Leopardへの助走――Mac OS Xの誕生からTigerまで林信行の「Leopard」に続く道 第6回(1/4 ページ)

» 2007年10月30日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]

革命の始まり

 前回まで、前編中編後編に分けて取り上げた“激動の10年”では、アップルがMS-DOS/Windowsとのシェア争いに明け暮れ、数々の構想が泡と消えていった迷走の時代を振り返った。

 いまから10年前の1997年、スティーブ・ジョブズはアップルに復帰していたが、“復興”の2文字が見えるには、ほど遠い状態だった。

 ジョブズのアップル復帰に一時は期待が高まったものの、あいかわらずアップルはパっとせず、そうこうしているうちに当時オラクルのCEOだったラリーエリソン氏から買収を示唆する発言も出るなど依然として危機的な状況が続く(※1)。そして初夏には、ジョブズ自身がアップル株を大量に売却――アップルの先行きに失望したのだろうと噂された。

 その空気が変わったのは翌1998年、初代iMacが発表されたときだ。もはやマイナーメーカーに落ちぶれたと認識されていたアップルが、おそらくそれまでのPC史を振り返っても、最も注目された製品を作った。

 iMacのおかげで、会社がなくなる不安は消えた。しかし、アップルの先行きに関する不安は、依然として残っていた。アップルが21世紀を迎えるにあたって一番大事なのは、プリエンプティブマルチタスクやメモリ保護といった先進の機能を備え、21世紀の進化を支える新世代OSの存在だった。

 この問題に対してアップルが用意した回答が、2001年3月14日にリリースした「Mac OS X」だ。

 この2001年は、アップルが大きく変わった年でもある。Mac OS Xだけではない。まるで何もなかった荒野に高速道路と、鉄道と、摩天楼を同時に築くように、デジタルハブを中心としたデジタルライフスタイル戦略、直営店事業のApple Store、そして初代iPodがいっせいに姿を現したのだ。

 このデジタルライフスタイル戦略は、今日のアップルにとっても中核となる戦略で、アップルはこれを押し進める中、iPodに続きAppleTVやiPhoneといった非PC製品(スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば“post PC製品”)を次々とリリースしていく。

 それにあわせて、創業30年めにあたる2007年1月に、社名の「アップルコンピュータ」から「コンピュータ」を取り、ただのPCメーカーではない、デジタルライフスタイルの会社に生まれ変わった。


 そして先週末、2007年10月26日の午後6時(日本時間)に発売された「Mac OS X 10.5 “Leopard”」は、デジタルライフスタイル総合ブランドに生まれ変わったアップルが放つ、最初のMac OS Xであり、アップルの新しい時代を象徴するOSと言える。

 そう考えると、革命の口火を切った2001年、デジタルライフスタイル戦略とほぼ同時に発表され、「アップルコンピュータ」として開発してきたこれまでのMac OS Xは、「アップル」としてリリースする新時代のOS、Leopardへの助走と呼んでいいのかもしれない。

 この連載第6回では、Leopardに至るまでの助走の歴史を、駆け足で振り返っていく。

※1 記事初出時の「オラクルが買収提案をした」という記述に誤りがあったため、該当部分を訂正しました(「当時そのような噂があったということは認識しているが、オラクルがアップル(コンピュータ:当時)に買収提案をした事実はない」(同社広報))。関係者並びに読者のみなさまにお詫びいたします。

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