東京ビッグサイトで開催中の環境展示会「エコプロダクツ2011」(2011年12月17日まで)で東芝テックが消せるトナーを採用した複合機と、印刷物の消色装置を展示している。用紙を再利用することにより、オフィスで使用する紙の量を減らすことが目的だ。
この消せるトナーは熱を加えると、トナーの色素粒子が透明になるという仕組み。専用トナーを用いた複合機で印刷したあと、消色装置に用紙を通すとインクが透明になり、印刷前のような状態に戻る。ただし樹脂は用紙上に残るため、消色処理後でも光の反射でうっすらと印刷のあとは視認できる。
“こすると消えるボールペン”として有名なFRIXIONを製作するパイロットと共同でトナーを開発した。原理は似ているが、透明になるための温度が大きく異なる。「FRIXIONのインクが透明になるのは60度程度。このトナーは(企業秘密のため明確に答えられないが)少なくとも100度以上。普通に使っているぶんにはまず消えることはない」(説明員)
この消せるトナー自体は、2003年に発表されていたが、消色に時間がかかる、消色処理後に紙に色が残ってしまう、などの理由であまり普及しなかったという。
2010年よりパイロットと協力してトナーを開発するようになったことで、トナーの性能が向上したほか、消色装置で印刷を消す前にクラウド上にデータを送信し、タブレット端末やPCで閲覧するというシステムを構築したことで、実用に耐えうる製品となった。東芝テックが提案する用紙再利用のシステムは、地球温暖化防止に大きな効果があると期待され、2011年12月14日に「地球温暖化防止活動環境大臣賞」を受賞した。
同社の企業向け複合機「e-studio」に消色装置が付属するのは、2012年の秋ごろを予定しているという。価格は未定だが、消せるトナーの価格は、標準的なトナーよりも高いという。「我々が目指すのは、あくまでトータルコストを下げること。トナーが高いのでランニングコストは上昇するが、用紙の消費量が減ることで、トータルコストでは効果が出る」(説明員)
ブース内の展示では、用紙の再利用を行えば、排出される二酸化炭素の量は60%程度減少するとアピールしている。「新しい複合機を作る方が、一見二酸化炭素を排出すると思う人も多いが、それ以上に紙の製造がはるかに二酸化炭素を排出している」のだそうだ。
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