「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心(1/5 ページ)

» 2026年06月10日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]

 6月8日(現地時間)、Appleの年次開発者会議「Worldwide Developers Conference」(WWDC26)が開幕した。WWDCは、世界中のアプリ開発者に向けてAppleが毎年開くイベントで、その年のiPhoneやMacの新OSの方向性が示される場でもある。

 さまざまな発表が行われたが、まずは筆者が気になった部分として次世代の「Apple Intelligence」と「Siri AI」を取り上げたい。一体、どんなことができるようになるのだろうか。

 まずはMacを使ったデモだ。Macの画面に映した3社のリフォーム業者の見積もりをマウスで選択し、MacでSpotlightの検索欄を表示させて、以下のようにタイプする。

 「これらを比較して、どれがいいか選んで」

 するとMacは、これがSiriへのお願いだと理解して、書式もバラバラで人間が見比べるのも面倒な見積もりを、即座に表形式に整理して表示してくれる。

 同様に「Luke(息子)が学校で何か電気系のトラブルに遭ったようだ。誰ならそれを解決できる?」とタイプする。するとSiriはメッセージとメールを横断的に検索し、息子からどんな連絡があったのかを探し出す。

 仮にタイプミスがあっても正しく解釈し、見つけた情報を基に答えを返してくる。さらには「選んだ業者に納期を早められるか丁寧に問い合わせるメールを下書きして」と指示すれば、Siriが業者の名前とメールアドレスを抜き出し、なぜその業者を選んだのかを示し、納期短縮を打診する文面をゼロから書き上げてくれる。

 もう1つ印象的だったのが、写真編集の「Spatial Reframing」(空間リフレーミング)だ。子どもの記念写真で子どもたちが横を向いてしまっていて、後悔した経験は誰しもあるだろう。

 新しいPhotosアプリでは、Apple Intelligenceが平面の写真を解析し内部で立体化することで、指で触れてドラッグして被写体の向きを後から変えられる。まるで映画「ブレードランナー」のようではないか。

 デバイス上の空間モデルとPrivate Cloud Compute上の画像生成モデルが連携し、視点をずらして生じた隙間の部分にだけ新しい内容を生成する仕組みだという。

 これらは2027年以降利用可能になる、進化したApple Intelligenceの機能の一部だ。

異なるフォーマットで書かれた見積書(左)が3つある。それらのファイルアイコンを選んで「この内容を比較して」とSpotlightにタイプする(中央)。すると比較表が生成される(右)
カメラの方を向かず、違う方向を見てしまっている子どもの写真。Apple Intelligenceが立体として認識し、後から被写体の向いている角度をある程度までなら変えられる空間リフレーミング機能は、技術的にはすごそうだ。しかし、これまでどの程度、AIで加工していいかに対して慎重だからこそApple製品を選んできた人たちの間では議論を呼びそうだ

WWDC26が描いたAppleの「AI再起動」

WWDC26の最大の目玉は、アーキテクチャーが刷新され全Apple製品に搭載されることになった新しいApple Intelligenceと、その顔役となる機能「Siri AI」だ。一見するとその名前の通り昔からの「知り合い」のようだが、中身は大胆に進化している

 今回の発表の主役は、多くの人が予想した通りAIだった。Appleは次世代のApple Intelligenceと、新バージョンのSiriである「Siri AI」を発表した。同時にiOS 27/iPadOS 27/macOS 27/watchOS 27/visionOS 27/tvOS 27という各プラットフォームの大型アップデートや、子どもを守るための強化されたペアレンタルコントロール機能も披露された。

 他の機能についても追って紹介したいが、この記事ではApple Intelligenceを中心に解説を行いたい。

 ここで思い出しておきたいのは、Appleが2024年にApple Intelligenceを発表して以来、特にパーソナルコンテキストを理解する高度なSiriの実現が遅れ、批判を浴び続けてきたという経緯だ。

 今回のWWDC26は、その仕切り直しという意味でも注目されていた。そして発表内容を見る限り、Appleは過去のつまずきを糧に、より長期思考でスマートフォンの利用方法に本質的な変化をもたらすAI戦略を打ち立ててきたように見える。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月24日 更新
  1. “置き場所に困る”大容量ポタ電の壁を打破! 冷蔵庫を3日動かすEcoFlow「DELTA Gen4」シリーズが日本上陸 (2026年10月23日)
  2. 若者向けのカラフルな新「Dell 14S」が日本上陸 11月1日まで4.5万円引きの14万9800円から (2026年10月22日)
  3. 折りたたみ型から薄型まで! スマホやタブレットで“本気”の文字入力に使える持ち運び用キーボードを選ぶコツ (2026年10月23日)
  4. FCCLが「FMV Keyboard X」の一般販売を開始 ハイスペックマウス「FMV Mouse X」も同時発売 (2026年10月22日)
  5. 「Galaxy Watch9」を1週間使って分かったこと Pixel Watchと比べた使い勝手は? (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」を1週間使って分かった、全部盛りではない“上質さ” 心地いい開閉ヒンジの内部を見るために“非破壊検査”してみた (2026年10月21日)
  7. スマホは「バッグの中」から「外」へ AULUMUのスリングバッグ2種で移動時のプチストレスを解消した (2026年10月22日)
  8. 天空が12月25日に発売する「GPD WIN Max 3」国内正規版 実機に触れてきた (2026年10月23日)
  9. 約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも (2026年10月20日)
  10. PFUから33万円キーボード「HHKB Professional Elite」登場! 英語配列のみで有線特化の“原点回帰” 全世界300台限定 (2026年10月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー