安価に構築できる電脳ナビ「PEC」で海を渡る勝手に連載「海で使うIT」(2/3 ページ)

» 2007年03月20日 21時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 航路標識点や障害物点といった航海に関する「データ」(情報でないことに注意)は航海の安全に関わるだけあって、細かく分類されて収録されている。航路標識点のうち海上に設定される浮標や改修工事が行われている港の灯台(とくに航路を示す小規模なもの)は、追加、廃止、変更などが頻繁に発生するが、PECは海上保安庁の外郭団体が作成してあるだけあって、比較的最近の変更が収録されている。ただし、ENCと違って「Windows Update」のようにパッチを当てる方式でプログラムやデータをアップデートする機能は有していないため、いったん出版されるとその後に発生した変更は反映できない。

 こういう場合や、ユーザーにかかわる局所的な情報(例えば、自分がよく利用する小規模な漁港の港口景観や仕掛けられている定置網の情報など)を随時入力できるようにしてあると便利だ。PECには、このようなときに利用できる「ユーザーポイント」機能が用意されている。ポイントの指定はマウスで場所をクリックするか、経緯度を入力するかで行える。ユーザーポイントにはポイントの名称、メモ、表示アイコンに加えてユーザーが撮影した画像なども登録できるので、入港した漁港の海から見た景観などを記録しておくことにも利用できるだろう。

ユーザーポイント入力画面
設定したポイントはアイコンで表示される。情報を見たいときは「ユーザーポイント照会」メニューを呼び出す必要がある
ユーザーポイントとユーザールートを応用すれば、自分が利用する港の航路ブイや定置網の場所も登録できる

 海図の表示モード設定は多岐にわたる。海岸線などの「線形」情報は表示の色や太さをカスタマイズでき、海図に表示される文字のフォントも種類、大きさともに選択可能だ。線形情報や航路標識などの「点」情報は種類によって表示の可否も設定できる。線の太さや色を変更できるのは、船によって異なる「PCと操船者の距離」カバーして見やすい表示を維持するのに有効であるし、表示できる等深線を指定できることは、海図の表示をスッキリとさせて見やすくするメリットがある。

 しかし、線情報や点情報の障害物点、点情報の表示設定には“膨大な”項目が用意されていて、本職でない、もしくは経験の浅い小型船舶操縦士には扱いが容易でない。一応危険度や重要度の高い項目は「常時表示」とされているが、任意で指定できる項目にも「険悪物」「波浪」「魚網」「定置網」といった、プレジャーボードにとって無視できないものが用意されている。これらをすべて吟味して表示するかしないかの判断を下すのは、かなりの負担になる。

 なお、PECは昼間使用と夜間使用にあわせて表示色を変更する機能を有しているが、その切り替えが「事前に設定している時間」によって“のみ”できるようになっている。一見、気の利いた「自動化」に思えるかもしれないが、日出日没の時間は日々変わるものであるし、それ以前に「明るさ」は気象条件によって大きく左右される。そのときの状況に合わせて昼間表示から夜間表示に切り替えようとした場合、PECでは「ワンアクション」でできるメニューは用意されず、「表示」→「表示モード」→「昼間夜間の時刻設定」→「時刻設定」という階層を手繰らなくてはならないのだ。

線情報(画像左)と点情報障害物点(画像右)の表示モード設定項目

 航海計画で必須となるのがルート設定機能だ。PECには「ユーザールート作図」機能として実装されている。ウェイポイントの指定はマウスでクリックしても経緯度を直接入力しても行えるが、ルート作成作業中に両方の方法を混在することはできない。また、これは評価に試用したPECのバージョンによるのかもしれないが(評価は「東京湾および付近 PEC-01-05」を使っている。2007年3月における東京湾および付近の最新版は「PEC-01-06」)、いったんルート作成作業に入ると「縮小」機能が効かなくなる不具合が確認されている。通常、航路を引く場合、出港するエリアは拡大表示で細かくルートを設定し、沖合いに達したら縮小表示で大きくルートを引き、また入港するエリアに達した段階で拡大表示にして細かい針路を決定する。縮尺機能が使えないためいったん拡大したらあとは延々と海図をスクロールしなければならないため、長距離の航海計画において作業効率がすこぶる悪い。

 マウスでルートを設定しているとき、ウェイポイントを選択する段階でマウスポインタの動きにあわせて、経度と緯度の数値がステータスバーに表示されるが、それよりも、マウスでウェイポイントを設定する場合においてユーザーは「前のウェイポイントから次のウェイポイントへの針路と距離」のほうが知りたい情報であることが多い。PECには「距離計測」という機能が用意されていて、ここで始点を設定してマウスを動かせばマウスポインタの指す場所までの方位と距離が表示される。機能としてはPECに用意されているので、「ユーザールート設定」でも前のウェイポイントから次に設定しようするウェイポイントへの針路と距離を表示できると便利だったろう。

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