セイコーエプソンとエプソン販売は7月4日、北海道の千歳事業所においてエプソングループの環境活動に関する説明会を開催。報道関係者に向けて、環境への取り組みや長期的な指針を説明するとともに、7月1日から10日まで開催されている「J8(ジュニア・エイト)サミット千歳支笏湖」への支援内容も紹介した。
なお、同日には報道関係者向けに同事業所の高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPSパネル)製造ラインも公開された。HTPSパネルの製造に関しては、別の記事で紹介する。
エプソンの環境活動については、セイコーエプソン 経営戦略室 信頼経営推進部(環境担当)部長の田中規久氏が解説。1988年にフロンレス活動を開始してから、1993年に洗浄用特定フロンの全廃、1998年にエプソンリサイクルセンサーを設置するなど、今日に至るまでの全社的な環境活動を振り返った。
また田中氏は、エプソンの技術の根源は「“省”の技術」、つまり省エネルギーと省資源にあるとし、例として、セイコー時代のクオーツ式置き時計や腕時計の開発による省資源化、プロジェクターとプリンタにおける消費電力の削減による省エネルギー化を挙げた。プロジェクターの明るさ100ルーメンあたりの消費電力は10年間で10分の1に、インクジェットプリンタの1日あたりの消費電力は4年間で73%の削減を達成できたという。
そして、エプソンの環境への取り組みを支えるコアテクノロジーとして強調されたのが、インクジェットプリンタでおなじみの「マイクロピエゾテクノロジー」だ。インクジェットプリンタのプリンタヘッドは、サーマル方式とマイクロピエゾ方式の2つがあり、エプソンは一環して後者を採用し続けている。サーマル方式は、ヒーターの加熱でインクを沸騰させ、このとき発生した気泡の力でインクを吐出する仕組み。マイクロピエゾ方式は、電圧をかけると変形するピエゾ素子を利用し、機械的な加圧力によってインクを吐出する仕様だ。
エプソンはマイクロピエゾ方式のメリットとして「インクの液滴サイズや着弾位置などを精密に制御できる」「吐出できるインクの選択肢が広い」「インクを吐出するプリンタヘッドの耐久性が高い」の3つを挙げており、田中氏はそのメリットを「必要な時に、必要な量を、必要な場所へ吐出できることから無駄がなく、プリンタ以外にも応用できる」と語った。
実際、マイクロピエゾ方式はプリンタに限らず、液晶パネル製造のカラーフィルタ生産や配向膜形成にも活用されており、回路基板の製造においてはフォトリソグラフィー方式と比較して不要部分のはく離処理が不要で、作業工程を減らせることから、廃棄物を削減できるとしている。「マイクロピエゾテクノロジーは、将来的には製造ラインをより小型化して、環境への負荷を最小限に抑えることも可能な技術だ」(田中氏)
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