ASUSTORはこのASシリーズを世界初の“アプリベースのNAS”と称している。この意味するところは、ベースとなる部分を基本機能に絞り、各機能は個別のアプリケーションによって実現するところだと同社は説明する。これにより、利用シーンに応じてユーザー自身が機能のカスタマイズを行えるのがメリットだ。
例えば、BitTorrentなどのダウンロードをバックエンドで行う「Download Center」やネットワークカメラによる監視サーバの「Surveillance Center」、「iTunes Server」など、他社製NASでは基本機能として組み込まれている機能も個別にインストールするようになっている。
また、現時点ですでに85種(リリース時の82種から3種追加)ものアプリを提供していることも注目に値する。機能的に重複するものも多く見られるが、ユーザーの選択肢を広げているという点で評価できるだろう。これらのアプリへのアクセスコントロールはファイル共有含めて一元管理されており、ファイルの共有は行わず、特定のアプリケーションのみを利用するようなユーザーを作成することもできる。
App Centralの拡張機能はさまざまなものがあるが、中でも異彩を放っているのがメディアプレーヤーの「Boxee」だ。
メディアサーバ機能を持たせたNAS、あるいはNAS機能を持たせたメディアプレーヤーは今までにも多くの製品が見られたが、メディアプレーヤー機能を備えたNASは少ない。ASUSTOR NASでは、App CentralからBoxeeを追加インストールすると、HDMIからBoxeeの画面が出力されるようになり、リモコン用アプリがiOS(Kontrol)/Android(AiRemote)に用意されているのでそこから操作できる。本体に接続したUSBマウスも利用可能だ。
ただし、Boxeeにはいわくがある。現在、BoxeeのサイトにアクセスするとBoxeeを組み込んだアプライアンス、Boxee TVの製品情報が表示される。ソフトウェア版のBoxeeは2012年1月時点でサポートを終了しており、Google Codeからバージョン1.5が無償でダウンロードできる。そしてASUSTORのApp CentralのBoxeeは0.9.27.3と古いバージョンのままだ。
ASUSTORの競合製品になるQNAPのTurboNASは、最近のファームウェアでメディアプレーヤーの「XBMC」を搭載したが、こうした背景を考えると、機能比較で遅れをとらないために無理して合わせてきたような印象は受ける。
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