PCケースの内部では、Mini-ATXフォームファクタのマザーボードを垂直に立てるのではなく、水平に設置するため、高さは404ミリとミニタワーケースクラスだが、幅は水平に設置する分、250ミリと、実はフルタワーのPCケースよりも大きくなっている。そのため、意外なことに設置場所を選ぶことになるだろう。
「G-Master Cutlass-ITX」には、大型のハイエンドグラフィックスカードを搭載できるほか、3.5インチシャドウベイを2基備えている。Prodigyのドライブベイは「FlexCag」というモジュラー構造で、ベイの取り外しやHDDの増加などが可能だ。ツールフリー構造なのでドライバーなしでケース内にアクセスできる。
吸気と排気の性能では、フロント部分に12センチ径ファンを1基、背面と天板に12センチ径ファンを2基という構成になっている。背面ファンは、メンテナンスフリーの水冷ユニットでCorsairの「CWCH60」を搭載するため、ケース内部のエアフローではなく、主にCPUの冷却目的といったところだ。
意外と見過ごされがちだが、ゲーミングPCの命題は、ハイエンドな設定で快適に、かつ、長時間安定して動作するか否かにある。ゲームタイトルにもよるが、オンラインゲームであれば、6時間ぶっ通しなんていうことは多いし、PSO2を12時間ほどプレイして、そのまま放置して仕事ということがよくある。となると、その間もPCは常時高負荷の状態になるわけだ。
G-Master Cutlass-ITXは、横幅がフルタワークラスで、PCケース内のエアフローについてはあまり心配していなかったが、CPUクーラーユニットが水冷である点が気になる。実際のエアフローをチェックすると、正面から吸気して背面と天板から排気する。内部の奥行きはあるものの、それでも狭いPCケース内であるため、CPUの熱がチューブ経由で背面排気ファンから逃げるとしても、マザーボードの発熱やグラフィクスカードの基板側の放熱でどうなるだろうか。
水冷ユニットを用いたMini-ITXフォームファクタのキューブPCは、高負荷条件でどこまで耐えられるのか。チェック方法は二通りある。まずは、PSO2を最高設定に、かつ、解像度を1920×1200ドットのフルスクリーン表示で開始して、プレイヤーの多いロビーで画面を回転し続けてみた。テスト時間は8時間。1時間ほど経過すると、GPUが熱を持ち始めたため、排気音が大きくなったが、ゲームのBGMでかき消せるほどのボリュームだったため、プレイに支障はない。CPU温度は、Hardware Moniterで55度前後、GPU温度は62度前後だった。水冷ユニットとしてはCPUの熱を十分に逃がしている。
意外と無難な結果だったため、もう1つのチェックは厳しくしてみることにした。ゲーミングPCは「フルスクリーン」で行うというイメージが先行しているが、実際にオンラインゲームをやっていると、WikiのチェックやSNSへの投稿、そして仕事の電話を受けつつ……などなど、“ながらプレイ”になるため、ウィンドウモードが基本になるユーザーも多い。アニメを見ながらプレイするということもあるだろう。
最近はストリーミング配信を許可するゲームタイトルも増えているため、実況配信をするというユーザーもいる。これは、配信画質を重視しだすと大変な世界で、エンコーダー処理にCPUのパワーを持っていかれるため、最高設定状態でゲーミングとなると、ハイエンド構成でないと厳しい。そのときの負荷は、フルスクリーンのゲーム動作以上に高く、かつ、安定した動作が求められる。
といった条件を再現した上で、さらに過酷な条件として、Furmark系のベンチマークテストを走らせつつ、Prime95を実行、さらにExpression Encoder 4でFurmark系ベンチマークテストの画面を取り込みつつ、取り込みデータをストレージに保存した。CPUとGPUはフルロード状態で、かつ、マザーボードとHDDにも常時負担をかけ、電源ユニットの負荷も高い。
チェックは2時間を2セットで行った。Expression Encoder 4のエンコード時間をタイマー代わりにチェックしていたところ、開始5分ほどでGPU温度が78度に到達し、ファンの騒音がかなり大きくなった。その後は76〜78度を維持している。CPUの温度は、約10分ほどで65〜68度で安定している。HDDの温度については、吸気ファンが直前にあるためか、35度前後を維持している。グラフィックスカード基板の放熱もうまく処理しているようだ。2時間のチェックを2セットとも完走したので、重度のPCゲームプレイヤーも安心だろう。
吸気ファンと天板の排気ファンは、常に1800rpm前後を維持し、背面排気ファンは、フルロード時に4200rpm前後を維持する。しかし、あまり騒音は気にならなかった。
なお、実際のゲームタイトルでは、上記のようにCPUもGPUもフルロードになるケースはまずなく(よほどのロースペック機は別)、半分くらいの負荷が長時間続くことになる。そういった面から見ても、上記のチェックをクリアした時点で、長時間のゲームプレイに耐えてくれると評価できるはずだ。
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