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» 2006年09月07日 10時45分 公開

心霊現象とITの関係(1/2 ページ)

霊感のまったくない人でも“心霊現象”を体験できる――“IT”の力を借りて。いかにもネタくさい実験だが、困ったことに、参加者はちょっぴり本気だ。

[後藤治,ITmedia]

 9月1日。夜の国道1号線沿いを、記者は重い足取りで歩いていた。めざすは鈴カ森刑場遺跡。既報の通り、その場所には「“IT”を駆使して“心霊現象”に遭遇してみたい」という、個人的にはあまり関わり合いになりたくない種類の人たちが集まっているはずだった。

 しかもその日は雨。連日の猛暑が嘘のように肌寒く、よほどの物好きか、もしくは仕事で嫌々行かされるのでなければ、とても“納涼”イベントにわざわざ出かけようという気にはならない。

(本当に誰か来るのか? 誰も来ないんじゃないか……?)

 当然すぎる予想が頭をよぎる。主催者以外はすべて“アチラ側”からの参加、という半泣きになりそうなオチを思い浮かべながら歩いていると、集合場所とおぼしき目印の前に人影が……。ひとりで誰かを待っている様子だが、おそらく相手は恋人ではないだろう。誰も遠い昔に罪人が処刑された地をデートの待ち合わせ場所に選んだりはしない。彼に足があるのを確認して、思い切って声をかけてみた。

――すみません、ええと、「お化け狩り」ですか?

 もし相手が今回のイベントと無関係の人だったら、記者は相当な不審人物である。なんだよ「お化け狩り」って。自分で言ってて意味が分からん。しかし答えは「イエス」。このTさんは集合時間の1時間ほど前からすでに待っていたという。無駄なやる気と言えなくもない 今回の実験に対する期待の大きさをうかがわせる。

――きょうはなんか寒いですよね(いろんな意味で)

Tさん 「あははは」

 などと、2人で和やかに談笑していると、ひとりまたひとりと人が集まり、一般参加者は総勢6名となった。おそらく国内で10本の指に入るであろう物好きのうち、その半数以上が一堂に会した歴史的(にバカな)瞬間だ。事前に参加表明をしながら来なかったチキン野郎 人もだいぶいたようだが、それはそれで正しい判断だったかもしれない。

1時間前からイベントの開始を待っていたTさん。そのやる気を今後の人生に役立てたい(写真=左)。集合時間の5分前には続々と“物好き”たちが集まってきた。その事実だけですでに怪談だ(写真=中央)。オレンジ色のつなぎを着ているのがゴーストハンターズ会長の堤氏。この格好で電車に乗ってきたようだ。尊敬してしまう(写真=右)

冒頭から大変なことに……

「みなさん、この雨の中をわざわざありがとうございます。本当に集まっていただけるとは思いませんでした」(ソリッドアライアンス社長 河原氏)

 呼んでおいて来るとは思わなかったという、とんがった挨拶で公開評価実験の幕が上がった。続いて参加者全員にばけたんストラップが手渡される。ゴーストハンターズ会長である堤氏がその使い方の説明を始めた瞬間、一般参加者の間から「ピーピーピー」という音が鳴り響いた。

 “何かまずいことが起きたらしい”ことを予感させる音に全員が振り返る。音の出どころはもっとも早く集合場所に来ていたTさんだった。配ったばかりの“ばけたん”が赤く点滅している。

赤は、来てます

Tさん 「赤……赤くなっているんですが……ええ?」

河原社長 「赤いのは、来てますね」

Tさん 「赤いですよ?」

河原社長 「ええ、来てます。赤いのは来てます」

Tさん 「ど……どうすればいいんですか?」

河原社長 「バリアモードがあるので、ボタンを長押ししてください」

 なんだか噛み合わない会話が展開されたものの、さすがは社長。“何か”に遭遇してしまったときの対応もまるで人ごとのように冷静だ。Tさんが“ばけたん”のボタンを長押しすると鳴り響いていた警告音がぱたりと止んだ。ボタンの長押しとバリアがどういう関係にあるのかはまったくもって不明だが、きっとこれで大丈夫なのだろう。「ポケベルが鳴ったのでアラームを止めたように見える」などと言ってはいけない。“心霊現象”を探知し、“バリア”を張ったのだ

ボタンの長押しでバリアを発動。効きめがあると思いたい

 気を取り直して堤会長が説明を続けようとしたとき、連鎖反応を起こしたようにあちこちで電子音が鳴り響き、「赤だ」「こっちも〜」という声が上がった。河原社長いわく「こんなに赤がいっせいに点灯するのは見たことがない」、いわば“確変”状態だ。ばけたんストラップの説明さえ始まらないうちに騒然となる参加者、夢中でシャッターを切る記者。

 これから回るスポットの歴史的背景を説明して、徐々に雰囲気を盛り上げていく――そのために用意された堤会長の原稿が無駄になってしまったことを気遣う人間は、もはやいなかった。それどころではない。バリアだ、とりあえずみんなバリアモードだ。

 ただしこのバリアモード、考えてみると有効半径は数十センチに満たない気がする。最初にバリアを発動したTさんのすぐ側で別のユーザーのインジケータが赤く変化しているのだ。とすれば、自分の身を守るためには自分が所有する“ばけたん”でバリアを発動させるしかない。しかし記者は撮影に夢中でばけたんストラップを受け取っていなかったのである。こ、これは絶体絶命のピンチだっ! と無理にテンションを上げてみたりもするのだが、実はこの時はまだ余裕があった。

(まあ別にいいや、信じてないし)

 正直に言えば心の中ではそんなふうに思っていた。しかしその矢先、突然カメラが変な挙動を始めた

 まず、シャッターを切ることができない。しかもフォーカスがマニュアルモード(コンティニュアスではない)にもかかわらず、何かにフォーカスしようとしてピンが動き回る。そしてときどき勝手にシャッターが切れる。三脚に立てた状態で操作をしていないのにメカが動く様子は見ていてかなり気持ち悪い。これは本気でヤバイ気がする。まて、落ち着け、雨に濡れたから誤作動してるだけだ、大丈夫だ、いや雨に濡れたら大丈夫じゃねーよ、カメラ壊れたら撮影どうすんだよ、などと軽いパニック状態に陥いる。

 その後しばらくカメラと格闘してふと気付くと、周りには誰もいなくなっていた

 その時、携帯が鳴った。

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