中国ネットカフェの“デンジャラス”な宿泊事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/3 ページ)

» 2007年09月10日 08時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

ワレ、中国ベストテンに輝くネットカフェに薄暮突入セリ

 次は、住宅地にあるオフィスビルの2階に構える、「素晴らしい」と評判のネットカフェに潜入した。中国IT系メディアの「電脳報」が中国ベストテンの1つに選んだというそのネットカフェは、なにがどう素晴らしいのだろうか。

 17時に入店。受付でインターネットを使いたい言って10元を出すと、「好きなところに座ってください」の言葉とともにログイン用の情報が記入された紙を渡されて手続きは完了した。昼間利用した店と違って、このネットカフェでは身分証明書の提出や個人情報の記入は一切なかった。

 昼間のネットカフェほどではないものの、やはり広大なこのネットカフェで、筆者は庶民が利用する「一般席」に陣取った。知名度の違うせいか時間帯が違うせいか、昼間のネットカフェよりもPCの稼働率が高い。でも、利用者は男性がほとんどだ。彼らの多くはヘッドフォンをつけて、ゲームや映像コンテンツを楽しんでいた。

 筆者がいすに座ると、すぐに巡回スタッフが紙コップを置いて飲み物を注いでくれた。このサービスが「中国ネットカフェベストテン」たる所以か。ほかにも、PCのレスポンスが昼間のネットカフェより軽快で、デスクトップ画面も利用しやすいように整理されていた。

ネットカフェの受付
繁盛する一般席

スタンドアロンゲーム、オンラインゲーム、チャットソフトと整理されたラウンチャーソフト
インストールされていた海賊版ゲームを起動すると「不良な遊戯を阻止し海賊版を拒絶せよ」という矛盾に満ちた警告が出る

 しばらくすると、隣に3人組の男性がやってきて、それぞれが1台のPCに座った。1人はゲームをし、1人はチャットをし、1人は横のいすに座って寝ている。2時間ほどして2人が遊び終え、寝ている1人に声をかけると、3人は一緒に店を出て行った。なるほど、ログインしなければ無料だから、こういう利用方法もあるわけだ。

 このネットカフェも照明をつけていないので店内が暗い。しかし、外が暗くなり始める時間になってもそのままだ。いつになったら店内は明るくなるのだろうか。そんなことを考え始めたころ、大きな紙を片手に「要点菜」(ヤオディエンツァーイ)と叫びながら巡回する男性スタッフがやってきた。そろそろ夕食時なので食事の注文を取りにきたのだ。男性を呼んでメニューを見せてもらう。ここでは数種類のチャーハンなどの飯類がオーダーできた。

個室ブース。パーテーションにかかっている雑巾が哀愁を漂わせている
中国のチャーハンの標準「揚州炒飯」。5元(80円弱)

使えるかもしれない中国語:出前編

日本文:食事はいらんかねー

中文 :要点菜

発音 :「やお、でぃえん、つぁーい」


 ところで、ネットカフェに設置されている膨大なPCはどのように管理されているのだろうか。今回の記事で紹介するネットカフェのすべてで、「Pubwin」というPCクライアント管理ソフトを導入していた。PubwinはソフトウェアベンダーのHintsoftが開発しており、同社のWebページでも、Pubwinが中国全土のネットカフェに導入されていると紹介している。

 ただ、PubwinはWindows Vistaをサポートしておらず、Windows XP以前のWindows製品とLinuxでしか利用できない。以前紹介したようにネットカフェ向けPCの市場が中国全体のPC市場にとって無視できないほど巨大であるのに、代表的なネットカフェ向け管理ソフトがWindows Vistaに対応していないのは、中国におけるWindows Vista移行を進める上で大きな阻害要因になるものと思われる。

 ちなみに、「Pubwin」で百度を検索してみると、ハッキングのハウツー記事ばかりがズラリと並ぶ。さすがというかなんというか。

 なお、今回訪れたような、ごく普通の地方都市にあるネットカフェのPCでは、中国語しか入力できなかった。日本語は表示できるが入力はできない。しかも、Pubwinでガードされているため利用者はシステム設定を変更することも不可能だ。中国の国際観光都市でない街のネットカフェではリードオンリーのつもりで利用したほうがよいだろう。なお、「リードオンリー」といったが、PDFファイルは中国で普及していないため、ほとんどのネットカフェでAdobe Readerはインストールされていない。そのあたりも注意されたし。

 夜の7時を過ぎて、いよいよキートップの刻印が読めないほどに店内が暗くなったころ、ようやく照明が「半分」点灯し、夜8時ごろには、ようやくすべての照明がついて店内が明るくなった。それまで学生が多かった店内は、仕事を終えた社会人やおじさんたちで占められるようになる。社会人は男女を問わずゲームに興じ、年齢層が高いおじさんたちは気軽に遊べるオンラインのカードゲームに興じている。

 そのうち、「ゲーム大会を行います。参加したい人は……」というアナウンスが店内に流れてきた。こういった、イベントを企画して盛り上げる「企業努力」も、このネットカフェの人気の秘密かもしれない。

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