト×2シリアルATA 160Gバイト×2シリアルATA 100Gバイト×2
内蔵ドライブHD DVD-ROMBlu-rayドライブ
ディスプレイサイズ17インチ
解像度1920×1200ドット1440×900ドット1920×1200ドット
グラフィックスチップGeForce Go 7600Mobility Radeon X1400GeForce Go 7600GT
グラフィックスメモリ128Mバイト128Mバイト(HyperMemory でメインメモリと共有。最大256Mバイト)256Mバイト
サウンドチップチップセット内蔵(HDオーディオ)チップセット内蔵(HDオーディオ)SoundReality
光デジタル音声出力丸形
PCカードスロットTYPEII×1
ExpressカードスロットExpressカード54/34×1
メモリカードスロットブリッジメディアスロット×1(SDメモリーカード、xDピクチャーカード、MMC、メモリースティック対応)SDメモリーカード/メモリースティック/xD‐ピクチャーカード対応SDメモリーカード/メモリースティック/MMC対応
USBUSB 2.0×4USB 2.0×5USB 2.0×3
IEEE1394S400/4ピン×1
ビデオ出力Sビデオ、HDMISビデオ、D1/D2Sビデオ、HDMI
ポインティングデバイスタッチパッド
イーサネット1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T100BASE-TX/10BASE-T
無線LANIEEE802.11 a/b/g準拠IEEE802.11 a/b/g準拠IEEE802.11 a/b/g準拠、Bluetooth
FAXモデム56kbps(V.90)/14.4kbps
外形寸法W406×D295×H45.5〜53.5ミリW403×D295×H45.5ミリW416×D299.5×H33.5~41.5ミリ
重量約4.8キロ約4.8キロ約3.8キロ
搭載OSWindows XP Home Edition SP2

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