インタビュー
» 2011年06月16日 15時22分 公開

「Evernote Peek」人気を支えた、日本の寿司とお茶の話EvernoteのCEOが語る(3/4 ページ)

[林信行,ITmedia]

Evernote、製品ライン拡充の第一歩

―― ほかにも何かこんなことに使えそうだ、っていう活用方法はありますか?

リービン 取引先の人の名前と顔を入れて覚えるようにする、といったノートも作れそうだし、最近、急拡大中の我が社の社員の名前と顔のノートも作ろうと考えている。そうすれば新入社員も助かるだろうからね。あと、Evernoteのチップスを入れたノートも作ろうかな。

 機能については、まだ言えないけれど、いくつかこれまで誰もやったことがないようなアイデアがいくつかあるので、今後、追加していこうと思っている。

 でも、そうやって製品の拡充を考える一方で、どこかで「やり過ぎはよくない」ということも非常に気にとめているんだ。我々は、このプロジェクトにどこまで深く足をつっこむべきか、っていうことにね。

 そもそもが非常にシンプルなアイデアのアプリケーションだし、今後ここに100や200の新機能を追加して拡充なんていうことはないはずだ。そんなことをしたら、そもそものシンプルなよさがなくなってしまう。

―― 「道を踏み外したり、やり過ぎたりしていないか確かめながら、1000個のアイデアに『No』と言う」……スティーブ・ジョブズみたいですね(笑)

 ところで、今回のPeekのリリースは、今後Evernoteが、これまでのEvernote以外にも提供アプリケーションを拡充して行く、という第一歩なんでしょうか。

リービン その通り。おそらく年末までに4〜5本のアプリケーションをリリースする。リリースするアプリケーションはすべて相互に関連し、記憶、知識、インテリジェンスといったことをテーマにしているはずだ。これらがリリースされれば、Evernoteというのが、ただの情報ストレージや同期のサービスを提供する会社ではないことが、より多くの人に理解してもらえると思っている。

 Peekはシンプルなだけに、ラインアップ拡充の出発点として理想的なアプリケーションだった。現在、開発中のほかのアプリケーションには、非常に大掛かりなものもあるんだ。

―― Peekはそもそも、ユーザー層を絞っていて、iPad 2専用ですしね。

リービン おっしゃる通り。ただし、この製品のデザイン哲学は特筆に値すると思う。

 アプリケーションの開発中に、社員から「ちょっと細工をして、これをiPadでも動くようにしたほうがいいんじゃないか」という提案が出た。スマートカバーなしでも利用できるようにする、という提案だ。しかし、我々はそれをやめた。なぜなら、万人にこびを売って、あれもこれもとやってしまうと、製品として“弱く”なってしまうと思ったからだ。

 我々は、まず何よりも、最高のエクスペリエンスを作ることに注力した。そのためにはiPad 2とスマートカバーの組み合わせが必須だった。だから、より多くのユーザーを獲得することはあきらめた。じゃあ、この組み合わせを持っていない人はどうすればいいか? ほかにもフラッシュカードのアプリケーションはたくさんあるので、そっちを使ってもらえばいい。

 私はこれはこれで正しいデザイン哲学だと思っている。もしかしたら、これがきっかけでiPad 2とスマートカバーを買う人が増えるかもしれない。実際にApp Storeのコメントを見ても「スマートカバーはいらないと思って、買わなかったけれど、Peekをダウンロードして買うことを決めた」といったコメントも見かけた。

 もしかしたら、いずれユーザーにスマートカバーを配る、なんていうこともできたらいいかもしれないね。実は最近、1000万ユーザーを達成した記念に、社員全員にiPad 2を支給したところなんだ。

―― このアプリケーションは確かに、これまでではめずらしい、完全にハードと一体化したアプリケーションですよね。

リービン ハードとソフトの一体化か……確かにそうかもしれない。この製品が実現したのは、アップルのすばらしいデザイン哲学のおかげだ。

 我々がこのアプリケーションを作ることができたのは、iPad 2の寸法が数分の1ミリ単位で決まっていて、スマートカバーの折れ目がくる位置もピタリとあわせることができるからだ。残念ながら、これと同じことはAndroidではできない。なぜなら種類があり過ぎるからね。

 スティーブ・ジョブズ氏がPeekを見ていてくれるといいな、って思っている。彼らは我々を気に入ってくれているみたいで、WWDC 2011の基調講演でも、OS X Lionの紹介場面などで、たびたびEvernoteのアイコンが登場したんだ。

―― ああ! 覚えています。Mac AppStoreのインストールのデモにも使われていましたよね? あれは事前に話があったんですか?

リービン いや、まったくなくって、我々にとってもいいサプライズだった。うれしかったよ(笑)。

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