「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心(5/5 ページ)

» 2026年06月10日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]
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有料ではないが利用制限はある

 汎用の生成AIを比較した場合、もう1つApple Intelligenceのアドバンテージになるのが、課金なくほぼ無制限に使えることだろう。

 ただし、全てが無制限というわけではない。画像生成など一部の機能は、クラウド側の強力な頭脳を使うため、1日あたりの利用回数に上限が設けられているようだ(詳細はOSリリースが近づいてから明かされるのだろう)。

 頻繁に上限に達する使い方をしている人は、有料のクラウドストレージ「iCloud+」を契約すれば上限が引き上げられるという。Apple側は「日常使いの大半は無料のままで困らない。ただし画像生成のようなクラウド頼みの重い機能をたくさん使うなら、iCloud+の契約で枠が広がる」としている。

 なお、iCloud+を契約するとApple Intelligenceと対応するホームカメラの連携も利用可能になるとのことだ。

Siriとのやりとりの履歴をたどるために、新たにSiriアプリが追加された。これはその履歴画面だ。他の対話型AIにも履歴機能があるが、こうした美しい作り込みはAppleならではだろう

Apple流AIの真価が分かるのは2027年

 WWDC26から見えてきたApple Intelligenceの最新戦略は、GeminiをそのままではなくApple Foundation Modelとして蒸留するという点を除いては、筆者がこれまで予想してきた通りのものだった。

 つまりAIをユーザーの応用/実用にぐっと近い形までかみ砕いて届けることだ。いちいちチャット欄を開いて文字で打ち込んだり、このファイルとファイルを指定するのではなく、Finderで直接ファイルを選んで、Finder上から「見積もりを比較して」「家族に送って」と頼むこの操作こそ、OSメーカーならではのAI利用の“かみ砕き”だろう。

 そしてモデルと呼ばれる頭脳にしても、それを主とするのではなく、あくまでAI体験の全体像の中での交換可能パーツとして用意すること。今回はGeminiの技術を“先生”に選んだが、より優れた技術が現れればいつでも乗り換えられるようにしておく。実際、両社の契約は独占ではないと報じられている。

 さらにAppleは、自前の頭脳であるApple Foundation Modelsを鍛え続けており、いずれ自社技術だけで最高の体験を作れるようになれば、そちらへ移していくこともあるかもしれない。

 そして、とにかくユーザーの極めて個人的な情報に関してもアシストできるように、徹底してプライバシーを守る姿勢を強固に守るということ。Geminiを採用すると言われていた時には、そこからGoogleに個人情報が漏れてしまうのではと心配をしていたが、あえてGeminiをそのまま使うという簡単な方法ではなく、自社のApple Foundation ModelをGeminiで蒸留して採用するというやり方も、そうした姿勢の一環だろう。

 Appleは最初からAI技術で戦うべき土俵を「賢さ比べ」ではなく「実用とプライバシー」に定めており、今回、ついにそれを実践するベストな方法が完成した、ということだと理解している。

 残る問いは、この一貫した戦略が実機でいつ結実するかだ。今回、開発者向けには基調講演直後から提供が始まっており、ユーザー向けの公開β版は年内に提供予定だ。

 対応言語には日本語が含まれているので、アプリ全体に行き渡る機能群(Photosの編集、Safariのタブ整理、Image Playgroundなど)は、対応条件を満たすデバイスでは2026年秋のOSアップデートで日本語環境でも使える見込みだ。

 一方、本稿の主役であるSiri AIは、まず英語のβ版として年内に始まり、その後すぐに対応言語を広げる段取りで、日本語版の具体的な時期は明言されていない(なおEU圏ではプライバシー保護の観点から、そして中国では規制対応のため当面使えないという)。

 日本はこうした名指しの制約はなく、比較的早期に使えるはずだが、いつになるのかは気になるところだ。どの程度、日本文化もしっかり学習してなじんでいるのかを早く検証したいところだ。

 というのも最近、OpenAIのChatGPTなどは、日本文化への理解がかなり深まり茶の湯の絵などを描かせても、かなり破綻の少ない絵を描くようになった。Appleにもそれ以上の品質を期待したい。

次世代Apple Intelligenceの概要
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