機は熟した 〜先駆者「e-onkyo music」に聞くハイレゾ音源配信の現在ハイレゾ音源を聴いてみよう!(1/2 ページ)

» 2012年11月05日 20時23分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 PCオーディオとネットワークオーディオ、スタイルは違っても共通する大きな魅力が“ハイレゾ音源”(ハイレゾリューション)の再生だろう。CDをはるかに上回る情報量を持ち、アーティストの息づかいや個々の楽器が持つ音色、ライブ会場の雰囲気までもリアルに再現できる楽曲ファイル。ネット音楽配信の黎明(れいめい)期からハイレゾ音源にこだわり続けてきた「e-onkyo music」に、改めてその魅力と現状について聞いた。


 e-onkyo musicがサービスを開始したのは2005年8月。おりしもアップルの「iTunes Store」と同時期で、マスコミでも「いよいよ音楽配信の時代に」と話題になった。ただし、e-onkyo musicがスタート時に販売する楽曲はわずか11曲で、価格もiTunes Storeの倍にあたる1曲300円だったという。

オンキヨーエンターテイメントテクノロジー、ネットワークサービス部の田中幸成マネージャー

 「当時はプレスの方に『なぜ』とよく聞かれました。なぜメーカーが音楽配信を手がけるのか、なぜ楽曲数が少ないのか、なぜiTunes Storeより価格が高いのか」。こう振り返るのは、オンキヨーエンターテイメントテクノロジー、ネットワークサービス部の田中幸成マネージャー。e-onkyo musicのキーマンだ。

 「われわれオーディオ機器メーカーは、常に『原音に忠実』を目指して製品を開発しています。しかし、音楽配信ではCDよりも圧縮された音源が中心。そもそも圧縮されている音に対し、忠実に再現といってもおかしいものでしょう。ですから、圧縮していない音源の販売を自ら手がけることにしたのです」。

 ちなみに最初の11曲を提供したのはエイベックスで、楽曲は「globe」のアルバムだった。これは、「CDよりも良い音を届けたい」という、小室哲哉氏の希望によって実現したもの。現在は諸般の事情でエイベックスの提供楽曲はクラシックのみとなっているが、第1号はメジャーな楽曲だったのだ。

 ただし、こうした例外を除き、各レーベルの反応は芳しいものではなかった。当時から各レーベルをまわって交渉を続けてきた田中氏は、「音質に対してもそうですが、『マーケットサイズが分からない』などの理由で、けっこうふられました」と笑う。今年9月に独自レーベルを立ち上げ、ハイレゾ音楽配信に大々的に乗り込んだビクターでさえ、当時は「機が熟していない」と話していたという。

話を伺ったのは、都内にある試聴室。オンキヨー製品を中心とするPCオーディオシステムが組んであった

 確かに、マスターに極めて近い音源を一般向けに、しかも低価格で販売するのだから、レーベル側が慎重になるのも無理はないだろう。しかし、ネット配信ならではのメリット、例えば在庫を持たずに済む、中間流通によるマージンが不要といった点が認知されはじめると、もともと販路を持たないインディーズ系レーベル、あるいは音質にこだわるレーベルなどからも、次第に声がかかるようになる。

DRMフリー化がターニングポイントに

 e-onkyo musicが、販売面で1つのターニングポイントを迎えたのは、2010年7月。DRMフリーの楽曲を導入したことだった。

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