第7回 光ディスクの製造工程 その3──順積み方式による2層ディスクの作り方 新約・見てわかる パソコン解体新書(2/3 ページ)

» 2008年05月13日 17時13分 公開
[大島篤(文とイラスト),ITmedia]

2層ディスクの製造工程

 前回解説したように、1層のDVDディスクでは、厚さ0.6ミリのポリカーボネート基板を射出成形機で作っていました。ところが、2層ディスクの中間層は、その10分の1以下という大変に薄いものなので、射出成形機で作ることが不可能です。この薄い中間層をどうやって作るかが、2層ディスク製造上の大きな注目点です。

 それでは、2層DVDディスクの製造工程をステップごとに見ていきましょう。

1.マスター基板の製造

 まずは0.6ミリ厚のマスター基板を用意します。2層ディスクのマスター基板も、1層ディスクのマスター基板とまったく同じもので、スタンパーを装着した射出成形機を使って作られます。

 DVD-RおよびDVD-RWのマスター基板の表面には、次の図のようなグルーブが形成されています。


2.記録層と半透過反射層の形成

 マスター基板のグルーブ上に、記録層と半透過反射層を形成します。記録層は、DVD-Rの場合は有機色素をスピンコート法で薄く塗布し、DVD-RWの場合は数種類の合金をスパッタ法で積み重ねて記録層を形成します。

 半透過反射膜は、記録層の上に金や銀などの金属の膜を、スパッタ法で形成したものです。金属の膜は、その膜厚で透過率を制御できます。


3.中間層の形成

 2でできあがったL0記録層と半透過反射膜の上に、紫外線(UV)硬化型の液体の樹脂を滴下し、スピンコート法でディスク全面に塗り広げます。

 次に、塗り広げた未硬化状態の紫外線硬化型樹脂の上に、樹脂スタンパーというものを重ねます。この樹脂スタンパーはマスター基板と同様に、金属のスタンパーを装着した射出成形機で作られたディスクで、その表面にはグルーブが形成されています。


4.中間の硬化

 樹脂スタンパーの上から紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂を硬化させます(樹脂スタンパーは透明で紫外線を透過します)。

 なお、樹脂スタンパーを重ねるときと、紫外線の照射は、ディスクをスピンさせた状態で行います。そうすることで、紫外線硬化型樹脂と樹脂スタンパーの間に気泡が入ることを防ぎ、また樹脂の膜厚を均一にできるのです。


5.樹脂スタンパーのはく離

 紫外線硬化型樹脂が硬化したら、樹脂スタンパーをはく離させると、薄い中間層のできあがりです。このはく離が容易になるように、中間層用の紫外線硬化型樹脂には、樹脂スタンパーには接着せず、半透過反射層にはよく接着する性質のものが使われます。

 樹脂スタンパーをはく離した後の中間層の表面には、下図のようにグルーブが形成されています。


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