ノートPCかスマートフォンか。双頭のマシン「HTC Shift」の正体を見極める(2/3 ページ)

» 2008年05月12日 17時04分 公開
[長浜和也,ITmedia]

SnapVUEの利用方法で頭を悩ます

 HTC Shiftのもう1つの大きな特徴が、1つのボディにWindows VistaマシンとしてのノートPCとWindows Mobileをベースにしたスマートフォンといった2つのデバイスを収納していることだ。HTC ShiftはSIMロックフリー端末として、日本の携帯電話事業者からではなく、HTC Nipponから出荷されるため、ボディに用意されたSIMカードスロットにNTTドコモのFOMAカードかソフトバンクモバイルのU-SIMカードを差せば、NTTドコモ(FOMAカードを差した場合)かソフトバンクモバイル(U-SIMカードを差した場合)が提供しているHSDPA、もしくはW-CDMAの高速データ通信を利用できる。

 NTTドコモやKDDIが運用している高速データ通信に対応したノートPCが、PCメーカーから複数機種登場しているが、PCのOSからこれらの高速データ通信を利用する分には、HTC Shiftも既存の高速データ通信対応ノートPCも使い勝手としてはそれほど変わらない(むしろ、携帯電話事業者が用意しているデータ通信の定額プランを利用できない分、HTC Shiftは不利といえる)。HTC Shiftがユニークなのは、Windows MobileをベースしたOS「SnapVUE」を導入して、「スマートフォン」としてもHTC Shiftを使えるようにしているところだ。

底面の手前と両側面に開けられたメッシュはボディ内部の冷却に用いられる外気の取り入れ口と排気口だ。HTC Shiftはクーラーファンを内蔵しており、ベンチマークテスト中は風切り音がそれなりに聞こえていた
底面からバッテリーパックを外すとその右奥にSIMカードスロットが用意されている

 ノートPCにSIMカードスロットを用意して高速データ通信を使う場合、Webサービスを利用できるのはPCが起動しているときに限られる。多くの場合、PCをスタンバイ、または、休止状態にしている間は、メールが送られてきても対応できない。また、PCに保存してあるスケジュール、連絡先、メールなどを参照するときも、PCを復帰させなければならない。SnapVUEを導入しているHTC Shiftでは、「スマートフォン」としての機能を独立させることで、PCをシャットダウンにしておいてもボディに用意されたSnapVUEボタンを押せば、SnapVUEの画面が表示されて、即座に各種データにアクセスが可能になる。

 SnapVUEは、先ほども少し触れたようにWindows Mobileがベースになっている。「予定表」、「連絡先」、「仕事」、「メール」、「SMS」といった、Windows Mobileでも用意されていた情報管理ツールのほか、週間天気予報をサーバから取得して表示するユーザーインタフェースも提供している。扱えるメールはSMSとPC用メールのアカウントに限られる。SIMロックフリー端末であるため、MMSは使えず「PC用アドレスに届いたメールをスマートフォンのMMSに転送する」というような技は使えない。その代わりに、HTCが用意した「DirectPush」サービスではPCにメールが届いた時点でSMSに着信を告知してくれる。メールの着信を知るタイミングとしては、MMSに転送する方法とそれほど変わらない。

SnapVUEの“ホーム画面”
週間天気予報をWebサーバから取得して表示するプラグインも備えている

 いま紹介したように、SnapVUEではスケジュールや連絡先などの情報を扱える。ベースはWindows Mobile用のツールなので、PCのOutlookと共有できそうに思えるが、SnapVUEが扱えるデータストレージがPCから完全に独立しているため、同じボディにありながらデータは共有できない。PCのOutlookとSnapVUEのデータの共有方法としてHTC Nipponは「Exchange Server」の利用を提案しているが、個人利用の場合はオンラインソフトなどを使って自力でExchange Server相当のサービスを構築する必要がある。

 なぜ、ここまでPC側とSnapVUE側を独立させているのか(正確にいうならば、SnapVUEを鎖国状態に“設定”してしまったのか)、その趣旨は理解しがたいところであるが、幸いなことに、Windows Vista BusinessマシンとしてHTC Shiftを使っている状態でも、SnapVUEはすぐに呼び出せる。液晶ディスプレイベゼルの左下隅に設けられた専用ボタンを押せば、タイムラグなしにSnapVUEを呼び出せるので(全画面切り替えとなってしまうが)、スケジュールや連絡先、メールの管理をSnapVUE側に一括してしまうという、思い切りのよさがあってもいいかもしれない。

 ただ、Outlookと似ているとはいえ、SnapVUEで使う各種ツールの使い勝手はそれなりに制約があるので、それとデータの整合性をはかりに掛けて判断するようになる。扱うデータの量が少なく、入力する機会がそれほど多くないのであれば、SnapVUEに統一するのも「あり」ではないか、というのが筆者の感想だ。

SnapVUEで用意された「予定表」の編集画面
同じくSnapVUEで用意された「仕事」の入力画面。その使い勝手はWindows Mobileの同名ツールとほぼ同じだ

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