さて、肝心のサウンドはどうだろう。
まずはコンパクトタイプのDN-80646から。これがなかなかいい。プレーヤーには第3世代iPod touchを使用したが、あってもなくても大きな差がない安物ポアタンとは異なり、ダイナミックさも解像度感も、(標準イヤフォン端子出力に対して)明らかなグレードアップが感じられる。特に階調が豊かでていねいな、きめ細かいニュアンス表現が好印象だ。演奏が情緒的に感じられる。
音色は、柔らかい聞き心地で、ていねいな再生を重視した方向性なので「音質の向上とともに、聞き心地のよいタイプがほしい」と思っている人に向くと思う。いずれにしても、1万2999円とほどよく購入しやすい価格帯なので、初ポータブルアンプの人にも勧められる。
続いてハイパワータイプのDN-80647は、パワー感がとてつもないレベルだ。SHURE「SRH1840」ばかりか、AKG「Q701」ですら存分に鳴らし切れる。これは、前述したDN-80646も含めた一般的なポータブルアンプではまず不可能な領域で、DN-80647ならではの高い駆動力が光る。
これだけでも十分に魅力だが、そのサウンドもまた見事だったりする。音色はストレートなタイプで、入力された信号を歪みや変調なくそのまま増幅する傾向だ。それだけに収まらず、余裕のある駆動力を生かして、帯域バランスのよい、かつ幅広いダイナミックレンジを持つ抑揚豊かなサウンドを聴かせてくれる。おかけで、演奏にかなり迫力が出るうえ、リアル感も高くなる。このサウンドクオリティを屋外でも通勤中でも楽しめるのは、とても喜ばしいことである。
ただ、音のダイナミックさに対し、少しバランスの悪いSN感の低さが気になった。これは入力側のオペアンプのせいかもしれないと考え、手元にあったBurr-Brownの高精度オペアンプ「OPA277」に付け替えてみたところ、ノイズレベルがかなり改善されてSN感のよいサウンドに変わった。ただし、少しカリカリしたサウンドに感じられるようにもなったため、完ぺきではない。相性のよいオペアンプはもっとほかにもあるのだろう。交換ソケットを備える仕様の本機は、こういったオペアンプ差し替えによるカスタマイズが行えるのも楽しい。
さらに、出力側のバッファアンプをスタック化(チップを複数個装着する方法)、またはBW駆動化(アイドリング電流を上げる方法)して、さらにクオリティアップを図ってみるのもおもしろそうだ。高インピーダンスのハイクラスヘッドフォンをモバイル環境でも活用したい人のほか、自作ポアタンには興味あるが、工作やハンダ付けなどが不安で手が出せなかったという人のステップアップ用などにも遊べる・楽しめる製品である。
音質評価 | 「DN-80646」 |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−−○きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−○−−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−○−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−−○−質感重視) |
音質評価 | 「DN-80647」 |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−−○−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−○−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−○−−質感重視) |
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