価格帯が異なることもあって、GeForce GTX 280はすべてのベンチマークテストにおいて抜きんでた結果を示している。先日掲載したRadeon HD 4850のレビュー記事で、笠原氏が「NVIDIA製最新鋭GPUと渡り合うのは、AMDによると8週間以内に出荷が計画されているR700(開発コード名、RV770を2チップ採用したハイエンド向けGPU)や、まもなく出荷開始されるとみられているRadeon HD 4870であって、これらのリリースを待つ必要がある」と述べているように、これから登場するとAMDが予告しているR700がGeForce GTX 280と競合することになるだろう。
同じようにRadeon HD 4850の結果がほかの3GPUから離されてしまうのもやむを得ないところだろう。ただ、このベンチマークテストの結果で示される明らかな違いとユーザーの人気が一致していないことについては、後で触れておきたい。
NVIDIAとAMDのGPUラインアップで競合するのは、GeForce GTX 260とRadeon HD 4870となる。両者の結果は、ほとんどのベンチマークテストで拮抗している。F.E.A.R.では重負荷条件でRadeon HD 4870はGeForce GTX 260に大きく離されるものの、軽負荷条件と2560×1600ドットの超高解像度では逆にRadeon HD 4870が上回る。重負荷条件でRadeon HD 4870が優勢になる傾向はCrysisと3DMark06の3DMark Scoreでも確認された。
同じ3DMark06では、HDR/SM3.0テストの低解像度(1600×1200ドット)でGeForce GTX 280に迫り、Perlin Noiseテストの結果では完全に超えている(なお、Unreal Tornament 3の結果で、ほかで報告されているベンチマークテスト以上の大きな差が出ているが、繰り返し測定してもこの傾向は変わらなかった。そのため、この結果は参考記録として扱っていただきたい)。
ベンチマークテストの結果は、GeForce GTX 280が他を圧倒し、GeForce GTX 260とRadeon HD 4870が横並び、離されてRadeon HD 4850という序列になっている。GeForce GTX 280とRadeon HD 4850がそうなるのは、「実売価格相当」といえるが、横並びのGeForce GTX 260とRadeon HD 4870はそうもいえない。
特に問題なのはGeForce GTX 260だ。2008年7月下旬の時点でRadeon HD 4870を搭載したグラフィックスカードの実売価格は3万円台後半から4万円弱であるのに対して、GeForce GTX 260は4万円台後半から5万円前後に分布している。そうなると、ユーザーはRadeon HD 4870を選ぶことになるのは自然の流れだろう。
また、パフォーマンス(ベンチマークテスト結果の絶対値)を重視するユーザーには、2枚のRadeon HD 4870を購入していくケースも多いと聞く(+D Shoppingで調べたRadeon HD 4870搭載グラフィックスカードの価格はこちら。同じように、GeForce GTX 260を搭載したグラフィックスカードの価格はこちら。なお、参考までにGeForce GTX 280の価格はこちらで、Radeon HD 4850の価格はこちら)。Radeon HD 4800シリーズの消費電力がGeForce GTX 200シリーズに比べて明らかに少ないこともユーザーに受け入れられる要素となる。
「理論先行」のイメージが強かったAMD(ATI Technologies)のRadeonであったが、Radeon HD 4800になってようやく理論に製品が追いついてきた。実際、製品の立ち上がりからユーザーの評価は高く、売り上げも好調だという。業を煮やしたショップがGeForce GTX 200シリーズに限定価格を付ける事態にまでなっているのは、PCUSERでも報道したとおりだ。
Radeonがこのまま盛り返していくのか。それともGeForceが「戦略価格」で派生モデルを投入して反撃に転じるのか。この夏のGPUマーケットは面白い、いや、買う側と売る側にとっては悩み多い季節になりそうだ。
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