日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は8月29日、東京都江東区大島にある日本HP本社内に「Imaging & Printing Solution Center」(以下、IPSC)を開設した。製品展示だけでなく、紙や素材の選定、カラーマッチングなど、印刷前後の工程まで含んだデモを行うことで、パートナーとソリューションの検証をしていくのが狙い。営業時間は月曜日から金曜日まで(祝祭日は除く)の完全予約制となっている。
広さ400平方メートルの敷地に設置された同センターは、大判プリンタを展示する「Designjet Zone」、最大5メートル幅の印刷に対応したスーパーワイドフォーマットプリンタのデモを行う「Scitex Zone」、そしてデジタル印刷機とその商品サンプルを置く「Indigo Zone」の3つに区切られている。
Designjet Zoneでは、CAD向けのテクニカルモデルから写真印刷向けのグラフィックモデルまで、大判プリンタの全ラインアップを常設。A1サイズで約17秒という高速印刷を可能にした「HP Designjet T7100」や、大判モデルにスキャナを搭載しつつ100万円以下という価格に抑えた「HP Designjet T2300eMFP」、高速かつ画質を落とさずに印刷できる「HP Designjet Z6200」など、最新の大判インクジェットプリンタを一堂に会しているのが見どころだ。
屋外広告やバスのラッピングなどに利用されるスーパーワイドフォーマットプリンタを展示するScitex Zoneでは、最大3.2メートル幅までプリントできる主力モデルの「HP Scitex L850」が置かれている。6色の「HP Latexインク」を採用し、屋外利用でもラミネートなしで3年という高い耐光性を持つほか、特別な換気装置を必要としないのが特徴だ。最後のIndigo Zoneは、「オフセット印刷に迫る品質を実現した」(同社)というデジタル印刷機「HP Indigo 7500/5500」が設置され、商業印刷やパッケージなどのさまざまな商品サンプルとともに、デジタルデータから最終出力までのワークフローを体験できる。
オープン初日のIPSC見学会では、日本HPイメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏が、同社のプリンティング事業戦略について解説した。
挽野氏はプリンティング事業に影響を与える最近のトレンドとして、「コンテンツの急増」「モバイル端末の拡大」「アナログからデジタルへ」「サービス型ビジネスモデルの拡充」を挙げ、これに対応する同社の取り組みとして、PCを使わずにプリンタ単体でクラウドサービスと連携する「ePrint&Share」や、デジタル写真のWebプリントサービス「snapfish」、クラウドベースの雑誌出版システム「MAGCLOUD」(米国で展開)などを紹介。加えて、HPは世界シェア第1位のPCメーカーであると同時に、200以上のデータセンターを管理する巨大なITカンパニーであり(同社によると、年間35億以上のクレジットカード決済を処理し、毎年5億件のオンライン旅行予約処理を行っているという)、ITとプリンティングの双方でソリューションを展開している点に強みがあるとアピールした。
日本HPによれば、全世界でプリントされる総ページ枚数は52.4兆ページ/年に上る。このうち90%の47.5兆ページはプリントサービスプロバイダーがカバーする領域になるが、そのほとんどはオフセット印刷に代表されるアナログ印刷が主流であり、デジタルの比率はわずか5%以下という。同社は前述したsnapfishなどで、個人ユースの印刷機会を最大化するサービスを展開する一方、小ロットでも対応できるデジタル印刷機をオフセット印刷の代替として推進することで、プリンティング事業の拡大をめざす構えだ。
挽野氏は「国内でも金額にすると5兆円(78円換算)規模の市場がデジタル化を待っている。現在、アナログからデジタルへ大きく転換している。このビジネスを拡大するためにもうけたのがIPSCだ。デジタル印刷事業のプレイヤーではNo1を確固たるものにしていく」と語った。
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