“黒くて円いVAIO”はリビングPCの新境地を開くか?――「VGX-TP1DQ/B」徹底検証(前編)地デジ機能を大幅強化(1/4 ページ)

» 2008年08月06日 11時00分 公開
[都築航一,ITmedia]

円形VAIOの最新モデルはどうなっている?

「TP1」シリーズの最新モデル「VGX-TP1DQ/B」

 ソニーのテレビサイドPCこと「TP1」シリーズは、リビングや書斎のテレビをディスプレイとして使うことを想定した、テレビ録画機能付きのデスクトップPCだ。初代モデルは2007年1月に登場し、一見PCとは思えない斬新な白くて円いボディで注目を集めた。

 TP1はいわゆる“リビングPC”ということで、テレビ視聴・録画機能を重視している一方、ハイスペックなセパレート型PCほどの性能と拡張性はなく、ノートPCのような携帯性も備えていない。つまり、ユーザーにとっては、単なる「PC+レコーダー」を超えた機能や使い勝手を実現しているかどうかが選択のポイントになる。

 ここでは、7月5日に発売された今夏モデルの中から、店頭販売中の上位機「VGX-TP1DQ/B」(実売20万円前後)について、前モデルから一新されたテレビ機能の使い勝手を中心にリポートし、TP1ならではの魅力を探っていく。今夏モデルの概要については、既報のニュース記事を参照してほしい。

従来モデルを踏襲した基本スペックながら十分快適

底面に2基のSO-DIMMスロットを用意

 まず、VGX-TP1DQ/Bの仕様をポイントだけおさらいしておこう。HDDは容量をかせぐためにデスクトップPC用の3.5インチタイプだが、CPUやチップセット、メモリ、光学ドライブなどはノートPC用のパーツを積極的に用いており、リビングに置くPCらしく、本体の小型化、省電力化、静音化に配慮している。

 Core 2 Duo T8100(2.1GHz)を採用したCPUや、Intel PM965 Expressチップセット、GeForce 8400M GT(グラフィックスメモリ256Mバイト)をおごるGPU、7200rpmで500GバイトのSerial ATA HDD、Blu-ray Discドライブといった、PCとしての基本スペックは今春モデルの「VGX-TP1DTW」と同様だ。

 ただし、2Gバイトのメインメモリは、1Gバイトモジュール2基から2Gバイトモジュール1基の構成に変更されており、最大容量の4Gバイト(2Gバイト×2)に拡張する際に、初期搭載のメモリモジュールを無駄にすることがなくなった。底面のネジ止めされたカバーを外すと、2基のSO-DIMMスロットが現れるので、購入時に空いている1基のスロットに2GバイトのPC2-5300モジュールを装着すれば、4Gバイトまで増やせる。

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア

 Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアを見ると、最も低いメモリが5.0で、プロセッサが5.1、グラフィックスが5.9(ゲーム用グラフィックスは5.3)、プライマリハードディスクが5.7と高いレベルでバランスがとれており、高度な3Dグラフィックス性能を求めるゲームタイトルのプレイこそ難しいが、テレビとレコーダーとしての機能を中心に使うならば十分なスペックといえる。

 ただし、地上デジタル放送を大量に録画することを考慮すると、データストレージについては不安も残る。2層BD-R/REの書き込みに対応したBlu-ray Discドライブの記録速度が、スリムドライブのために控えめ(1層BD-R/REが2倍速、2層BD-R/REが1倍速)なのは仕方ないとしても、500GバイトというHDD容量には心もとなさを感じるユーザーもいるだろう。

 ソニー直販のVAIOオーナーメードモデル「VGX-TP1QS」ならば、1TバイトのHDDも選択できるので、より大容量のHDDを求める向きはこちらも検討したい。現状で500Gバイト選択時との価格差は2万円だ。逆に、直販モデルで機能を絞って安価に購入したい場合、店頭販売中の下位モデル「VGX-TP1D」(実売15万円前後)が、テレビ機能付きの最小構成とほぼ同等になる。これより安価で購入するには、テレビ機能を削るしかない。

前面のカバーをスライドさせて開くと、2基のUSB 2.0、4ピンのIEEE1394、メモリースティックPRO対応スロット、SDメモリーカード(SDHC)対応スロット、IEEE802.11b/gの無線LANスイッチ、キーボード接続スイッチが現れる(写真=左)。背面には、2基のUSB 2.0、ヘッドフォン、マイク、角形の光デジタル音声出力、HDMI出力、アナログRGB出力、100BASE-TX有線LAN、B-CASカードスロット、ACアダプタ接続端子などが並ぶ(写真=右)

リビングのAV機器は黒が多い、ならばTP1も黒くていい

 TP1といえば、デスクトップPCらしからぬ白くて円いボディ形状が特徴の1つだったが、今夏モデルでは上位機(つまり今回取り上げるVGX-TP1DQ/B)のボディカラーが黒に変更された。起動直後には電源ボタンの周囲がほの白く光るなど、動作中の様子もなかなか美しい。何より、一見ではPCと分かりにくいスタイルのため、リビングの中心的存在であるテレビの近くに設置するにも、抵抗感が少ないのがポイントだ。

 今回はさらに黒モデルの投入により、テレビやレコーダーなど黒系のカラーが多いAV機器と同様の色調にそろえたいユーザーの希望にも応えている。なお、下位モデルは従来通りのホワイトボディを採用。VAIOオーナーメードモデルでは、ホワイト/ブラックのうち好みの色を選択できる。

直径270ミリ、高さ91ミリの円形ボディはTP1ならではの特徴だ(写真=左)。重量は約3.5キロと軽い。動作中は、円形のラインに沿って、電源やHDDアクセス、無線LANのインジケータが光る(写真=中央)。背面にはマグネット式のカバーが装着され、煩雑なケーブルの配線が隠れるようになっている(写真=右)

 いくらデザインがよくても、排気ファンなどの動作音が大きいとリビングには置く気になれないが、今回試した限りでは、モバイルプラットフォームの採用が功を奏してか、静かな書斎で深夜に利用しても、隣室で寝ている家人を起こさずに済む程度に抑えられていた。

 ただし、冷却ファンやHDDといった駆動部が発する振動は、動作音が静かなだけに気になるユーザーがいるかもしれない。静音性にこだわるならば、ビビリの少ないテレビラックに設置するなどの工夫が必要だろう。

 キーボードやマウスなどの入力インタフェースは、タッチパッド一体型のワイヤレスキーボードとレコーダー風の赤外線リモコンが付属。本体から離れてくつろいだ姿勢で使いやすいように工夫している。机上で使うことが前提となるマウスはあえて省いた構成だが、ちょっとしたマウス操作にもワイヤレスキーボードを使う必要があるのは好みが分かれるところだ。

 もっとも、キーボードはA4ノートPCの入力部分だけをまとめたようなコンパクトな形状で持ち運びがしやすく、ソファなどに座ってヒザの上で操作するにも無理がない。キーボードと本体はデジタル無線方式で接続され、通信距離は最大で約10メートルと長めだ。キーボードとリモコンはもちろん、本体と同一色のものが付属する。

付属のワイヤレスキーボードは10キーがないコンパクトタイプながら、タッチパッド、ズームボタンや2つのプログラマブルボタン、FeliCaポートを搭載した多機能なものだ(写真=左)。キーボードは単三乾電池4本で駆動し、乾電池収納部のふくらみがチルトスタンドの役割を果たしている(写真=中央)。付属の赤外線リモコンもきちんと黒で統一されている(写真=右)。TP1本体の前面にあるSONYロゴの下に、赤外線受光部が内蔵されている

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